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BLACK WOLF & CAT(3)

 静かだった。
 音量を絞ったTVから聞こえる人声とエアコンの低い作動音。それが世界の音のすべてであるかのように思える。
 そして嗅ぎ慣れた兄の匂い。世の誰がどう思い何と言おうと、自分にはやさしい、なつかしい匂いだ。ただ、最近ストレスのせいなのかタバコの量が増えていて、それが服にもしみついている。少し減らすように言わないと…
 ゆら、と小さな顎が揺れた。
 セツカはうとうと眠り込みそうになって、すいゅ~…と頭上に抜けていく思考を追って目を開いた。
 そして凍った。
 セツカでなく、最上キョーコが。
 「…ひ!?」
 腹筋だけで勢いよく身を起こす。はずが、額の上の大きな手に引き止められた。
 「眠いなら、寝てていいよ…?」
 キョーコの頭を胡坐をかいた膝に乗せてふいと笑う男も、カイン・ヒールでなく敦賀蓮に戻っている。
 「ぜぜぜ全力で辞退申し上げますううう!!!」
 叫んで無理矢理跳ね起きる少女は、はっと気付いてベッドサイドを振り返った。緑のデジタル表示は19:06。
 「セーフだね」
 「はあ…」
 蓮にくすくす笑われ、キョーコは複雑そうに頷く。
 二人の間の取り決めで、朝起きてから夜の19時またはカインの仕事が終わるまでの時間を兄妹として振舞うということにしていた。さすがに24時間ずっと兄妹でいるのは、年頃の娘には何かと辛いこともあるかもしれないという蓮の配慮だった。
 まあ、配慮とはうまい言葉である。
 就寝時まで兄妹設定のままにしてブラコンのセツカにうっかり同衾でもされようものなら、困るのは蓮の方だと言うのに。理性への試練など、室内に満ちる彼女の肌の香りだけでおつりが来る。
 「でも、最上さん」
 俳優が不意に表情を変えた。突っ立ったままの少女を、真剣な眼差しで見つめる。
 「は、はい…?」
 この敦賀さんは苦手だわ、と思いながらキョーコはおずおずと視線を返した。それへ蓮は、珍しく言いにくそうに口を開く。
 「疲れた時は、ちゃんと言ってね?体調が悪い時なんかも。映画の撮影が終わるまで数ヶ月はかかるんだから、その…
 「男にはわからない事情とかも、あるだろうし」
 「!」
 キョーコは真っ赤になった。
 「は、はあ…ええと、その…お気遣い、ありがとうございます。でも…」
 ひとつ息を吸う。声のトーンを落として、
 「それじゃ逆よ。アタシが、兄さんの体調を管理する立場なんだからねっ」
 セツカが言った。彼女を見上げる青年の片頬が、小さく小さく緩む…
 「あ、あ。あの。じゃ、わ、私お夕飯の支度しますね!」
 何かわたわたと奇怪な動きをし、キョーコはキチネットへと逃げ出した。今の微笑が、蓮だったのかカインだったのかわからない。でも。
 でも何か…心が騒ぐ。
 (だって、あんな小さな表情から、ほんとうにいとおしいって感情が伝わって来たんだもの。
 (…って事は、やっぱりカインだったのよね。妹を溺愛するお兄ちゃん。うん、そんな感じだった)
 「……」
 桜色の唇を、ほうと溜め息が割った。その後を追うように呟きが洩れる。
 「やっぱり敦賀さんはすごいわ…」
 愛を否定する少女は、ますます自分も頑張らなくてはと拳を固める。自分の背中を見ている青年の視線には、気付かないままだった。
 
 
 

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