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たいせつでたいせつで(120)

 「わあ…」
 与えられた部屋に入るなり、キョーコはほんわり頬を染めて嘆声を放った。
 豪壮華麗な宝田邸の客間の中でも、殊に天蓋とたっぷりドレープを取った紗幕に包まれたベッドに目が釘付けになっている。その脇に、先に運んでもらった彼女のトランクが置かれていた。
 「素敵なベッド…!」
 「別に、おかしなところはなさそうかな…」
 隣の部屋だと聞いたクオンはそのまま案内の者を下がらせて一緒にキョーコの部屋を検分していたが、厳しい瞳のまま壁をノックして回りながら呟いた。なにしろここの邸主と来ては、面白いと思ったら何をしでかすか知れたものではないのだ。
 慣(らさ)れている自分や父ならいざ知らず、少女の部屋でどこかのカーテンを開けるとサンバが鳴り出してレーザー光が乱舞するだとか、クロゼットの中に堂々と5層のトーテムポールがあるだとか、果ては壁にどんでん返しがあっていきなりフルコスチュームのローリィ宝田が登場するだとかいうことがあってはかなわない。
 かく言う次第で慎重に室内を確かめていたのだが、もちろん異国の地にあってもキョーコバカは何にも優先する彼の特性であって。
 何気ないとも思える少女の一言に、ぴっと耳が立ってしまったのは仕方ないと言うよりは当然のことだった。
 「キョーコちゃん、あのベッド気に入ったの?」
 彼の目には悪趣いやいや些か派手に思える大きなベッドを見遣って問えば、キョーコは夢見る瞳でこくこく頷く。
 「王女様のベッドみたい。ヒズリ家にもらってるお部屋も“アンの部屋”ですっごく素敵だけど、ここも豪華で素敵!」
 「そ、そう…気に入ったなら、よかった」
 クオンはちょっと自信がなくなりそうな気分で微笑んだ。そう言えば、ローリィ宝田のコスプレにも、彼女は驚きはしたけれどドン引きという様子でもなかった。もしも彼女が、自分よりも彼に近いセンスの持ち主だとしたら…自分は、ついて行けるだろうか。
 (いや、でも、キョーコちゃんはもっと普通に可愛いものでも喜ぶし。きっとあれだ、許容範囲が広いっていう)
 それは俗に雑食と言うのではあるまいか。自分で疑い自分でフォローする少年は気付いていないが、彼にとっては過去のどの時よりも愛を試された瞬間だったかもしれない。
 「まあ、どっちにしても…ご機嫌が直ったなら何よりだけど」
 にこにこ全開のキョーコに、彼は優しく微笑みかけた。
 「え、ご機嫌って…別に」
 少女は赤くなり、彼を見上げたと思ったらぱっと視線を落とす。
 「俺を避けてただろう?俺、何かしたかな」
 「ちが…!」
 少年は穏やかに尋ねるが、無意識なのだろう、傷ついた気持ちがわずかに透けてしまう。キョーコが慌ててかぶりを振り、彼に手を伸ばしかけて止める。
 「キョーコちゃん?」
 その小さな手を取り、クオンは彼女の顔を覗き込むように首を傾げた。
 「何かあるなら、言って。遠慮とガマンはなし」
 「え…と、でも…私が、勝手に気にしてるだけで」
 「何を?」
 「だ、だって。クオンが」
 少女は手を振りほどこうと肩を揺する。しかしクオンはそれを許さず、碧い瞳に懸念の色を濃くして彼女を見つめた。
 「俺が、なに」
 「う…だから。クオンが、綺麗だからっ…!!」
 「…は?」
 間の抜けた声が彼の唇から転げ出る。キョーコは力の抜けた手からやっと自分の手を取り戻し、半歩後ろに下がった。
 「アメリカでも、そうだったけどっ。い、いつも目立ってて、人の注目集めてて。私、不釣合いで」
 「キョーコちゃん、まだそんなこと…!」
 そんな話は前にもした。彼から距離を取ろうとするから、理由を聞いて。どうしてそんなことを今更蒸し返すのかと眉を顰めるクオンを、少女はいかにも面目なさげに見上げる。
 「ご、ごめんなさい。私が日本について来てってお願いしたのに。でもなんだか…当たり前なんだけど、周り中日本語で。なんて言うか、言葉がすごくダイレクトに感じられて…」
 「キョーコちゃん」
 クオンはそっと少女の名前を呼んだ。何を言われたのか知りたいが、言わせたくない。ジレンマを押し遣り、彼はしなやかな黒髪を撫でる。
 「他の人の言うことなんかより、君の気持ちを大事にして。君は、俺の近くなんかにいたくない?」
 「!そんな、そんなわけない!!」
 キョーコはそれこそ大慌てで首を振る。ぶんぶんと巻き起こる風に苦笑しつつ、少年は少し身を屈めた。
 「ありがとう…俺も、隣にいるのは君がいい」
 それから、少し頼りないアクセントの日本語で、
 「だいすきだよ」
 言ってみると、少女が見る見る真っ赤になった。




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 やってろ。

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