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Mission Birthday

 社さんが必死に確保してくれた半日のバースデーオフ。
 約束は取り付けた。
 準備はした。
 あとは、もうすぐ現れるはずのあの子を待って…そうしたら。
 どう運ぼう?
 なにしろ相手は強敵だ…
 ああでもないこうでもないと頭の中で何度も作戦を練り直すうち、インタホンが呼び出しを伝えて来た。
 来た!
 飛びつくようにエントランスのロックを解除し、じりじりと待つ。よほど玄関で待ち構えたいのを必死に我慢した。
 程なく、俺の部屋のドアチャイムが鳴らされた。急いで玄関に走り、ドアの前でひとつ深呼吸してから開ける。そこに立っていたのは、もちろん待ちわびた想い人。
 「こんにちは、敦賀さん。お誕生日おめでとうございます!」
 開かれた空間を光で満たすような笑顔に、自分の頬も勝手に緩んでしまうのを感じる。
 「ありがとう…入って」
 ドアを大きく開けて脇へどくと、最上さんはハイお邪魔しますとシャキシャキ入って来た。両手にまんまるに膨らんだレジ袋を提げているから受け取ろうと手を伸ばす。すると、
 「中身は秘密ですからっ」
 と引き渡しを拒まれてしまった。
 「見ないよ」
 だから持たせて、と頼んだけど、彼女はスタスタキッチンへ向かってしまう。
 「ダメです。敦賀さんはイジメっ子だから信用しません」
 そんな小憎らしいことを言うのに、抱きしめたくなるから困った。
 代わりに俺はさっと最上さんの前に出て進路を塞ぐ。
 「何ですか」
 足を止めて見上げて来るのへ視線を合わせ、壁際に追い詰めて腕で囲った。
 「…そう、ばれちゃってるんだね」
 ふ、と鼻先に息を吹きかけると、俺の可愛い女の子は面白いようにピキリと固まる。
 「な、ナニガデゴザイマショウ」
 カキカキ言うから噴き出しそうになった。ごめんね、混乱させて。でもそうして揺さぶりをかけるのも、時には必要なことだと思うんだ…君を手に入れるためには。
 今日こそ、もういい加減に君を手に入れたいから。
 「俺がいつも、君をいじめたいと思ってること」
 少し屈んで鼻先を吹く。最上さんは、ひ、と喉をひきつらせた。
 「や、やっぱりっ…」
 「うん、ここでじゃないけどね」
 俺に怯える姿を、ほとんどうっとりした気分で眺める。そうしようと思ったわけでもなく、俺の顔は更に下がって行った。
 ちゅ…
 ひそやかな音を立てて、やわらかな頬に唇をつける。
 「ななな、な、せ」
 意味のない音だけをぼとぼと零す唇をいっそ今すぐ…
 なんて、それでも迷ってしまったのがいけなかった。
 「セクハラ退散~っっっ!!!」
 ばす!
 みぞおちにレジ袋の直撃を受ける。
 「う…」
 女の子の力とは言え、水物でも入っているのかやけに重い一撃だった。一瞬怯む俺の隙をついて、最上さんはするりと腕を抜けて行く。
 「きょっ今日はっ」
 あわあわ言いかけるので視線を移したら、真っ赤な顔の少女は大根を振りかざしていた。
 「敦賀さんのお誕生日で、しかも半日オフでっ。お、お祝いのご希望を伺ったら食べるものって仰いましたからっ!」
 「食事とケーキ作ってくれるんだよね」
 苦笑しながら大根を取り上げてレジ袋に戻す。そうして袋を2つとも奪い取ってさっさとキッチンへ入った。
 最上さんが慌ててついて来る。
 「ちょ、ですから私が」
 「はい到着」
 テーブルの上に袋を下ろし、振り返ると少し膨れた顔。
 「中は見てないから。大根以外」
 「はあ…」
 仕方なさそうに頷くから、少し笑ってしまった。
 「では、お食事の支度をしますので。和食にしますね。お好きでしょう?」
 「うん、ありがとう。できれば少し急いでくれるかな?」
 「あ、はい。お腹すいてらっしゃるんですか?…朝とお昼、ちゃんと食べられました…?」
 「あー」
 いや、正直言ってそれどころじゃなかった。
 しかし返事を濁す俺を睨みつける般若顔がそれでも可愛いなんて、いくら何でも欲目が過ぎるかな?
 「とにかく、餓えてるんだ」
 困った顔をしてみせたら、可愛い後輩はわかりましたと溜め息をつく。
 「できるだけ早く作りますから、敦賀さんはリビングででもゆっくりしてらして下さい」
 「じゃお言葉に甘えて」
 俺は素直に頷いてキッチンを後にした。リビングでゆっくり考えたい。
 ねえ最上さん?
 腹の中で、背後のやさしい気配に呼びかける。
 今日の約束をした時のこと、君は正確に覚えてるのかな?
 俺は『食べたい』って要求して、
 君は『わかりました』って了承した。
 俺が実際に何に餓えてるのか、いま君は知らないよね。でも駄目。今日は、それを思い知ってもらうから。
 リビングに入りながら、俺は笑っていたかもしれない。

