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あみてぃえ

 「俺に急用が出来ちゃってね。さすがに連れて行くわけにいかないから……申し訳ないんだけど、この後特に用がないなら、蓮のここでの撮りが終わるまで、一緒に居てあげてくれないかな?」

 自分の分の撮りを終えて、帰ろうとしたところで、同じ事務所の先輩俳優のマネージャーさんに、頼まれた。
 芸能界一いい男の称号を持つ、先輩俳優とはそんなに親しく話をしたことはないけれど、マネージャーの社さんには、少なからずお世話になっている。
 事務所からの預かり物を届けてもらったり、新人だと思って、私に馴れ馴れしくボディタッチをしてくる不埒者を撃退してもらったり。
 日頃お世話になっているから、無下に断る事も出来ず、敦賀さんが今一緒に暮らしているという小さな子の面倒をみるのを引き受けた。
 ホントは、家で弟妹や甥姪にわずらわされてるんだから、知らない子の世話なんて引き受けたくはないんだけど……
 今から引き合わされる子としばらく過ごさないといけないと思うと、ため息が出る。
 社さんと連れだって私の楽屋にやってきた先輩俳優は、巨大なバスケットを手にしていた。
 着替えやおもちゃまで持ち歩いてるのね……
 肝心の面倒をみないといけない子の姿が見当たらないけど、先に荷物だけ持ってきたのかしら……
 一緒に連れてくれば二度手間にならないのに……
 そんなことを考えていた私の目の前で、先輩俳優が巨大なバスケットを開ける。
 バスケットの中には、小さな体と同じぐらいの大きさの、ふさふさした尻尾を持つ、リスが出て来た。
 もしかして……一緒に居てあげってって頼まれたのは、小さな子供じゃなくて、ペットだったの!?
 紛らわしいわね。ペットなら、ペットと言えばいいものを。
 バスケットの中で、リスは”この人だぁれ?”とでも言いたげに見つめてくる。
 か、可愛い!
 その愛らしい姿に、顔が緩んでしまう。

 「賢い子だから、琴南さんを困らせたりはしないと思うけど、一人にするのは心配だから、申し訳ないけど、一緒に居てあげてもらえるかな?」

 先輩にこんな風に頼まれたら、尚更断りづらいわよ。
 リスなんて飼ったことないけど、一緒に居るぐらいなら、小さな子供よりはたやすいはずよね。

 「わかりました。敦賀さんのここでの撮りが終わるまで、この子と一緒に居させてもらいます。でも、私はリスなんて飼ったことないんですけど、餌とかトイレはどうすればいいんです?」

 「キョーコちゃんの『ご飯』はこっちで、『おやつ』はこっち、トイレはここに置いてあるから」

 とっても、きらびやかな笑顔付きで説明してくれる。
 無駄に眩い笑顔ね。笑顔のオプションなんて、望んでないのに。

 「キョーコちゃんに触れる前には、これを使ってね」

 そういって、携帯用の滅菌ウェットティッシュを差し出された。

 「キョーコちゃん、しばらく俺も社さんも一緒に居られないから、この人にキョーコちゃんと一緒に居て貰うようにお願いしたから。出来るだけ急いで迎えに来るからね」

 敦賀さんが、人差指でちょいちょいっとリスの頬を撫でると、リスは気持ち良さそうに目を細めていた。
 先輩俳優の、思わぬ過保護ぶりに、呆れてしまう。
 確かに可愛いのは認めるけど……
 このバスケット、きっと特注品よね?だって、こんなの見たことないもの。すごく高いはずよ!
 それに、バスケットの中に敷き詰められてるのって、ベルギーレースじゃないの?これもすごく高そうだわ。

 「よろしくね、琴南さん」

 「はあ……」

 先輩に対してする返事ではないけれど、意外な姿を見せられて、気が抜けた返事になってしまっても、仕方ないじゃない!

 「それじゃあ行って来るね、キョーコちゃん。いい子にしてて」

 そう言って、とろけるような笑みをリスに向ける。
 敦賀さんのこんな顔、初めて見たわ!
 もてる割に、敦賀さんに浮いた噂一つなかったのは、リスに夢中だったからなのね!
 名残惜しそうに楽屋を出て行った先輩俳優と、肩を竦めて担当俳優に続くマネージャーを見送って、バスケットの中を見つめる。

 「あんたが人間だったら、恋人になれたのにねぇ」

 私の呟きに、リスがきょとんと小首を傾げた。
 うっ……可愛い。
 何だか、敦賀さんがあんなに夢中になるのが、わかるような気がした。





 おやつのクルミを1つ与えると、短い前肢を一生懸命伸ばして受け取る。
 そして「ありがとう」とでもいうようなしぐさを見せる。
 ふふっ、可愛い。
 ちょんちょんと人差指で頬を撫でれば、気持ち良さそうにじっとしている。
 大人しくてお利口で可愛くて、こんなリスなら私も飼ってもいいなぁ。
 でも、この子のようにお利口な子が、他にもいるとは思わないけど。
 私も敦賀さんに毒されてきたかも。

 「私は台本を読むから、それを食べていい子にしててね」

 リスがクルミを食べる音をBGMに、台本に目を通していたら、ドアをノックされた。
 クルミを食べていたリスの動きが止まる。
 誰かしら。敦賀さんが戻ってくるには早すぎると思うんだけど。

