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たいせつでたいせつで(111)

 「大きな荷物は先に入れてあるから、まずは台所と寝室だな!」
 クーが元気よく腕まくりをする。
 「はいはい、食べることは一番よね」
 軽く流した奏江が、傍らに立つ妹(役)を振り返った。
 「ほらキョーコ、早く荷物出して…キョーコ?」
 声もなく立ち尽くしている様子に気付き、怪訝そうに連れの視線を辿る。
 「…あ」
 彼女は小さな声を洩らした。
 キョーコは一心に腰ほどの高さの鉄柵の向こうの隣家へと視線を固定させている。期待を浮かべるその瞳の先には、金色の輝き。よほどラフな服装ではあるが、確かに昨夜の佳人が繊細な手で鋏を使い、庭の薔薇を切っている。
 「あら?」
 ふと目を上げた女性が、少女たちに気付いた。
 そこへ、
 「母さん、このカタログの…」
 涼やかな声と共に隣家の玄関ドアが開く。
 「あら、クオン。丁度よかったわ。お隣の方が越してらしたみたいだから、ご挨拶しましょう」
 奏江が慌ててぺこりと頭を下げ、棒立ちになっているキョーコの頭を押さえた。
 「こ、こんにちは!あの、今日からここに越して来た…」
 「おお、これはこれは!」
 一旦家の中に引っ込んでいたクーが現れ、大きく両手を拡げる。大人たちは早速隣家との交流を始めた。
 その一方で、立ち尽くし、ただ見つめ合う少年と少女。
 もう1人の少女が、妹の背中をとんと押した。
 「ひゃ」
 「危ない」
 キョーコは突然押されて前のめりによろける。がよん、と音がして、柵を横っ飛びに乗り越えてきた少年がそれを受け止めた。
 「大丈夫!?」
 「あ、あの、はい…」
 見下ろした視線、見上げた視線が正面から出会う。二人は一様に息を呑み、瞳を揺らがせ、やがて同時に同じ言葉をこぼす。
 「なま え…」
 言いかけたきり絶句する二人の向こうに、馬鹿馬鹿しそうに肩をすくめる奏江の背中。その足元に、さきほど少年が持っていた紙片がひらりと舞い落ちた。
 コンパクトなボディに不思議にシックな色彩を纏った車のカタログ。


 『Lyrical,Oriental,Vantage,Ecology.
 『FIRST LOVE』

 


 「と来たもんだ」
 マカナンはニヤニヤ笑み崩れながら、映像に被せられる予定のキャッチコピーを呟く。
 「よーしよし、あとはラストシーンだけだな。ここまでは順調…」
 宙でくるくる指を回したと思ったら、彼は不意に手を止め首を傾けた。
 「…あー…
 「うーん…?どうだ」
 彼の世界は次第に傾斜を増して行く。呆れ顔で見ているADの視線には気付いていたが、構う気もなく瞳を浮かせて考え続けた。
 ちーん。という音がしたかどうか。
 結論が出たらしく、ディレクター氏はぶんと頭を振って身を起こす。
 「おーい、チビチビコンビ」
 呼びかけると、振り返ったのはキョーコと不審げな奏江だった。
 「違う違う。チビ嬢ちゃんは合ってるけどな、も1人はチビズリ、お前だよ」
 「監督…その呼び方はいい加減にやめてくれませんか」
 クオンは両親を気にしながら抗議するが、彼にとってはどこ吹く風というもの、委細気にせず端的に自分の要求を口にした。
 「お前ら、ちゅーしろ」
 『はああ!!?』
 
 



 
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