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NO LOVE, NO LIFE!?(2)

 窓の外、月の光が優しい。満ちた円盤の降り零す白金の粒子は、ものの輪郭までをやわらかく見せていた。
 車を降りると、駐車場には浜から吹き寄せられた砂が浮いている。足を取られないよう慎重に歩き出すキョーコに、すいと手が差し出された。
 「つかまって」
 「え、と、はあ。ありがとうございます」
 迷ったが、おろしたてのパンプスが心もとない。
 ありがたく長身の先輩俳優を頼らせてもらった。少し、セミになった気分を味わえなくもない。味わいたいかどうかはともかくとして。
 歩行が安定して、前方へと顔を上げる。ライトアップされた藍灰色の建物が視界に広がった。目的地である水族館の建物は、何でも著名な建築デザイナーの作品なのだとか。
 「さすが、モダンな建物ですねえ」
 キョーコの言葉づかいこそがむしろ古めかしい。素直に感嘆を表現したはいいけれど、自分でも違和感を覚えて首を傾げた。
 「ええっと…シャープなラインと優雅な曲線が組み合わさって、ちょっと懐かしいようにも近代的にも見え」
 言えば言うほどイメージが遠ざかる。くすりと笑われて、彼女は眉尻を下げたまま口を閉じた。
 「言葉は時々、却ってイメージを邪魔するときがあるね」
 フォローなのか蓮が言うので、キョーコは小さく頷いておく。」
 「君なら、もっとメルヘンチックな外観の方が好みに合って表現もしやすいのかな」
 笑う肩が少し揺れる。
 馬鹿にしているのかと疑ってしまったが、見上げた顔はそんな様子でもなく優しい。
 不意に目の奥で、小さな光が爆ぜた気がした。
 たぶん何か光線の加減とか、どこかの灯りを錯覚したとかそんなことで、けしてそれ以上の意味はないと思う。絶対。目じゃなくて、胸の底でだったなんてことはないはず。
 「あ…あの」
 慌てている自分をどうにか抑え、目を水族館へと戻した。
 「こんな時間から入れるんですか?」
 連れられるままやって来たはいいけれど、そう言えば車を降りるときに見た時計は夜も9時を過ぎていた。今更ながら尋ねると、俳優が彼の特徴のひとつでもある甘い艶を含んだ声を向けて来る。
 「昨日からの3日間だけはね、特別に夜間も開館してるんだ。夜光海棲生物のショーがあるそうだよ」
 「ショー、ですか」
 普段なら嫌な響きの言葉なのに、内容が変わればずいぶんと心が躍る。キョーコは瞳を輝かせて入場口周辺に見入った。まだ遠くてしかとは見えないが、スポットライトの下にポスターらしきものの貼られたスペースがある。
 「楽しみです!何が」
 拳を握って蓮を見上げ…
 そこで、動けなくなってしまった。あまりにも優しい瞳に出会って。
 「…あ」
 そのまま足を止めてしまうと、大きな手が腰に回される。
 「どうした?まだ歩きにくい?」
 「え…あ、いえ…あの、何が出るのかな、なんて思って…」
 キョーコはごまかすように笑って見せた。誰をごまかすためになのかは定かでない。このごろの自分はへんだ、と思った。どうしてかペースが乱れっぱなしで、日によってはひどく疲れる。
 それは…
 「可愛いものがいっぱいだといいね?」 
 自分の中の考えを追う先に、傍らの“恋人” が微笑む。
 「俺にとっては、君より可愛いものなんてないけど」
 「はいい!?」
 「目にも、心にもね」
 「にょおおおおお!!?」
 ぶっ飛んでいるスキに、すいと手を取られた。そのまま持ち上げた先には、うすく笑む唇が待っている。
 ちゅ、という音がした一瞬、ぎゅっと身が縮んだ。逆に、心臓は倍くらいに膨れた気がした。
 「ああああの、あの…っ」
 顔が熱い。きっと真っ赤になっているだろう。あうあう言葉を探していると、今度は蓮が動かなくなっているのに気づく。
 「敦賀さん…?」
 キョーコはおそるおそる顔を上げた。またさっきみたいな瞳が待っていたらどうしよう。
 別にどうもしないはずなのだけれど慎重に視線を移すと、その予想だか恐れだかは外れていた。蓮は、…何というのだろう、辛いような表情を凍らせている。呼吸さえ詰めているように見えて、心配になってしまった。
 「あの」
 「…ああ」
 俳優が我に返ったように息を吐く。
 「…まずかったな…」
 「え?」
 ぼそりと呟いた一言の意味を測りかね、キョーコは大きな目を瞬いた。まさか、自分の指が不味かったということか。何かおかしなものでも触っただろうか。思わず、取られたままの自分の手を凝視してしまう。
 一瞬のうちにぐるぐる考える彼女の手を、蓮は苦笑に紛らわせて離す。微風がそこに吹き込んで、確かな幻のような熱を奪って行った。
 妙に抑えた俳優の声。
 「ごめん、何でもないんだ。ただ少し…」
 風に紛れた声は、ざわついてしまって、と聞こえた。








