Traps(5000打御礼フリー作品)

 念入りに、慎重に。
 焦りは禁物。


       でも、俺が壊れないうちに。





 視界の端に、時計を確かめる社さんの姿が映った。
 彼女も同時に気がついたのだろう、少し慌てたように脇へ一歩下がる。
 「すいません、お忙しいところをお引き止めいたしまして!どうぞいらして下さい」
 「あ、うん…」
 俺はにこやかに、和やかに交わしていた会話を断ち切られて不満だったけれど、仕事なのだから社さんに文句を言うわけにも行かない。むしろこのマネージャーは、可能な限り協力してくれているのだから感謝するのが筋だ。
 俺は道を譲ってくれる最上さんにごめんねと謝って足を踏み出そうとした。そうしたら、彼女は俺の動作につれて体の向きを変える。振り向くと、にっこり笑って言った。
 「お見送りします」
 かわっ………!!!
 思わず無表情になるのを自覚する。途端に彼女はピシッと音を立てて固まってしまった。ものすごく後悔するけれどもう遅い。
 ああ、ごめんね。これは俺のリアクティブアーマー。破壊力抜群の君の笑顔に、つい反応してしまうんだ。“敦賀蓮”が砕けてしまわないように。
 だからと言って彼女とのかかわりを失いたいわけがなく、俺はできるだけ柔和な笑みを浮かべ直してみる。
 「ありがとう、行って来ます」
 「はい…」
 戸惑いながら応える様子に、少しの苦みと焦りを覚えた。今すぐ抱き寄せて掻き口説いて、全部白状したくなる。
 だけどそんなまねをすれば、きっと瞬殺のバッドエンド。
 だから。俺は、罠を仕掛けようと思う。
 少しずつ一つずつ君を引き寄せて、いつかこの腕に閉じ込めるための、やわらかな罠を。
 右手を伸ばした。
 「ひゃ」
 驚く彼女の髪をひと房取ってツイと引っ張る。
 「つ、敦賀さん!?」
 「埃がついてた」
 にこり笑い指を払う仕草をすると、最上さんは真っ赤な顔でお礼を言う。
 ああ、ほんとうに可愛いな、君は。
 今すぐギュッとしたい。今すぐギュッとできない。
 「蓮」
 なんとなく申し訳なさそうな社さんに促されて我に返った。
 「はい、行きます。じゃあね、最上さん」
 「あ、はい!また」
 素直に歩き出したのは主に変質者と化すのを防ぐためだったけれど、彼女の言葉に再び足を止めてしまいそうになる。
 いや我慢我慢。
 俺は背中でひらひら手を振って、速足で歩き出すマネージャーの背中を追った。

 耳には可愛い声の余韻。

 “また”。

 また俺に、会ってくれるんだね。
 俺はにんまり笑っていたと思う。



         さあ、次はどうしてくれようか?





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