 さあ、どうやって君を陥落させよう?





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ねがうほど(後編)

 彼がふるえるから。
 怖がっているから、安心させてあげたくて、だけどことばが出て来なくて。
 そろりと微笑んでみた。
 ちゃんと笑顔になってることを願いながら。


 蓮はひどく不審そうな顔をしている。
 ええ、わかってますよ敦賀さんだって。貴方はわからないんですか?
 キョーコは思い、彼をからかってみることにした。
 本当のところは、自分も何をどう言えばいいのかわからなくて雪花の力を借りようとしたのだと自覚してはいたが。
 「アタシを見る時に、そんな顔しないで」
 指先で男の眉間に寄る皺を伸ばすと、その手はあえなくつかみ取られてもっと大きな手に包まれる。
 蓮の唇が開いた。
 けれど何を言われても、答えるすべがない。さもあろう、キョーコ自身わかっていないのだ。自分の心の動きが。
 ただ、守りたいと思う。
 悪夢に怯える子供のように震える先輩俳優を、深い闇の底から連れ出したいと。
 なんとなれば、彼こそが彼女を導く光であるのだから。
 彼は彼女にとって、神にも等しいのだから。
 そして…神には、供物を捧げるものなのだから。
 その奥の奥、真底に眠る真実を隠したまま、キョーコは目を閉じる。



 ぴちゃ、ぴちゃ、と…
 聴覚を直接刺激する音に曝され、キョーコはたまらず声を上げた。
 「それ、や…」
 しかし男は反応すら見せずに彼女の耳朶をなぶり続ける。
 悪寒が背筋を駆け抜けるような、なのにそこから熱が拡がるような、奇怪な感覚に翻弄され、次第に呼吸が浅く速くなる。
 「気持ちいいくせに」
 囁き落とされたことばを拒みたくて耳を塞ごうとする手は、やはり蓮につかまえられてしまった。唇を、火傷しそうな吐息に擽られる。
 「嘘ばかり言う悪い口には、お仕置きが必要だな」
 自分だって。
 キョーコは低い声に反発を覚えてねっとりした微笑を見返す。違う、と思いたかった。こんなに心が震えるのは、私のせいじゃない。
 貴方が震えるから。
 そんなに、瞳を揺らすから。
 心の声が聞こえたかのように、少し身を起こした蓮がうっすらと微笑む。唇の端にちらりと覗く赤い舌に目が惹きつけられた。
 甘やかな声が、そこから送られて来る。
 「…最上、さん?」
 ああ、とキョーコはどうしようもなく納得してしまった。


 あなたが、わたしにねがうなら。



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ねがうほど(前編)

 「君はセツ?それとも…」
 尋ねる自分こそ、誰であるのか。
 室内に溜まる夜気を震わせる、かすれた囁き声に、
 ひたりと合わさる視線に、
 彼女は。

 ただ、 


 ゆっくりと微笑んだ。

 
 

 澄んだ瞳に浮く熱を認め、蓮は軽いめまいを覚えた。望み続けた唇に、吸い寄せられるように唇を寄せる。
 夢ではないだろうか。
 と疑うのか、彼は一瞬動作を止めた。訝るように寄せた眉の間に刻まれた皺へ細い指が伸びる。
 「アタシを見る時に、そんな顔しないで」
 そんなことを言って男の眉間に触れる少女は、ではセツカなのか。しかしそれなら、その声の細さは何だ。
 蓮は思わず白い手を自分の掌に握りこみ、羽化したての蝶に似たかすかな震えを感じ取った。先程とおなじ質問を発しようかと口を開く。
 しかし少女がかぶりを振る方が早かった。
 そうっと、目を閉じる方が早かった。
 「…!」
 桎梏は放たれた。過去であってもいい、現在であってもいい、未来であるならなおさら。

