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たいせつでたいせつで(8)

 (キョーコちゃん…!)
 クオンは萎えそうになる足を必死で踏みしめて母と子供たちのいる部屋へ走る。廊下の弱い灯りがやけに幻想的で、夢の     悪夢の中にいるようだ。
 (どうして)
 と思う。彼の胸が、手足が、目が鼻が耳が。全身が。叫ぶ。悲鳴を上げる。
 (どうして、いつも。
 (君は否定されて。
 (やさしいのに。
 (君は、やさしいのに)
 愛し、差出し、赦し続けて壊れてしまった小さな女の子。
 (どうして)
 自分には、何もできなかったんだろう。
 ノックもせず、ものも言わずにドアをぶち開けた。びっくり顔の子供たちと母が一斉に振り返る。
 自分の顔色を見て美貌を曇らせる母に構わず、彼はまっすぐにキョーコのもとに急いだ。椅子を引き寄せて隣に座り、ぎゅうと抱き締める。やはり無反応な少女の体の柔らかさが、ひどく哀しかった。
 「キョーコちゃん。キョーコちゃん…っ」
 無駄だと知りつつ、呼びかけずにいられない。迷子になった彼女の魂に、手を伸ばす方法が他に思いつかない。
 だけど。だからって、何もしないでなんかいられる訳がない。
 「クオン…」
 母の声に、彼は緩慢に振り返った。
 「これ、その子の分のプレゼントだから…あなたが渡してあげなさい」
 「…うん…」
 ひっそりと微笑む母の手から包装された箱を受け取る。キョーコに向き直ると、小さな手を引き寄せてプレゼントを載せた。頬に口付ける。
 「メリークリスマス、キョーコちゃん。君に神様の祝福がありますよう…」
 「そんなやつ、プレゼントなんか要らないよ!」
 突然、甲高い声がクオンの言葉を遮った。キョーコと同じくらいの少年がさっと駆け寄り、キョーコの手からプレゼントの箱を取り上げる。
 「なんにもわかんないんだからさ、もったいないじゃん。オレがもらってやるよ!」
 「なっ…」
 クオンが立ち上がる。少年を捕まえようと伸ばした手が、途中で止まった。
 奪い取られたプレゼントの箱に引っ掛かって、キョーコが肩にかけていたポシェットが跳ねる。中から何かが飛び出した。
 ひとつは、一枚のハガキだった。少し黄ばみ始めた、京都の寺院の絵葉書。飛んで来たそれをキャッチすると、“ショー”の文字が目に入った。覚えのある3文字の名前。
 (これは…)
 息を呑むクオンは、自分の服の裾をつかむ手と、もう一つの小さな物音に気付くのが遅れた。
 「…え」
 少女が立ち上がっていた。
 「キョーコ、ちゃん…」
 彼に取り縋り、焦点の合わない瞳のまま彼の手にあるハガキをいっしんに見つめている。
 胸が痛んだ。
 (君は、今でも)
 奥歯を噛み、手が震えないよう細心の注意を払ってハガキを返してやった。キョーコはそれをしっかり胸に抱き締め、しかしまだ周囲を見回している。
 「キョーコちゃん?」
 同じように目を配り、クオンは左手の窓の下、椅子の足元に小さな巾着を発見した。そしてその先に転がる、青い石を。
 「…!」
 つと歩み寄り拾い上げる。
 心配そうに彼を見上げるキョーコに屈み込んで目線を合わせたクオンは、そうっとそれを…彼が与えた魔法の石を、もう一度彼女に手渡した。
 キョーコは石を受け取り、ふや~、と笑う。
 「コーン…」
 愛しさがこみ上げ、クオンは泣きそうになった。せり上がる感情をぐっと飲み込み、少女の頬を撫でる。
 「大事に、してくれてるんだね…」
 今でも。
 尋ねたかった。
 (君は…いるんだね。そこに。俺のこと、覚えてる?)
 再び失われて行く瞳の光を追うように、彼は少女を強く抱き寄せた。





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