あんじゅ・ぶらん(中編)

 やはりシーツの波に手こずりながら、仔リスは急いで飼い主のもとに駆け戻る。と思うと座ったままの俳優の脚・腕・肩と跳び移った。
 「キョーコちゃん?」
 戸惑う蓮を、彼女は決意をこめた眼差しで振り返る。
 そして、リスが、飛んだ。
 「蓮、パジャマこれでいいか…うわ!!」
 俳優の肩を思い切り踏み切り、着替えを手に戻って来たマネージャーの胸元へと。
 跳躍と言うよりも滑空するような距離を乗り越えて、キョーコはしっかと社の背広のあわせ目に取り付き、そこへ潜り込む。ふむと鼻息を噴き、厳しい目で後ろに手をついて茫然としている飼い主を睥睨した。
 社がパジャマを差し出しながら笑い出す。
 「自分の心配は要らないから、ちゃんと寝てろってさ。ねー、キョーコちゃん」
 同意を求められた小動物はこくこく頷くような動作をした。蓮は苦笑するほかない。
 「わかりましたよ…」
 彼がおとなしく着替えてもそもそ布団に入ると、来ていた服を受け取るマネージャーの服の中からリスが這い出しベッドに飛び降りた。ちょろろ、と飼い主の枕に上り、布団の端をぽんぽん叩く。
 「へえ蓮、よしよししてもらったじゃないか」
 「社さんは、キョーコちゃんの気持ちがよくわかるんですね…」
 「そりゃ、どこかの俳優の世話をしなきゃならない仲間意識ってやつかな。て言うかお前、熱で理性飛んでる」
 のか、と問いかけたのだろうマネージャーは、そこで止めてハタと宙を見上げる。
 「ことキョーコちゃんに関すると、いつもか…
 「まあいいや、いい子で寝てろ。いま濡れタオル用意して、キョーコちゃんの世話もするから」
 「よけ…いえ、ありがとうございます。お願いします」
 仔リスの世話という弱味のある俳優は、諦めの吐息と共に否定の言葉を止めた。それを確認し、キョーコは再び彼女用の階段へ向かう。部屋の隅に置いてある自分のケージは底辺1m×1.5m、高さが約2mという特注品だが、利口なリスはそのフェンスの外側をがしがし登り、横のリビングチェストの棚に上がった。
 「?」
 さすがの社も彼女の真意を測りかねる中、うんせうんせと引っ張り出したのは給水ボトル。
 「あ」
 マネージャーが小さな声を上げた。
 「そうか、何か飲むもの用意しとくな」
 蓮に言うと彼は急いで気の利くリスのもとに行き抱き上げる。
 「大丈夫だよ、キョーコちゃん。蓮の飲み物は俺が用意するからね」
 ちょっとがっかりな顔をしたリスは、そのまま運ばれて蓮の枕元にある専用バスケットに入れられた。
 「キョーコちゃんはね、そこにいるのが一番蓮の薬になるから。ほんとなら気管支炎起こしてるのに動物をそばに置くのはよくないと思うけど、なにしろコイツは君がいないとダメだからね」
 「うん…それは、本当だ」
 バスケットのへりに前肢をかけ、キョーコはほわりと微笑む飼い主を見つめる。そのまま、蓮は幸せそうに目を閉じた。
 



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 予定のシーンが入らなかったので一回伸びます~。いつもこんなんだな;


 
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やっぱりリスではできることに限界がありますが、可愛い看病にメロメロですね。

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