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ぽろり。

 「おーい、れーん?」
 ひらひらと目の前で振られた手に、某トップ俳優はたいへんにこやかに振り返った。たった今まで視線を向けていた方向へ、意識と耳だけは向けたまま。
 「なんでしょう、新開監督」
 「あーいや、お前さあ」
 休憩中の映画監督は、紙コップのコーヒーを啜りながら呑気くさい、あるいは白々しい声を出した。
 「ちょっと、バレバレすぎない?」
 一瞬、ほんの一瞬だけ蓮が止まる。ごくごくわずかな間を縫うように、彼は綺羅綺羅しく微笑んだ。
 「何がですか?お話の意図がつかめませんが」
 「ふうん…」
 しかし、すっとぼけることではこの映画監督、俳優にもおさおさ劣るものではない。
 「お前がそう言うんなら、そうかもな~」
 相変わらずのんびり言って、飲み終わった紙コップをくしゃりとつぶした。通りかかったAD君がすかさず手を出してゴミを受け取って行く。
 「ああ、ありがとう。
 「ところでさ、蓮」
 「はい」
 蓮の声にはいくぶんか用心が含まれている。それに気がついていないはずはないが、映画監督はまったく語調も表情も変えずに話を続けた。
 「俺、いま撮ってるやつの次は、ちょっと新ジャンルに挑戦してみようかと思ってんだよね~」
 「はあ」
 なぜ語尾を伸ばすのかと聞きたいが聞きたくない。これは何か腹に含む時の新開の癖だと蓮は知っていた。
 そこへ、
 「きゃっ」
 小さな悲鳴が、さきほど彼の見ていた方向で上がった。
 「!」
 蓮はさっと視線を振り向ける。その先には、話していた共演者と別れて歩き出したキョーコが何かに躓いた様子でバランスを崩す姿。浮かしかけた彼の尻の下で、パイプ椅子がかたりと鳴った。しかし、駆け出す前に悲鳴の主が彼を見ながら大丈夫というジェスチャーをする。
 小さく息をつき、蓮は不承不承座り直した。靴先が幾度も地面を叩くのは無意識の所為であるらしい。
 「そんなに心配なら、さっさと行けばいいだろうに」
 新開が面白そうに言う。
 「大事にしてるな~」
 「それは…可愛い後輩ですから。いけませんか」
 「いけなかあないけどさあ。白々しいんだよな~」
 だから語尾を伸ばすなと言うのに。蓮は辟易の視線を流したが、当のご本人は勿論平気な顔をしている。
 「何がですか」
 仕方なく尋ねる彼に、タレ目の映画監督はますます目尻を下げてくるくる指を振った。
 「だ~って俺、何を大事にしてるとか言ってないし~」
 「っ!
 「それは、でも、現にいま最上さんが転びそうになってましたから、タイミングで」
 「あー、なるほどねえ。じゃあお前は、あくまで彼女はただの後輩って言い張るわけだ」
 ニヤニヤ笑いの新開に、蓮はにっこりとしかし低く言う。
 「かわいい後輩、です」
 「あっそー。じゃあ、そのかわいい後輩ちゃんの映画出演を邪魔しようなんて気は、起こさないよなあ?」
 「当然じゃないですか。さっき言ってた、新ジャンルの映画ですか?それに最上さんを?」
 新開に役者として望まれることは、きっとキョーコのためになる。喜びの色を見せる俳優に、映画監督はにこたら答えた。
 「うん、芸能界を題材に取った恋愛劇でさ。新人アイドルの夢と挫折と再生、かな。以前にキョーコちゃんのど根性見た時から、漠然と考えてたんだよ」
 「それは…意外ですね。新開監督が恋愛劇ですか」
 これはもしや、キョーコに主演をという話だろうか。それは実現すれば、確実に彼女のキャリアになる。期待を押し隠し、蓮は穏やかな驚きを表明して見せた。
 「ま、その辺は色々味付けするかもしれないけど。やっぱ最初はあのシーンかな~」
 「はい?」
 またしても語尾が伸びるので、蓮は今度はスタッフに囲まれて談笑しているキョーコを横目にすこし眉根を寄せる。それへ新開はにこにこ続けた。
 「ま、かわいい後輩ちゃんだからちょっとは気になるかもしれないけど、それだけなら別に口出す権利ないわけだし、構わないよな」
 「何がです…」
 彼は聞かなければよかったのかもしれない。けれど引っ張り出されるように言葉が出て来てしまい、するとそれに答えが返されることになった。
 「あれだほら、芸能人水泳大会。ポロリもあるよ!みたいな」
 「絶対許しません」
 即答0.015秒。ぽろり言い切ってからしまったと口を押さえるトップ俳優に、新開はに~た~り~と笑う。
 「へええ?ただの先輩にしちゃあ…」
 どうやらキョーコ絡みで遊ばれる人間が増えたらしい。蓮は斜めに天を仰ぎ、ふかくふかく嘆息するのだった。





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 ちゅーわけであっちー様のリクエストは「蓮キョでまだお付き合いが秘密の時。気付いた新開監督におちょくられる蓮。撮影の合間にさり気なく会話が始まり、おちょくられながら最後にはポロリと白状させられてしまう」というものでした~。
 


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