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たいせつでたいせつで(125)

 「クオンはご用が済んだかしら」
 朝食後、別行動となった連れとの待ち合わせ場所に急ぎながら、キョーコは小さく呟いた。
 「じきに約束の時間だから、済んでるんじゃないかな?もう来てるかも」
 後に続く社は、少女の歩調に合わせてゆったり歩いている。もっとも、始終あちこちキョロキョロと落ち着かない某映画監督から目が離せないせいでもあるかもしれない。
 「あ、あれですよね」
 やがてキョーコは約束の目印を発見して瞳を輝かせた。
 「私、本物のハチ公見るのはじめてです。テレビでしか見たことなくて」
 待ち合わせのメッカとなる忠犬の像を本物、と呼ぶべきなのかどうか。眼鏡の青年はそっと苦笑して頷く。
 「そう。キョーコちゃんは、京都出身なんだよね」
 「はい。京都の観光なら、少し詳しいですよ!ほんとに行った所ばかりじゃありませんけど…」
 社は、子供の事情を聞いているわけではない。親に顧られず預けられた先の老舗旅館で小さな仲居として立ち働き、客へ説明する要から一通りの観光案内を記憶しているなどとは思いもよらないことだ。不思議そうな顔をする青年の質問よりも先に、少女が足を止めて周囲を見回した。
 その視線を辿り、太鼓腹をふうふう抱えたマカナンがぼやき出す。
 「なんだ、坊主まだ来てねえじゃんか。嬢ちゃんとの約束に遅れるとはふてえ奴だな。愛が足りないぞって言ってやれ」
 「あ、愛って…そんな。まだ約束の時間じゃありませんし、ご用が長引いてるのかも…
 「あ」
 「お」
 二人の旅行者が、同時に同じ位置で視線を止めた。つられて社もそちらを見る。
 円形の植え込みの周囲にしつらえられたベンチに、黒髪の青年が座っていた。周り中の熱視線と囁きを独占しつつ、超然と目を伏せて。
 日本人離れした長身の上に手足の長さは奇跡のようなバランスを保ち、鍛えられたしなやかな輪郭、更に男性にして美貌とさえ呼びたいような整った造作と相俟って、彼はひどく人目を引く。
 「綺麗な人…」
 呆けたような少女の呟きもむべなるかな、美形の男女を見慣れているはずの映画監督さえ食い入るように見入っている。
 「悪かねえな」
 にやりと呟くのは、スカウトでも企むのか。足を踏み出すマカナンの注視に気付いたのか、青年がふと瞳を上げた。強い視線が、まっすぐに3人に向く。
 途端、キョーコが叫んだ。
 「クオン!?」
 「え」
 「へ」
 社とマカナンが間抜けた声を上げる。
 「おい嬢ちゃん、けどあれ、ニポン人じゃねえのか」
 「そう見えますけど…」
 俄かに信じがたい大人たちを置き去りに、少女は青年へと駆け寄って行く。それを迎えるように両手を拡げ、黒髪の青年は快活に言った。
 「やあキョーコちゃん、時間通りだね」
 「やっぱりクオン!ねえ、どうしたのそれ。髪、染めたの?ご用ってそれ?」
 キョーコはかじりつくように質問を浴びせる。クオン(らしき人物)が、まあ落ち着いてと苦笑した。
 「え、あ…うん。ご、ごめんなさい」
 「謝ることなんてないよ?でも、そうだね…」
 「え?あれ?クオン、目も黒…って言うか、日本語…」
 少女の目がぐるぐるになった。何から何まで、と容量を超えてしまったらしい。
 青年は優しくその頬を撫でる。周囲から上がる黄色い悲鳴を気に留める様子もなく、彼はにこりと微笑んだ。
 「うん。今は俺のこと、蓮って呼んでくれるかな?」





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