 君を、願う。

 


 「それ、や…」
 羞恥にあかく染まる囁きを聞き捨て、蓮は舌先でキョーコの耳を犯し続ける。なぶるような執拗な動きに、少女は次第に荒くなる自分の呼吸を信じがたく身をよじった。
 「どうして」
 尋ねる男の低い声は、揶揄と切迫の双方を浮かべて短く切れる。
 「気持ちいいくせに」
 「…っ…」
 囁きに白い手が耳を塞ごうと持ち上がった。蓮はさっとそれをつかまえ、枕に押しつけながら少し身を起こした。
 鼻の先を合わせ、ぷくぷくと赤い唇の上に吐息を落とす。
 「嘘ばかり言う悪い口には、お仕置きが必要だな」
 そうとも、彼を弄う者は罰せられなければならない。
 けれど、どこからが嘘なのだろう。
 過去に囚われうなされる彼に許すと言い、
 許されないと拒めばそんなはずはないと繰り返し、
 自分はすべてを受け入れると誓った、あのことばたちの。
 どこからどこまでが、彼女自身のことばなのだろう。
 もし、すべてを彼女のかぶる別人格が語ったのだとしたら、今にも彼女は自分を突き飛ばして逃げ出すのではないか。
 そんなことが、許せるだろうか?
 今しも手に入れようとしているこの甘い果実を、みすみす見逃すような真似が、いったい自分にできると言うのか。
 「無理だ…」
 ほつと零された呟きに、少女が涙の浮いた瞳を上げる。
 尋ねかける視線の揺らぎに堪えかね、彼はきつく目を閉じた。
 確かめる方法はある。呼んでみればいい。セツ、と。
 妹であるならにんまり笑うだろう。なあに、兄さん。
 しかし違っていれば…
 妹でないなら、後輩であるなら、彼の愛しい少女であるなら。
 哀しませて、しまうのではないか。
 これは期待だ、と彼は痛む胸を押さえた。
 哀しんで欲しい。いま手に入れようとしているのが、君であって欲しい。
 そうならば俺は。
 蓮はふと息を入れ、自分に組み敷かれている、切ないくらい細い肢体を見下ろした。
 ひっそりとその唇が開く。

   

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10・10・10

 恋だったと思う。


 生まれてから10年経って、彼は彼女に出会った
 光こぼれる夏の日の、短い、けれど大切な記憶
 互いの心を温める きれいなきれいな
 たぶんそれで完結するはずだった思い出

 「泣かないで…キョーコちゃん」



 それから10年経って、彼はもういちど彼女を見出す
 忘れられない面影を胸に
 彼は次第に心を解いて行く
 もう求めないと決めたはずのものに近付いていく自分を恐れ
 けれどどうしようもなく育って行く思いに突き動かされて
 何に逆らっても と望み
 その一方で幸福を拒み


 恋だと知る。


 夜明けがどこにあるのか知らず
 闇雲にもがいて
 ただ
 触れたいと望む
 彼女の心をぬくめ
 傍らに立つのは自分でありたいと
 たとえそれが罪であるとしても

 「俺が守ってあげるのに」
  

 恋なのだと思い知る。


 この先10年経って、彼はどこに彼女を見るだろう
 彼女の時は彼に重なるだろうか
 そうであればいい
 そうであればいい
 望み祈り乞い求め
 彼は自分がとうに幸福であることに気付いて
 そっと溜め息をつく
 彼女の何という破壊力

 「なんて恐ろしい病なんだ」




 恋がすべてを吹き飛ばす。 web拍手 by FC2

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男はいつも愛をたった一つのロマンスとしてのみ記憶している

