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たいせつでたいせつで(6)

 季節がひとつ移った。
 空は低く重くなり、空気は冷えてしんと澄み始める。街も人もクリスマスの準備に浮き立ち、誰もが優しくなれる時季。
 しかし連日足を棒にして帰宅するクオンには、それらの何一つとして意味のあることには感じられなかった。
 相変わらず、キョーコが見つからない。
 一体どこにいるのだろう、無事なのだろうかと不安が暴走しかけ、彼はひどく疲労を覚え始めていた。
 じきにクリスマス。
 そう言えば、あの子は12月25日が誕生日なのだと言っていた。預けられた先で、クリスマスと一緒に祝ってもらえるのだと笑うのがいじらしくて、哀しかった。
 (今すぐ出て来て…キョーコちゃん)
 夜天を見上げ、クオンは思う。
 (そしたら、クリスマスじゃなくてバースデーのお祝いをしよう。俺が、何万回だっておめでとうって言ってあげる。君だけに)
 聖夜を待つ星々は何も語らず…
 ひっそりと運命を紡いで行く。



 ヒズリ家では、クリスマスイブにプレゼントを抱えて孤児院や福祉施設の類を慰問するのが毎年の習慣になっている。
 いかにグレていた時であっても、クオンもこればかりは義務として従うことを甘受させられていた。
 そしてその日、依然として影も見つからないキョーコを思い、彼は例年以上に気乗りがしなかったが、おとなしくプレゼント袋の一つを抱えて両親に同行した。今年はプロテスタント系の孤児院。20人ばかりの子供がいると言う。
 …中に。
 彼女はいた。
 スターであるクーと麗貌著しいジュリエナの差し出すプレゼントに群がる子供たちの向こう、壁際に置いた椅子にぼんやりと座って。
 「キョーコちゃん!?」
 プレゼント袋を放り出して少女に駆け寄る息子に、両親が揃って驚いた目を向けた。
 「クオン!?どうしたのいきなり」
 「クオン…」
 クオンには、2人の呼びかけなど耳に入った様子もない。喜びと戸惑いと不安のまま少女に取り縋る。
 「キョーコちゃん…どうしてここに!?すごく…すごく探したんだよ。でも全然見つからなくて…」
 しかしキョーコは何の反応も示さず、置き忘れられたぬいぐるみのようにちんまりと座り続けている。
 「キョーコちゃん…?」
 そろり、とクオンは呼びかけた。手を伸ばし、まるい、やわらかな頬に触れてみる。
 それでも彼女は彼を見なかった。
 光を宿さない大きな瞳を捉えられず、クオンは愕然と息を呑む。
 「一体…」
 「クオン…その子が?」
 父の声に漸く振り返るが、碧い瞳にはいたましい恐怖の色が浮かんでいた。
 「キョーコちゃん、なんだ…でも…どうして、こんな……っ…」
 「…」
 少女を抱き締め声を震わせる息子の姿から、クーは傍らで事の成り行きに茫然としている施設の女性職員に目を移す。
 「…あ」
 はっと我に返り、彼女は口元に手を当てる。
 「あの、Mr.…息子さんは、あの子を知って…?」
 「そのようです」
 クーは低い声で、よろしければ事情を、と促した。
 「は、はあ…では別室で。でも息子さんには…」
 「俺も聞きます!」
 聞き耳を立てていたらしいクオンが鋭く叫ぶ。
 「で、でも」
 憚る様子の女性職員に、クーが穏やかに頼んだ。
 「いいんです、聞かせてやって下さい」
 それから息子に向き直り、
 「辛い話になるかもしれないぞ、クオン。だが、取り乱さないと約束できるな?」
 父の言葉にクオンは腕の中の少女を見、のろのろと顎を引く。
 「はい…父さん。約束、します」
 身動き一つしないキョーコの額に口づけ、彼はふらりと立ち上がった。
 「少し待ってて…キョーコちゃん」



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