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たいせつでたいせつで(123)

 「クオン、かっこいい…」
 「え」
 食堂へ向かうためにキョーコを迎えに行った少年は、愛しい少女のドレス姿に見とれているスキに先を越されてしまった。
 目の前で気泡が弾けたような顔をして、彼は慌てた声を出す。
 「キョーコちゃんこそ、すごく可愛いよ。俺、いま見とれてた」
 「な」
 少女が瞬時に真っ赤になった。
 「やだもう、クオンは口が上手いんだから…」
 「じゃあ、君もいまのはお世辞?」
 いささか気分を害した風に問えば、今度はキョーコが慌て始める。
 「ち、違うもの!クオンはほんとにかっこいいんだからっ」
 「じゃあ君だって、ほんとに可愛いよ」
 「だからっ…」
 「ナニやってんだお前ら」
 100%呆れた声はマカナンのものだった。傍らには案内役だろう、宝田邸の使用人がついている。
 「くすぐったいことしてねえで、とっととメシ行くぞ」
 およそ世間の声を代表するようなことを言い、映画監督はさっさと歩き出した。少年少女が赤い顔を見合わせてからあとに続く。
 三人は、屋敷の規模から言ってやや小ぢんまりした食堂に案内された。二辺の窓が内庭に面し、大きな円卓が置かれ、プライベートな客人を招くのにふさわしく見える部屋だ。
 主はまだ来ていないが席に着くと、じきに廊下からほしょほしょと話声が聞こえて来た。
 「あの、ほんとにこれで食事するんですか」
 「おう、無論だ。大事なゲストだからな。盛装してもてなさにゃ」
 狼狽を固めたような声と、いつも通り悠揚迫らぬ芸能事務所社長の声。
 前者がおそらく、紹介されるはずの“通訳兼案内役の学生”なのだろう。クオンは彼らの様子に見当をつけ、心から学生を気の毒に思った。
 そこへ、両開きのドアが大きく開かれる。
 「宝田邸の晩餐へようこそ!」
 高らかに晴れやかに言い放ったローリィが、諸手を拡げて登場した。
 のはいいのだが、今度は中世フランス宮廷風の衣装。大きくカールさせたかつらを着け、靴にあしらったリボンまで華やかに、彼は室内に歩み入って来る。
 「いちんちに何度着替えるんだ…?」
 マカナンが呻いたが、クオンは問題がそこなのか判然としなかった。キョーコを見れば、彼女は驚きで声も出ないのか目を瞠ったまま固まっている。と思いきや。
 「国王様…っ」
 呟く声に、うっとりとした響き。クオンは心の底から狼狽した。
 「キョキョキョ、キョーコちゃん!?」
 そう言えば、彼女は。お姫様とか王子様とか王様とか、そんなものに弱いのだった。以前の誕生日には、自分からしてシンデレラの絵本など贈ったではないか。
 最近の生活でそのあたりに触れる機会がなかったために忘れかけていたが、さきほどの天蓋つきベッドといい今のローリィの衣装と言い、実は彼女の感性には…
 クオンがぶるると首を振るまでにほんの2秒。キョーコへの気持ちは変わらないと誓ったところで、ローリィ宝田が半分背後を振り返った。
 「お待たせして申し訳ない、ちと彼の準備に手間取ってな」
 そこには、王侯の衣装のローリィに対し侍従設定らしい服装の青年が立っている。気の毒にも恥を捨てきれないタイプらしく、整った顔立ちは真っ赤に染まっていた。
 王様は、主にマカナンに視線を向けてにこやかに言う。
 「こちらは社君。うちの社にバイトに来てもらっている学生のひとりなんだが、申し上げた通りなかなか気の利く青年でしてな。通訳と案内としてお連れいただきたい」
 「社です。よろしく、お願いします…」
 紹介されて、青年は眼鏡を抑えながらへこりと頭を下げた。できることなら今すぐ逃げ去りたいくらいなのだろう、視線がなかなか上がらない。
 しかし名物社長も映画監督も委細は気にしなかった。
 「おう、そんじゃお言葉に甘えっかな。ガキどもとずっと一緒じゃ、入れねえとこもあるしよう」
 どこへ行く気だデニス・マカナン。クオンは心中でツッコむが、ここは敢えて目を瞑ることにした。彼に映画監督を押し付けられれば、その分キョーコとゆっくりできるかもしれない。
 「よろしくお願いします、社さん」
 頭を下げれば、キョーコが急いであとに続く。
 ローリィは満足げに頷き、連れに着席を促した。
 「さあ、君も座りたまえ社君。始めるとしよう」
 

 

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ゴメンやっしー。


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