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パクス・ツルガーナ(73)~(78)

 拍手お礼にて連載しているパラレル話です。
 敏腕なのに担当タレントにモテ過ぎたり自信を失わせたりするのが問題というマネージャー敦賀蓮の手腕によって、ちょっと変わった性格で扱いづらいとされるタレント京子がのし上がっていく(?)物語。最後は…?


パクス・ツルガーナ

(73)
 「先にお話した通りの生い立ちですから」
 京子はなにか諦めたような吐息を洩らし、それに乗せて言葉を発する。彼女が何を思っているのか蓮は知らないが、こんな少女がそんな溜め息をつくことに戸惑いを禁じ得ずに奥歯を噛んだ。
 「私はずっと一人ぼっちで、できるだけひとの邪魔にならないように、いい子にしようって思いながら生きて来ました。男なんかに頼っちゃだめ、自分の力で生きていくのよ、そう母に言い聞かされて」
 「……いや…」
 君の父のような男ばかりじゃない、とは言いたいが言いにくい。空しく口を閉じる蓮に、彼女はわかっていると言いたげに微笑んだ。
 「でも、成長するにつれて周囲が見えてくると、やっぱりうちは特殊なんだってわかって来ますよね。そうして私は、あー、恋、をしまして。相手は笑っちゃうくらい手近な、バイト先の息子さんという始末でした」
 「旅館の…?」
 「ええ、まあ。でも振られました。髪振り乱して働いてる地味で色気もない女なんかは、願い下げだそうです。少しはテレビに出てるような綺麗な人たちを見習って、垢抜けたらどうだって言われました」
 「なんて」
 言い草だ、という蓮の言葉を遮って、ケトルがぽぴーと音を上げた。


(74)
 「ああ、お湯が沸きましたね。ちょっと失礼します」
 京子が平静に言って立ち上がるが、蓮はテーブルについた手がかすかに震えているのを見て取った。淡々と話すようでも、彼女にしてみれば複雑なのだろう。あるいは、それでさっさと話してしまえと敢えて先に切り出したのかもしれない。
 強い娘だ、と思った。自分の傷を他人になすりつけたりはしない。
 そして同時に、彼女がLMEに入った理由の一端を見た気もする。本来の京子なら、おそらく芸能界の扉を叩こうなどとは思いつきもしなかったのではないか。
 ポットに湯を移している京子の背をちらりと振り返り、蓮は苦い思いで息をつく。
 もし彼女が。


(75)
 「君は、君を振った男を見返したいと思って、この世界に入ったのか?」
 ポットを抱えて戻って来た京子に、彼は正面から尋ねた。タレントが一瞬目を伏せる。
 「そう、ですね…否定できません。そういう気持ちを持って、入所試験に来たと思います」
 「そうか…」
 蓮はテーブルの下で、膝に置いた拳を握った。彼女がそんな風に、負の感情から芸能活動を行おうと言うのなら、ラブミー部などに放り込まれるのも無理はない。それに。
 彼はゆるく息を吐き、抑えた静けさのうちに口を開いた。
 「車の中で、一旦身を寄せた世界において努力邁進する決意にいささかの揺るぎもないと君は言ったね」


(76)
 「申しました」 
 京子は手際よく茶を淹れながら明快に頷く。そのマネージャーは複雑そうに頷き返し、ひとつ呼吸を飲み下した。
 「だけど俺としては、そんな風にマイナスの動機からこの世界での活動を志すというのは…率直に言って、不快に思う。君たちは、人々に夢を見せる存在であるべきなんだ。悪夢でなく」
 「社長さんにも、そんなお話を伺いました」
 タレントはそっと微笑むが、その瞳には諦めに似た色がちらつく。
 「だから私は、お願いしたんです。私に更生の機会を下さい、って」
 「更生…」


(77)
 しなやかな動作で差し出された湯飲みを受け取り、蓮は納得の態で呟いた。なるほど、ローリィ宝田の好きそうなシチュエーションだ。そもそも、ラブミー部設立の目的にも適っている。
 「今はまだ、難しいです…人を愛するとか、愛されるとかについて考えることは。でも、やってみようって思ったんです。まずは、自分を作るところから」
 京子は、そこから温もりを吸収しようとするかのように両手で自分の湯飲みを包んだ。
 「状況に流されるばかりでなく、人の言葉に惑わされてばかりなく、私が私として生きて行くために。きっかけはともかく、縁あって入った世界で頑張ってみようって。
 「…敦賀さんは、そんなのは駄目だって思いますか?」


(78)
 「あ…」
 きっかけはともかく、縁あって入った世界。京子の言葉は、彼にも思いあたるところがあった。彼女は彼女なりに決意を持ってここにいるのだと思い起こし、蓮はゆるくかぶりを振る。
 「…いや…」
 今はまだ、芸能活動は彼女にとって手段であるかもしれない。よかろう、ではそれを目的に一致させるよう導くのも自分の仕事ということだ。崖っぷちのマネージャーは、この難題に敢えて挑む覚悟をした。
 「わかった…君は君の夢を求めるといい。俺はそれに協力するし…いずれは、君の目をもっと開かせるように力を尽くそう。どの道、そうするしか俺には選択肢がないわけだしね?」
 ちょろりとつけ加えれば、担当タレントが肩を縮める。
 「お手柔らかに…」
 「君こそ」
 マネージャーがふと笑う。
 そして共闘は、真の意味で成立した。



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 拍手での連載はここまでにして、第2部からはブログでの通常連載に移行します。ちまちま書いてると抑制が効かないみたいなのですよ;

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