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たいせつでたいせつで(122)

 「クオン、こっ、これ」
 自分の部屋に駆け込んで来たキョーコを迎え、翌日の予定を確かめていたクオンは何事かと立ち上がる。
 少女は白い布の塊を抱え、大いに慌てつつ頬を上気させていた。
 「どうしたの、キョーコちゃん」
 「あのね、あの、お部屋に執事さん?が来て、お夕食の時にはこれを着て下さいって」
 びらりと開いたドレスを見て、少年はちょっと目を瞠った。白を基調に薔薇色のコサージュと黒いベルベットのテープに彩られたそれは、清楚で可憐でいかにもキョーコに似つかわしい。彼の所にも衣装が届けられているから予想はしていたけれど、ちゃんと彼女に似合うものが用意されたようだ。
 ローリィ宝田、派手好きなだけではないらしいとクオンは少しの安堵と共に思ったが、それを本人に言うつもりはかけらも持たなかった。
 「うん、君にとてもよく似合いそうだ。早く着たところを見たいな」
 「えっ?えっと…
 「そうじゃなくて!こ、こんなの着るほどちゃんとしたお食事になるの!?私、マナーとか大丈夫かな…」
 などと心配しつつも、よほど気に入ったのかキョーコの目はドレスに吸いつけられている。クオンはそれを贈ったのが自分でないことを残念に思った。
 しかしともかく、少女の心配を先に取り除かねばなるまい。彼はドアの外に立ったままのキョーコを招き入れながら微笑んで見せる。
 「そんなの心配要らないよ。この家の人はそんな厳格ってわけじゃないし、第一、キョーコちゃんはすごく綺麗に食べるじゃないか」
 「そ、そう…?それなら、いいけど」
 と言いつつ少女はふうと嘆息する。
 「そんなに心配しなくても大丈夫だよ」
 クオンはもう一言添えたが、キョーコはそれにかぶりを振って応えた。
 「あ、違うの。やっぱりクオンだと、ここのお屋敷をさらっと家って言っちゃうわよねって思って。ヒズリ家だっておっきいものねえ…」
 庶民少女はやけに大人びた仕草で首を左右に揺らす。クオンはどう答えたものか迷ったが、自分と区別をつけているようなキョーコの発言はなおざりにできない気がした。
 「そんなこと…うちは、君の家でもあるのに」
 それは彼ら一家の望みでもある。心をこめて言う彼に、少女は一瞬目を丸くしたあと嬉しそうに笑った。
 「ありがとう、クオン。私ね、クーパパもジュリママも大好き。だから、そんな風に言ってもらって嬉しい」
 はにかむような笑顔に、少年はやっとのことで『俺は?』の言葉を飲み込む。何となれば、すこし開けたままのドアの向こうに、ブラブラ歩いて来るデニス・マカナンの姿が見えたのだ。
 テキも彼らに気付き、せかせかと足を速めてやって来た。
 「よう、お二人さん。夕メシもうすぐだってよ、着替えなくていいのか?」
 もともと開いているとは言えノックもなしにドアをひょいと開ける映画監督は、一応ディナージャケットに身を包んでいる。ただし、こちらはなにか微妙にヨレているように見えるのは彼の突き出た腹のせいなのだろうか?
 「何かあるとイカンと思って、ちゃんとした服持って来てよかったな」
 彼の視線に気付いたのかマカナンが笑う。すると、彼は自前の服を着ているらしい。
 「ボスから服が届けられませんでしたか?」
 「ああ、なんかスゲエ高そうなの来たけどな。あんなん着たら、背中に定規入ってる気になりそうなんで断った」
 「はあ」
 そう言えば、マカナンはパーティの類にもいつもあまりぴしりとした格好はしていない。まあそれも彼の個性というものだろう。
 「あの、じゃあ私、着替えて来ます」
 キョーコがドレスを抱え直し、ぴょこりと頭を下げる。
 「あ、うん」
 「おー、可愛くして来いよ」
 「え、えっと…頑張ります…」
 少女が出て行くとクオンは自分もと部屋の奥に向かうが、数歩でふと振り返った。
 「そう言えば、監督」
 またブラブラ出て行こうとしていたマカナンの背に呼びかける。
 「あん?」
 「ボスに、通訳と案内に人をつけるって言われましたけど…どんな人か聞いてますか?」
 「あー、何でも学生らしいぞ。LMEでバイトしてるのが、将来性に期待大だってんで目をかけてるとか。アオタガリってやつか?それくらいだな。ま、どっちみちもうすぐ会えるんだろ?」
 「はあ」
 して見ると、マカナンも大したことは聞いていないようだ。じゃああとでなと手を振るのへ頷き、クオンは今度こそクロゼットに向かった。
 






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 そろそろ誰が出てくるのか皆様にもおわかりかもですねい(笑)。


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