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鶏冠は君に輝く 1

 某TV局の廊下。
「あ」
 強化ガラスの壁を通した陽光と人々の注視を受け、日本芸能界にその名も高いトップ俳優が本日の控室へと歩んで行く。途中、彼はふと前方を見とめて小さく声を零した。
 「どうした、蓮?」
 隣を歩いていた敏腕マネージャーが溜め息にも近いそれにすかさず気付いて視線をよこす。問われた敦賀蓮は半分だけ彼に視線を移して微笑んだ。
 「いえ、ちょっと知り合いを見かけて」
 「へえ?珍しいな、お前がそんな顔する相手なんて。よっぽど親しいのか?」
 「どんな顔ですか。親しい、とまでは言えないんですけどね。面白い人だなと…いや、面白い鶏?」
 「はあ?ニワトリ?」
 腕時計を確認していた社が顔を上げる。担当俳優の視線の先を辿り、端整な顔立ちに
 「なるほど」
 納得の色を浮かべた。確かにニワトリがいる。巨大な白色レグホン、正確にはその着ぐるみを着た人物が。ADと何か打ち合わせをしているようで、しきりに頷くのだが、その度にボリュームのある真っ白な尾や真っ赤な鶏冠がユーモラスに揺れるのが目に楽しい。
 「愛嬌のある着ぐるみだなあ。っていうか、中の人がいい人っぽいな」
 笑うマネージャーに、蓮は笑って頷いた。
 「そうですね、いい人だと思います。通りすがりの俺の話を真剣に聞いてくれましたし。彼の言葉には何て言うか、人を動かす力があるんですよ」
 「へえ、敦賀蓮を動かす人物か。それは貴重な人材だぞ」
 社はもう一度時計に目をやる。うん、と零して視線を流した。
 「予定より早く着いたから時間に余裕がある。彼が大丈夫なら話して来るか?」
 ひとつ瞬きをする俳優に、マネージャーは穏やかな笑みを向ける。
 「さっき、親しくないって言ってたけど、親しくなりたいんだろ。案外わかりやすいんだよな、お前」
 「そんなこと言うのあなただけですよ、スーパーマネージャー」
 「そうか?少なくとももう一人はいると思うぞ。まあ、逆にわかってほしい部分には鈍いみたいだけどな、あの子は」
 あの子、と口にしながらあからさまに笑顔の質を変えられて、蓮はぐっと呼吸を詰めた。
 「何が言いたいのかわかりませんね」
 「スーパーマネージャー相手に時間を無駄にしてる場合か?ほら、彼が行っちゃうぞ」
 社はぴょこりと頭を下げてADと別れるニワトリを指す。軽く左右に身を揺すりながら歩く姿にはたっぷりの愛嬌が乗って、中の人物がしっかりとキャラクターを作り込んでいる様子が窺い知れた。すれ違う若い女性が「坊だ~、カワイー」声をかけて行くのに手を振り返す。思わず蓮の頬も緩んだ。
 「坊って言うのか…」
 「なんだ、名前も知らなかったのか。向こうがお前を知らないってのは考えにくいけど、いい機会だから自己紹介くらいして来いよ」
 「どうしてそんなに熱心なんですか社さん」
 「だってお前、人当たりは満遍なくいいけどちゃんと親しい人ってほとんどいないだろ。そりゃ権謀術数渦巻く芸能界だ、お前の立ち位置的に誰にでも心を許すってわけには行かないけどさ。ちゃんと向き合える相手がいるなら、その方が絶対いい。ストレスフルな業界を生き抜くのに、ぼっち脱出はとてもいいことだとマネージャーは思う」
 「ぼっちまで言いますか」
 俳優は苦笑しか出ない。
 「自主的ぼっちって言い直そうか?実際、お前が人…人?知り合いの顔見て本心から嬉しそうにするところなんて、俺はほとんど見たことがないぞ。あの子以外ではな」
 また『あの子』だ。にたりと笑う社は一体何が言いたいのか、薄々わかっているがわかりたくない。胡乱な目で見ていると、腕時計をとんとん叩かれた。これ以上ないほど意味のはっきりしたジェスチャーだ。
 「彼も忙しそうですし、別にそんな…」
 言いかけた蓮だが、つられてニワトリの後ろ姿に目を戻したところで言葉を切った。
 共演者だろうか、見たことのあるような三人組が坊を迎えて親し気に話しかける。和気藹藹をとした空気に包まれている彼らを見て、傍らのマネージャーが微笑ましそうにうんうん頷いている。
 「彼は確かに人柄がいいんだな。ブリッジロックのメンバーにも好かれてるみたいだ」
 「何ですって?」
 「ブリッジロック。彼らのグループ名だよ。全員が石橋姓なんだってさ。
 「って言うか彼らもLME所属だぞ。人気もあるのに知らないのか、お前ほんと他人に興味ないよな…あれ」
 簡単に説明したあと、社は呆れた口調になった。しかしその頃には既に蓮はスタスタ歩き出している。姿勢正しく挙措優雅に、高速で歩を運んで、じきに白いニワトリのもとに辿り着いた。
 彼に気付いて目を丸くする三人に目だけで会釈を送り、
 「やあ、また会えたね」
 丸い肩をぽんと叩く。
 「へ?」
 きょとん、と振り返ったニワトリが彼を見て固まった。それへ蓮は綺羅綺羅しくにこりと笑う。
 「久しぶり。少し話す時間あるかな?」
 「まったく。人に関心が薄いのかと思えば、気に入った相手には執着するよなあ」
 後方でぼやくマネージャーの言葉を、彼は知る由もなかった。

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