BLACK WOLF & CAT(7)

 けほ、と小さな咳が聞こえた。
 キョーコは素早くセツカになり、兄のベッドに歩み寄った。
 まだ横になっているが開いてはいる目を覗き込めばカインのもの。長い腕がのろのろと上がって、自分の喉を不審そうに押さえている。
 「喉痛いの?兄さん」
 こくりと頷く黒髪の大男。わんこモードになっていると気付いてセツカは軽く溜め息をついた。
 「風邪かしら…熱はない?」
 額に手を当てようとするとふいと逃げる。
 「なに」
 尋ねた時にはわんこは2匹に増えていた。セツカは首を傾げ、もう一度手を伸ばした。
 また逃げられる。わんこはとうとう3匹、ダンボールがぎっちぎちになっている。今にもはじけそうだ。
 「一体何がしたいのよ…」
 向こう端に寄ってしまったカインを追い、妹はベッドに膝で乗り上げて顔を覗き込もうとした。
 その腕が、ふいに強く引かれる。
 「きゃ…」
 どさり。セツカは小さな悲鳴と共に兄の胸に倒れ込んだ。ひっ抱えられたまま怒り出す。
 「ちょっ、もう!要求があるなら口で言って!!」
 「…熱」
 「はあ!?だからさっきから、測ろうとしてるのに。じっとしててよ」
 カインの額に伸ばす手が捉えられた。妹の手を固定し、兄は自分のデコをくいくいと前に出す。
 なんか、どうも。とセツカは思った。
 「おでこ同士で測れって言いたいの…?」
 わんこが一斉に尻尾を振った。今度の溜め息は重かった。
 「まっ、たくもう…たまに調子悪いとここぞとばかり甘えるんだから」
 新しい設定が追加されたらしい。
 こちん。やや強く額が合わされ、セツカは寄り目になった。
 「うーん、ちょっと熱いかしら?今日は撮影開始時間が遅いから、薬飲んでもう少し寝ておいた方がいいわね」
 薬と聞いてわんこの耳がへたりと垂れる。
 「ダメ。体調管理はしっかり」
 セツカはさっさと兄の腕を抜け出し、自分の鞄に歩み寄った。
 「ひととおり揃えといてよかったわ。えーと、あとお水」
 風邪薬らしき箱を取り出すと、今度は冷蔵庫のところに行って中を見渡す。
 「半分飲みかけのがある、これでいいわね。ちょっとぬるめましょうか」
 「そのままでいい」
 「喉に悪いわよ?」
 セツカは言いながら兄の元に戻り、ベッドサイドに腰を下ろした。
 「はい、じゃあいい子にしましょうねかいんまるー」
 歌うように言って、カインの頭を抱え上げ、
 自分の膝に乗せた。
 「!?」
 カイン、を演じる人物の瞳に一瞬動揺が過る。
 しかしそれには気付かず、ブラコンの妹は水を自分の口に含んだ。3回ほど軽く自分の顎を揺すってから兄の口を開かせて薬を放り入れ、屈んで口移しに水を流し込む。
 「少しはぬるくなったでしょ」
 「……」
 いたずらっぽく笑う妹を無表情に見返し、兄は口元を押さえながら身を起こした。なにか口の中で呟いている。
 (そんな簡単に…)
 妙に複雑そうな顔をしているカインに、セツカは寝て寝てと背中をはたく。その手にはミネラルウォーターのペットボトル。先日、撮影現場でカインが口移しを要求した時の飲み残し。
 ともかく、“仕切り直し”はまんまと成功したらしい。



 
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