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たいせつでたいせつで(3)

 クオンはそわそわと8の字を描いて歩き回っている。キョーコはなかなか現れない。と言うか早く来すぎた。
 小さな手提げにざっとまとめて来た救急セットをつかみ締め、彼は数歩歩いては伸び上がって公園の入り口を確かめるということを繰り返している。
 そのうちに碧い碧い瞳は、余計なものを見つけてしまった。
 丁度8の字の中心に差し掛かった彼の目の先に、公園に沿った歩道を腰を振りながら闊歩していく女性の姿。見たところ25~6歳。実年齢こそ知らないが、彼女をクオンは知っていた。
 しかも、今会いたくない種類の知り合いとして。
 頼むから、俺に気付かずに通り過ぎてくれ…祈っていると、違う意味で熱い視線は彼女の意識を惹いてしまったようだ。ぱっと振り返って彼を認めると、いそいそ近寄って来るではないか。
 「クオンじゃない、こんなとこでどうしたの」
 「…」
 クオンは心の中で周囲5mの芝生をむしった。
 「別に。あんたには関係ない、行けよ」
 不機嫌に言い捨てるが、女は却って興味をそそられたようだった。
 「ご挨拶ねえ。あたしの中で一人前になった坊やちゃん」
 嫌な笑い方をして、するりと手の甲で彼の頬を撫でるついで、指輪の石で引っ掻いた。すうと赤い筋が走るのを今度は指先で辿り、生温かい息を吹きかける。
 「散々面倒見てあげたのに」
 「そっちだって、俺を見世物にしただろ」
 「そりゃあね。あんたみたいに綺麗な男の子、そうはいないもの。連れ歩いてるだけでステータスってもんよ。
 「言っとくけど、褒めてるのよ?」
 「嬉しくないよ。行けったら」
 「あらあら、ご機嫌斜めだこと。でもそんな顔してても綺麗って、ずるいわよねえ」
 「……」
 もう相手にする気にならず、クオンは無言で女を睨み据える。女はクスクス笑って踵を返した。
 「まあいいわ。誰を待ってるのか気になるところだけど、ここは退散しましょ。またね」
 クオンはそっぽを向いたまま返事もしなかった。
 女が去っても、鼻の奥にきつい香水の匂いが詰まっている気がして不快だった。
 (何があたしの中で一人前になっただ。初めての女がそんなに得意か。俺は誰でもよかったんだ、あの子じゃないなら…)
 「…え?」
 間抜けな声が出た。
 (待て、ちょっと待て。いや…それは、二重に犯罪だろ…?)
 自分は14歳、相手は10歳では。いや、当時なら13歳と9歳…
 待て。違う。どうしてそういう話に。
 血の気が引いた。それとも上ったのか?
 「うそだろう………」
 「何が?」
 にょっ。
 いきなり目の前に大きな瞳。
 「うわっ!?」
 叫んでのけぞるクオンは、いつの間にか蹲っていた自分と、それを覗き込んでいる黒髪の少女を発見した。
 「キョ、キョーコちゃん」
 「早かったのね、コーン。私も、学校終わってすぐ来たんだけど。きっと、コーンは足が長いから歩くのが速いのね」
 「あ…いや…」
 学校にはほとんど行っていない。真面目なキョーコにはそうと言い難く、彼は言葉を濁した。
 キョーコは別段こだわる様子をみせず、むしろクオンの頬に走る蚯蚓腫れを気にした。
 「これ、どうしたの?」
 しかし彼にしてみればこれまた鬼門というものだ。
 「な!なんでもないよ。あの、木でひっかいたんだ。枝が出てて。
 「それよりキョーコちゃんこそ!手、見せて。俺、薬持って来たんだ。昨日のケガも…」
 慌てて言い出すと、スカートの裾から覗くちいさな膝小僧が目に入った。救急バンが3枚ばかり貼ってあるけれど、1枚としてきちんと傷を覆っていない。
 「これ…自分で貼ったの?」
 「ううん、お母さんが。ちゃんと前見て歩きなさいって叱られちゃった」
 えへへ、と照れたように笑うのは、こんな程度でも構われたのが嬉しかったのか。鼻の奥が熱くなって、クオンはそっと吐息を逃がした。
 「…きのう、貼ったんだよね。じゃあ、もう替えた方がいいんじゃないかな」
 キョーコを刺激しないように提案してみる。
 「でも…」
 「黴菌がついちゃうよ。俺がやってあげるから」
 「うーん…コーンがそう言うなら…」
 惜しそうに膝の救急バンを見る姿に、クオンは腹が立った。絶対に、自分の方が君の事を考えてるのにと。
 「これ持って、あそこ座ってて」
 彼はやや不機嫌に救急セットを渡し、ベンチを指す。キョーコが少し身を縮めたのに気付いて急ぎ笑顔を作った。
 「俺は、ハンカチ濡らして来るから」
 「う、うん」
 大人しく従う背中を少し見送って、クオンは首を傾げる。
 (なんでかな…キョーコちゃんといると、すごく気分の上下が激しい…)
 金色の頭を振り振り、彼は水飲み場へ向かった。


 
 ベンチに戻ると、キョーコの姿がなかった。救急セットの入った手提げが置いてあるから、場所は間違いない。
 「トイレでも行ったのかな…」
 ひとわたり周囲を見回して、公園の入り口ごしに華奢な背中を見つけた。中年の男に吊り下げられるように手を引かれ、今しも通りの向こう側に渡って行こうとしている。その先には、古そうな青いピックアップが停まっていた。
 クオンは息を飲む。連れて行かれてしまう。やっと会えたのに。
 「キョーコちゃんっ…」
 急いで追うと、声が聞こえた。
 「ごめんなさい、ごめんなさい、すぐ帰るつもりだったの」
 「うるさい、この馬鹿餓鬼。寄り道はするなと言ったろうが!早く乗れ」
 「まっ、待っておとうさん。コーンに…」
 「ああ?トウモロコシがどうした」
 男はキョーコを引っつかみ、運転席に乗り込みながら助手席に放り投げた。バン、と手荒くドアを閉める音が響く。
 クオンは後を追おうとするが、折悪しく一続きの車が通過する。苛々しながらやり過ごすうち、青い車は黒っぽい排気を残して走り去って行った…




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