惣て君に(相互リンク記念&お礼→惣也様)
「あのっ!」
何だか勢いよく彼女に話しかけられたのは、所用と移動に挟まれた小さなスキマ時間。
俺のマネージャーはLME俳優部の松島主任と打ち合わせ、ついでにタレント部にも顔を出して某少女のスケジュールもゲットして来るからな~♪と軽やかに別行動、
某少女の相方はドラマの撮りだとかで今日は不在。
のラブミー部々室に2人きり。
「何?」
ダダ洩れの上機嫌のまま笑う俺に、某少女・最上さんは『うっ』と一瞬顔を背ける。時々見る反応だけど、どういう意味なんだろう。
考えている俺に彼女は恐る恐ると言った形相で顔を向け直すけど、なぜかどうしても目が合わない。
「え、ええとその、少々、お願いが…」
やっと言うので、俺は即答した。
「何でも言って」
少し勢い込みすぎたか?
と思ったがラブミー部員1号に気にした(というか気付いた)様子はなく、俺以上の勢いで一気に言った。
「ではお言葉に甘えましてっ!あの、髪の毛を一本戴きたいんですっ!!」
「え」
髪の毛。俺の?
何にするんだろう…と思うと彼女の場合、おまじない系の連想が一番に浮かぶ。彼女が俺に恋のおまじないでもかけてくれるならかかったフリをする気満々…いやその、大歓迎なのだけれど、たぶん違うんだろうなあ。
「いいけど、何にするの?」
尋ねてみる。答えは、
「はい、マリアちゃんに魔除けのお守りを頼まれまして。ここはひとつ、敦賀さんの類稀なエナジーを分けて戴きたく!!」
「ふうん…」
まあそんなことだと思ったけど。
「えと…ダメ、ですか?」
俺の声が僅かに低まったのに気付いたらしい。最上さんはしゅんと縮んで下から俺の顔を見上げて来る。今度『うっ』と洩らしたのは俺の方だった。
「いや…構わないよ。ハサミある?」
「あ、はい!」
きちんと持ち手を向けて差し出された鋏を受け取り、前髪を一本切る。
「ありがとうございます!」
喜色を浮かべた彼女の手に、しかし俺はまだそれを渡さなかった。
椅子を立ち、ちょいちょいと手招くと、最上さんは首を傾げながらも素直にトコトコ寄って来る。
俺は切り取った髪の毛をぴよぴよ指先で弄び、目の前に立つ愛しい鈍感少女に囁いた。
「これを渡すのは、君の言うエナジーを渡すってことなんだよね?」
「え、あ、はあ」
左様でございますが…とぼんやり呟く最上さんに、俺はこっそり苦笑した。いつまでもそんなに鈍いから、こんな目に遭うんだよ?
さっと手を伸ばす。彼女をつかまえ引き寄せた。
「…え」
呆けているのを優しく、でもしっかり抱き締める。
「あ、え、あの、つ、敦賀さんっ…!?」
「じっとして。俺が渡す分のエナジーを、君から補給してるんだから。それでプラマイゼロだろう?」
「え、え、え…でっでもそんな」
うろたえまくる少女が得意の台詞を吐いた。
「はっ破廉恥です~!!!!」
「ノー。ギブ&テイク」
きっぱり言い切ると、彼女はもぞもぞうごうご蠢きながらも口を閉じた。いいこと幸い、腕にもっと力をこめる。
「あ、あの、いつまで…」
すこし震える最上さんの声がたまらない。ごめんね、こんな男が君の尊敬する先輩で。でも俺がなりたいのはそんなものじゃないんだ。
「あと10秒」
「うう…
「…………
「じゅ、10秒たちましたが」
「あと20秒」
「つ~る~が~さ~ん~!!」
「お待たせ、蓮」
しばらくして戻って来た敏腕親切+特技アリの有能マネージャーを、俺は極上機嫌で振り返った。
「いえ、ちょうどいい時間ですよ」
「?」
社さんは一瞬目を見開いたあと、まず真っ赤になって背を向けている最上さんを見、次に少し冷えた目で俺を見る。カンのいい人だなあ。
「さ、行きましょうか」
俺は何食わぬ顔で促し、さっさと立ち上がった。
「じゃあまたね、最上さん」
ほんのさっきまで堪能していた少女に声をかけると、彼女は振り向かないままかすかに頷いてよこす。
「はい…」
ほらまた。こんな状態でも律儀に返事をするから、俺は赦された気分になるだろう?