 「やあ、最上さん」
 事務所の廊下。背後から声をかけると、華奢な背中がびょんと跳ねる。
 抱き締めたいなと思ったけれど、さり気なく窺った周囲にはちらほらと人の姿があって。
 所在無い手をわきわきさせながら、なかなか振り向かない彼女を待った。苛立たずに、ゆっくりと。ずっとそうして来たみたいに。
 彼女の葛藤に決着がつくのを待つ。
 大丈夫、ちゃんとつけてくれるから。
 俺も珍しく早く仕事が終わ(らせ)ったし、社さんインフォメーションによれば彼女だってあとは帰るだけのはず。時間には余裕があるし、彼女には良識がある。いつまでも先輩俳優を放置できるわけがない。
 「お、おつ、かれさ、まで、す…」
 ほら、真っ赤な顔が振り向いた。
 


 昨日、彼女に好きだと告げた。
 累々積々、どうにもならないくらい育ってしまった気持ちに耐えかねて。欲しいなら乞うしかないと思い決めた。
 彼女はきょとんとして、
 「今日はエイプリルフールじゃありませんよ?ちょっと早いですけど、ハロウィンのイタズラですか?」
 なんて言う。
 「違うよ。嘘でもイタズラでもない。真剣に聞いて」
 思わず脱力しそうなところ、ここでそうすれば今までの轍を踏むだけだと俺は頑張った。
 でも有り得ませんし、とさらっと言う彼女に腹が立ったけれど、それを見せないようものすごい努力をして言葉を重ねる。
 「俺の気持ちのあり方は、君が決めることじゃないだろう?君の権利は、それを受け取るか受け取らないかの選択だけじゃないかな」
 いや、やっぱり洩れてたかな。
 「え、あの…」
 ともすれば身を引いて駆け去ってしまいそうな彼女を逃がさないよう、俺は急いで自分の言いたいことを言い切ることにした。
 「返事はすぐでなくてもいい。ちゃんと考えてくれたら、どんな結果になっても受け止める。だけど、君が自分で決めたワクの中に安易に閉じこもるだけなら…」
 ひく、と震える最上さんに、ゆっくりと、
 「無理矢理にでも引きずり出すから」
 宣言した。



 でも、少し意外だった。
 俺は、振り向く顔は青いんじゃないかと思ってたから。そうだったら、少し懐柔するようにしないとといくつかの言葉を用意してたんだけど…
 もしかしたらこれは、悪い反応じゃないのかもしれない。
 と、俺が思いたいだけだろうか。希望的観測は外れた時の反動が痛い。これまで彼女に散々教えられて来たことだ。
 「あ、あ、あの、つるがさん」
 最上さんが今日も可愛い声で俺の名前を綴る。思わず顔が緩むのを覚えた。
 「何?」
 「きょ、きょうのおしごとはおわられたのでしょうか?」
 「うん、今日はこれで上がり。君もそうなら、送るよ?」
 言ってみたけど、期待はあまりしていなかった。昨日の今日では、簡単に俺の車に乗ってくれるとは思えない。
 だけど彼女は
 「あ、ありがとうございます。えと、おねがい、します…」
 と軽く会釈するから驚いた。いや、びっくりしてる場合じゃない。気が変わらないうちに早く車に積んでしまおう。
 「じゃあ、行こうか」
 口調と動作は穏やかに、断固たる意思を持って彼女の背に手を添えた。すると、最上さんは素直に歩き出す。
 呟くような声が漂って来た。
 「わたし、つるがさんにおはなしがあって…」
 どうして全部ひらがなで喋るのかわからないけど、思わず見返すと彼女は頬をバラ色に染め、ほんのり唇に笑みを浮かべている。心が逸った。どうしようもなく。
 「も、最上さん。それ、昨日の…!?」






 「…あれ?」
 宙に伸ばした手に何の感触もなくて、俺は間の抜けた声を洩らす。薄暗いそこは事務所の廊下なんかでなく、日頃慣れた自分の寝室。カーテンの隙間から細い光が洩れて、毛布の上に輝く軌線を描いている。
 「夢…?」
 時計を見れば、そろそろ起きる時間だった。
 俺はシーツの海から身を起こし、長い長い溜め息をつく。どうせなら、もう少し先まで見たかった…いや、もしかするとあそこまでで助かったのかもしれないけど。
 ベッドを降りながら、そんなことを思う。
 洗面所に向かうべく立ち上がり、俺は目を覚ます直前に見た彼女の顔を思い出す。あれが、本当に見られればいいのに。
 さて現実の彼女は、なんと言うのか…
 だけど、昨夜眠る前よりは、楽しみな気持ちが少し増えている気がした。




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