「ちょっとだけ我慢しててね」

 リスに声をかけて、バスケットの蓋を閉める。
 鍵を開けた途端、楽屋のドアが荒々しく開かれた。

 「いつまで待たせるのよ!さっさとドアを開けなさいよ!大体鍵なんてかけなくても、あなたのような貧乏人に、取られる心配のあるものなんてないでしょうに」

 相手を確かめずに、鍵を開けたことを後悔した。
 高園寺グループという家柄のおかげで、子供の頃から自分の望みは何でも叶えて来た絵梨花が立っていたのだから。
 どんなにいい家柄の子でも、私にとっては疫病神でしかない。

 「何の用なのよ」

 敦賀さんからの預かり物に気付かれないうちに、さっさと追い返したかった。

 「いつまで私をこんな所に立たせるのよ!さっさと退きなさい!」

 退けと言われても、退くわけにはいかない。

 「ここは私の楽屋なのよ。あなたは招かれざる客なの。だからさっさと帰ってよ」

 ドアを閉めようとしたら、絵梨花の付き人に突き飛ばされるように押しのけられた。

 「絵梨花様、あそこにございます」

 思わず舌打ちしてしまう。
 どこかで見てたのね。

 「あなた。分不相応にも、敦賀さんから贈り物を頂いたんですって?私が検分してあげるわ」

 絵梨花の付き人の一人が、邪魔が出来ないように私を拘束する。

 「そんなことしなくて結構よ!大体ね、それは頂いたんじゃなくて預かっただけなんだから!」

 つい、馬鹿正直に叫んでしまった。

 「預かり物?だったら貧乏人のあなたより、しっかりしたセキュリティのある私が預かる方がいいと思わない?」

 「思うわけないでしょ!」

 拘束されて、バスケットをかばうことも出来ない。
 絵梨花は私に構わず、付き人の一人に、バスケットの蓋を開けさせた。
 一連の騒ぎと、いきなりバスケットが開いたのと、見知らぬ人間が視界に飛び込んできたのとで、びっくりしたんだろう。リスがバスケットから飛び出して、開けっぱなしのドアから楽屋の外へ飛び出て行った。

 「待ちなさい!」

 私の制止も、リスには届かなかった。

 「何なのよ、今のは」

 絵梨花が文句を言っているけど、そんなことには構っていられない。
 怒りにまかせて、ヒールで足を思いっきり踏んで、拘束が緩んだ途端に、肘鉄をかました。
 そして手近にあったものを掴んで、絵梨花に投げつける。

 「危ないじゃない!何するのよ!」

 「それはこっちのセリフよ!今逃げたのは敦賀さんから預かったペットなのよ。どうしてくれるのよ!」

 「そんなもの、ペットショップに言えば、いくらでも新しいのが飼えるじゃない」

 「あの子は、敦賀さんの家族なのよ!あんたは自分の家族がいなくなったからって、新しい家族を迎え入れるの?」

 「紛らわしいのがいけないのよ!ペットならペットと最初に言えばいいじゃない!」

 「いつ、そんな間があったのよ!あの子に何かあったら、敦賀さんを怒らせると覚えておきなさい!」

 言い捨てて、楽屋を飛び出した。
 リスって、普通は森とかにいるのよね。だったら、植物のあるところを探せば見つかるかしら。
 あちこちと、観葉植物が置いてあるところを探し回ったけど、どこにも姿が見当たらない。
 刻一刻と、敦賀さんとの約束の時間が近づいているのに。
 どうしよう……

 「何かあったら連絡して」

 そう言って、社さんが連絡先を教えてくれてはいたけど、ペットと一緒にいることすら満足に出来なかったのかって評価されるのは嫌!
 何としても、敦賀さんが戻って来るまでに見つけたい。
 あの過保護ぶりからして、約束の時間より早く帰ってくる可能性は高い。
 そう思うと、今にも「ただいま」なんて甘々な笑顔振りまいて、迎えに来ているような気さえする。どうしよう……
 泣きたくなる。

 「も~!!!キョーコ!いつまで隠れてるのよ!いい加減に出てきなさい!でないともう、遊んであげないわよ!」

 つい、場所柄も考えずに叫んでしまった。
 かすすすすと、軽いものが滑るような音がしたかと思うと、足首に何かがぶつかった。
 ぎょっとして足元に視線を向けると、かなり必死に、仔リスが足首を叩いていた。
 その姿を見て、安心して、涙が出て来る。

 「も~!!!ホントにどこにいたのよ!」

 文句を言いつつも、しゃがんでリスに手を差し出す。
 リスは手のひらに乗ると、そのまま腕を使って肩まで駆け上ってきた。
 すりすりと頬に頭をすりつけられ、気持ちも落ち着いてくる。

 「無事でよかった」

 そっとリスの頭をなでると、リスも大人しくしている。

 「さ、早く楽屋に戻りましょ。まだ約束の時間よりは早いけど、きっと敦賀さんもうお迎えに来てるわよ」

 すれ違う人にびっくりして再び逃げられないように、上着のポケットに入って貰って楽屋まで走った。

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