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たいせつでたいせつで(4)

 焦燥を胸に家に戻ると、クオンはエプロン姿の父に出迎えられた。
 「お帰り、クオン!おやつを沢山作っておいたぞ!!」
 楽しそうに言うのだが、父の“沢山”がどれくらいであるか熟知している彼には心の弾む言葉ではなかった。家中に、甘い匂いが充満している。
 「友達はどうした?あとから来るのか?」
 クーは息子が一人であることに目を留め、リビングへ向かいながら尋ねる。クオンは力なく首を振った。
 「今日は、来れなくなったんだ…」
 「そうか、残念だな」
 いかにも沈んだ息子の様子にクーは顔を曇らせ、軽く肩を叩く。
 「じゃあ、“相談”は、また今度か…?」
 尋ねられてクオンが顔を上げた。忙しい父に、そうそう無理を言うわけにも行かない。何より、早くあの子を助けられるような手を打ちたい。彼は瞳に決然とした色を浮かべてかぶりを振った。
 「ううん、父さん。俺が話すから、聞いてくれるかな…」
 クーは大きく両手を拡げた。
 「勿論だ」



 「まだ…ちゃんと話ができなくて、俺も全部飲み込めてるわけじゃないんだけど」
 「うん…?」
 コーヒーをふたつ淹れたクーがリビングに戻ると、ソファで俯いて考え込んでいたクオンがそのままの姿勢で切り出す。片方のコーヒーカップを息子に渡し、クーは隣に腰を下ろした。
 「あの子は辛い思いをしてる。でも、すごく我慢する子なんだ…」
 ぽつぽつと紡がれる、胸が軋むような声。助けたいんだ、とクオンは呟く。
 「どういう知り合いなんだ…?」
 息子がこれほどに執着する人物に心当たりのなかった…そもそも、近年の彼の交友関係などほとんど把握できてはいないのだが…クーは、疑問のままに尋ねた。なぜか一瞬、クオンが口ごもる。
 「…昔…日本に行った時」
 「日本?」
 確かに、クオンを連れて日本に行ったことはある。もう4年も前の話だが、その時に知り合った人物なのか。しかもおそらく、女の子だ。
 「京都で、会って…ちょっと何て言うか、夢想癖みたいなものを持ってたけど…でも、とてもいい子なんだ。何にでも一所懸命で、頑張り屋で、優しくて。なのに幸せじゃなくて、よく泣いてて。俺は…あの子に笑ってほしくて…話を合わせたり、聞いたり、宙返りをして見せたり、すごく頑張ったよ。
 「だってあの子は、俺のためにも泣いてくれたから。
 「京都にいる間は毎日会って、遊んだりお互いのことを話したりした。別れ際には、すごく泣かれちゃって…あ。それで…いつか、父さんにもらった石をなくしたって言ったけど。アイオライト。あれ、ほんとは、その子にあげたんだ。涙を吸い取る魔法の石だよって言って」
 「そうか…」
 「ごめんなさい」
 「謝ることはない、お前はいいことをしたんだ」
 ほんのりと微笑みながらクーは頷く。いつの頃からか次第に笑顔を減らし、自分たち両親と距離を置くようになって行った息子。彼が、救いとなる何かと出会っていたことが有難いと思う。
 クオンはほっとした顔をして、しかしじきに沈痛な表情に戻った。
 「あの子は厳しいお母さんとうまく行かなくて、お父さんもいないからって他人の家に預けられっ放しだったらしいんだ。」
 ひとつひとつ手繰り寄せるように話を続ける。少女が、いつかそこの息子のお嫁さんになるんだと瞳を輝かせていたことは省略した。
 「6歳にしかならない子がよその家で気を遣って、泣く場所もなくて、一人で森へ入って…そこで俺に…その時も泣いてたんだけど…」
 言いかけてクオンは息を入れる。なぜか、少し顔が赤い。
 「声をかけて来た。『あなた妖精?』って」
 ちらと父の顔を窺えば、端整な顔は満足げに頷いている。
 「なかなか見る目のある子だな。確かに、お前の美しさと来たら人外の範疇に属する」
 「……」
 久しぶりの父との会話。昨日、相談があると切り出した時の反応にも思ったが、父の親馬鹿っぷりがあまりにも変わっていないのでクオンは脱力した。同時に、親の影を出たいともがきながら親に守られている自分自身を強く意識する。もしキョーコちゃんに、こんな風に自分を愛し認めてくれる人がいたなら、あの子はどんなにか救われて…きっと、もっとたくさん笑顔でいられるはずなのに。
 それなのに。
 「父さん!」
 クオンはたまらなくなって叫ぶ。クーが目を丸くした。
 「あ、ああ。どうした、クオン」
 「昨日、偶然あの子が俺をみつけてくれて…再会したけど。あの子は、傷だらけだったんだ。掌にいっぱい、タバコの火を押しつけたあとがあった!たぶん、義父にやられたんだ!そんな感じのこと言ってた。それに暗くなる前に家に帰らないとまた、って……
 「またって!!」
 「ク、クオン。落ち着け」
 「だって父さん!さっきも、迎えに来た父親らしい男に罵られて、荷物みたいに車に放り込まれて!あんなのひどいよ!!あんな、小さな女の子に。きっと、あの子のケガは俺が見ただけじゃない。他にもあるんだ…もしかしたら、母親にだって…
 「俺はマヌケだ。さっさと住所とか聞いておけばよかったのに!なんにも話せないうちに連れて行かれてしまった。でも…父さん…っ…」
 必死な       物狂おしいほどの光を宿す碧い瞳。クオンは血を吐くように訴えた。
 「助けたいんだ…キョーコちゃんを          !!」





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