彼女の香りをつかまえるように宙で拳を握り込み、言ってみた。
「今度、俺にも一つ作って欲しいな。君の髪入りで…貰ったエナジーは、俺が補給してあげるから」
「△%$□#○~!!!」
何語かわからない叫び声に追い立てられて、俺は社さんと共にラブミー部々室を出る。呆れ顔のマネージャーににっこり笑いかけながら、考えていた。
と言うよりむしろ、髪の毛一本と言わず、俺を全部君にあげたいところなんだけどね。
何だか勢いよく彼女に話しかけられたのは、所用と移動に挟まれた小さなスキマ時間。
俺のマネージャーはLME俳優部の松島主任と打ち合わせ、ついでにタレント部にも顔を出して某少女のスケジュールもゲットして来るからな~♪と軽やかに別行動、
某少女の相方はドラマの撮りだとかで今日は不在。
のラブミー部々室に2人きり。
「何?」
ダダ洩れの上機嫌のまま笑う俺に、某少女・最上さんは『うっ』と一瞬顔を背ける。時々見る反応だけど、どういう意味なんだろう。
考えている俺に彼女は恐る恐ると言った形相で顔を向け直すけど、なぜかどうしても目が合わない。
「え、ええとその、少々、お願いが…」
やっと言うので、俺は即答した。
「何でも言って」
少し勢い込みすぎたか?
と思ったがラブミー部員1号に気にした(というか気付いた)様子はなく、俺以上の勢いで一気に言った。
「ではお言葉に甘えましてっ!あの、髪の毛を一本戴きたいんですっ!!」
「え」
髪の毛。俺の?
何にするんだろう…と思うと彼女の場合、おまじない系の連想が一番に浮かぶ。彼女が俺に恋のおまじないでもかけてくれるならかかったフリをする気満々…いやその、大歓迎なのだけれど、たぶん違うんだろうなあ。
「いいけど、何にするの?」
尋ねてみる。答えは、
「はい、マリアちゃんに魔除けのお守りを頼まれまして。ここはひとつ、敦賀さんの類稀なエナジーを分けて戴きたく!!」
「ふうん…」
まあそんなことだと思ったけど。
「えと…ダメ、ですか?」
俺の声が僅かに低まったのに気付いたらしい。最上さんはしゅんと縮んで下から俺の顔を見上げて来る。今度『うっ』と洩らしたのは俺の方だった。
「いや…構わないよ。ハサミある?」
「あ、はい!」
きちんと持ち手を向けて差し出された鋏を受け取り、前髪を一本切る。
「ありがとうございます!」
喜色を浮かべた彼女の手に、しかし俺はまだそれを渡さなかった。
椅子を立ち、ちょいちょいと手招くと、最上さんは首を傾げながらも素直にトコトコ寄って来る。
俺は切り取った髪の毛をぴよぴよ指先で弄び、目の前に立つ愛しい鈍感少女に囁いた。
「これを渡すのは、君の言うエナジーを渡すってことなんだよね?」
「え、あ、はあ」
左様でございますが…とぼんやり呟く最上さんに、俺はこっそり苦笑した。いつまでもそんなに鈍いから、こんな目に遭うんだよ?
さっと手を伸ばす。彼女をつかまえ引き寄せた。
「…え」
呆けているのを優しく、でもしっかり抱き締める。
「あ、え、あの、つ、敦賀さんっ…!?」
「じっとして。俺が渡す分のエナジーを、君から補給してるんだから。それでプラマイゼロだろう?」
「え、え、え…でっでもそんな」
うろたえまくる少女が得意の台詞を吐いた。
「はっ破廉恥です~!!!!」
「ノー。ギブ&テイク」
きっぱり言い切ると、彼女はもぞもぞうごうご蠢きながらも口を閉じた。いいこと幸い、腕にもっと力をこめる。
「あ、あの、いつまで…」
すこし震える最上さんの声がたまらない。ごめんね、こんな男が君の尊敬する先輩で。でも俺がなりたいのはそんなものじゃないんだ。
「あと10秒」
「うう…
「…………
「じゅ、10秒たちましたが」
「あと20秒」
「つ~る~が~さ~ん~!!」
「お待たせ、蓮」
しばらくして戻って来た敏腕親切+特技アリの有能マネージャーを、俺は極上機嫌で振り返った。
「いえ、ちょうどいい時間ですよ」
「?」
社さんは一瞬目を見開いたあと、まず真っ赤になって背を向けている最上さんを見、次に少し冷えた目で俺を見る。カンのいい人だなあ。
「さ、行きましょうか」
俺は何食わぬ顔で促し、さっさと立ち上がった。
「じゃあまたね、最上さん」
ほんのさっきまで堪能していた少女に声をかけると、彼女は振り向かないままかすかに頷いてよこす。
「はい…」
ほらまた。こんな状態でも律儀に返事をするから、俺は赦された気分になるだろう?
彼女の香りをつかまえるように宙で拳を握り込み、言ってみた。
「今度、俺にも一つ作って欲しいな。君の髪入りで…貰ったエナジーは、俺が補給してあげるから」
「△%$□#○~!!!」
何語かわからない叫び声に追い立てられて、俺は社さんと共にラブミー部々室を出る。呆れ顔のマネージャーににっこり笑いかけながら、考えていた。
と言うよりむしろ、髪の毛一本と言わず、俺を全部君にあげたいところなんだけどね。
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