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NO LOVE, NO LIFE!?(1)

 今日も今日とて半ば強制的に拉致されて来たトップ俳優の部屋。リビングに二人ぼっち、テーブルの上には食後のお茶が冷めかけている。
 しかしキョーコはそれどころではなかった。
 見られてる。
 強い視線に、かち合わないように注意深く横目を流した。
 「ん?」
 そこにはキュラキュラしい笑顔の俳優が悪びれずに小首を傾げている。あまつさえ、
 「どうかした?俺の可愛いキョーコちゃん」
 などと尋ねつつ頬に手を伸ばして来るので、少女は反射的にそれをはたき落としてしまった。ぺっしといい音がする。
 「痛いよ、キョーコちゃん」
 そうでもなさそうにのんびり抗議された。相手は先輩だから仕方なくすみませんと口にはしたが、実のところ自業自得と言うのだとキョーコは思う。
 なんなの、この人は。
 というか。なんなの、この状況は。
 考えたら負けなのかもしれない。それでも人は思考の生物であり、最上キョーコもまたその一員なのではあった。




 事の起こりは、そう、ちょうど一ヶ月前になる。
 奇癖と奇行で知られる奇矯な某芸能事務所社長が、突如叫んだのだ。
 「社内パーティーを開くぞ!!」
 人々はド派手な会場と巻き込まれた自分を瞬時にイメージしたと言う。あまりにも通常運転な発言だった。
 が、その一方で。
 ローリィ宝田(あ、言ってしまった)、ただの派手好きではない。
 愛を愛し主食とする驚異のラブモンスター、その企むところ常に愛あり。同時に、多く傍迷惑が付随するのが困り物であり、キョーコにとっては今回もその例に漏れることはなかった。
 それは、いわゆるお見合いパーティーだったのだ。
 どこぞの結婚相談所か宗教団体か(ネタ古)、と人々は力なく笑ったが、各人のデータを検証し見合いの組み合わせを決めるコンピュータ回路にローリィ宝田という名がついていることを知るや、更に微妙な顔をした。しかも、この際に組み合わされた二人はともかく交際期間を持たねばならない、と言うのだから無茶振りにも程がある。
 これまでの短くない人生を愛とカンで泳ぎ渡って来た男の選択。それは、
 どんな結果を生むのだろう。



 「どんなもこんなもあるもんですかっ」
 キョーコは叫んだ。明後日を見上げて拳を握っていてさえ、トップ俳優はあくまでにこやかに見つめて来る。
 「誰に話してるの?」
 尋ねたと思ったら今度は抵抗の暇もなく頤を取られ、強制的に視線を合わせられた。
 「俺といる時は、俺だけを見て欲しいな」
 なんというベタな台詞か。しかしそうであってさえ、行使者の別は効果に大きく関わるのだと彼女は知った。
 乞われるまでもなく、近く寄せられた唇の動くさまから目を離せない。天然記念物乙女は炙られているような心地に縮こまり息さえ詰めて堪えた。何に炙られているのかはわからない。
 「は、なして下さい」
 真っ赤な顔で懇願すると、目の前の端正な顔は苦笑を作って距離を取った。
 「もうひと月も経つのに、なかなか慣れないね?」
 少し呆れた風に言われ、プライドが刺激される。
 「しっ仕方ないじゃないですか、もともと免疫がないんですからっ。だいたい、敦賀さんみたいな綺麗な人のアップなんて、見慣れる先に見とれちゃってそれどころじゃな」
 一気に並べ立てたはいいが、途中で何かおかしいと気付いてキョーコは自分の口を押さえた。
 「……」
 ちとりと見上げると、予想通りのとろり甘い微笑がそこにある。
 「それは光栄だね、面食いのキョーコちゃん」
 「~敦賀さん、完全に楽しんでますよね!?」
 精一杯の抗議もどこ吹く風、蓮は軽やかな笑声を上げた。
 「それは勿論。今時こんな反応を見せてくれる子もなかなかいないから、貴重な体験だと思えば余計にね」
 「うう…」
 キョーコはぺしょりと床に手をついた。
 「いいですよ、先輩俳優様の演技の肥やしにでもして戴ければ本望ですとも…」
 呟く耳に、ふすと笑い息が届いて涙目で顔を上げる。すると、一瞬目を瞠った俳優が、こみ上げるというように微笑んだ。
 「そんな可愛い顔をしない」
 「か!?」
 「君にとってだって、いい経験にすればいいだろう?」
 暫定とは言え恋人関係の。
 説得力があるようなないような提案をキョーコは心中に吟味し、先輩から見合い相手へ、更に交際相手へとシフトした青年におぼつかない視線を向ける。
 「経験になる前に、血管が切れそうなんですが」
 いろんなところの。
 呟いたのは間違いだったかもしれない。
 「そう…」
 蓮は笑んだのだ。それはそれは輝かしく。
 「じゃあ、そんなことにならないように、もっと優しくじっくり慣れさせてあげないといけないね」
 「え」
 展開について行けない少女に、青年はにこりと笑いかけた。
 「手始めに、デートでもしようか。ちゃんとした」






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