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FIRST LOVE

 TVは「なつかしのCM特集」などという番組を流している。
 過去のさまざまなCF映像が次々と画面に映し出されて行くが、その何番目かの冒頭部分に接して部屋の主と客とは同時に顔を見合わせた。
 「なつかしいね」
 クオンが言えば、
 「うん…」
 キョーコも頬を染めてふんわり頷く。
 それは彼ら二人をメインに据え、とんでもなく豪華な脇を配して撮影された日本車のCFだった。
 和柄ペイントの“FIRST LOVE”。このかわいらしい車はもともと若年層を狙ったコンパクトカーだったのだが、その戦略に基づいて製作されたCMが話題となって大きく購買層を拡げた。紹介されているのは、完全版と称されたWEB用300秒バージョンだ。
 少年と少女が出会い、惹かれ合い、再会し、恋をする。女性はラストで少女の頬に手を添える少年の、男性は少年の瞳を見上げる少女の青い慄きに心を奪われたと言う。
 その、主人公たちが。
 いま関係性と互いへの反応を変化させ、瞳の熱情はそのままに見詰め合っているのだった。
 「ねえキョーコ」
 少女の額に唇を当てる少年の日の自分に当てられたように、クオンはそっと恋人の名を呼ぶ。とろりと甘い声、極上の微笑。シンプルモダンにまとめた自宅インテリアたちが憤死しそうな様子で、ソファの隣に座る婚約者の方へと身を乗り出した。
 「な、なに?クオン」
 TVを見ながら編み物をしていたキョーコは手を止めて詰められた距離を下がろうとするが、悲しいかな背後はソファの腕木に塞き止められていた。しかも、クオンの長い腕が伸びて来て彼女の脇からその腕木をつかむ。
 「俺たち、あと半月で結婚するんだよね?」
 声も表情も、口調も変わらない。けれど背後の空気を少しだけ薄暗くして、彼は7年余に及ぶ曲折の果てに漸く手に入れた少女と視線を合わせた。先月、彼女の誕生日にプロポーズして、どうにかOKをもらったばかりという状態で半月後に式というスケジュールが恐ろしいが、彼にとってはそれ以上に待てるものではないらしい。
 「えと」
 「違うの?」
 クオンの声のトーンと眉尻が僅かに下がった。金の髪の美青年俳優は、羞恥と狼狽を浮かべる婚約者の瞳を覗き込んで尋ねる。
 「俺と結婚するのが、嫌になった?」
 「まさか!そんなこと…」
 「ないよね」
 慌てて否定する仕草に、彼は満足そうに頷いた。笑顔は喉を鳴らす猫のようだ。
 「じゃあ、どうして俺から逃げようとするの」
 「だ、だって。クオン今、その…」
 「うん、キスしようとしたけど。婚約者にキスくらいしたって問題ないだろう?俺は色々ガマンして来たししてるんだから、少しくらいご褒美をもらってもいいと思うな」
 笑顔で、しかも不服そうに言うのでキョーコが目を白黒させる。
 「色々って」
 「聞きたい?」
 クオンは妖しく笑んでまるい頬をするりと撫でた。顔のパーツを2cmずつせり上げたキョーコが、素晴らしい高速で首を振る。
 「いいい要らないぜんぜん聞きたくない!!!」
 「うん、どうせじきに実地で体験するもんね?でも…それなら、口を塞いでもらわないと勝手に喋っちゃいそうだな、俺」
 「じっ…」
 にこにこと脅迫しつつ、俳優は絶句する少女の頬を引き寄せた。
 「え、クオン、ちょっと待っ…」
 相手の唇を封じ、言葉を吸い取ったのは彼の方だった。
 「ん…っ」
 時折洩れ聞こえる鼻にかかった吐息。キョーコの頬からも額からも髪をはね除け、クオンはそこら中にキスを浴びせかけ始めた。
 「クオン、ってば」
 身を捩るのを押さえつけ、更に幾度も。
 「愛してるよキョーコ、愛してる…」
 「クオンっ」
 ぺてち。
 鼻先に掌を当てられて、クオンはやっと止まった。
 「キョーコ…」
 不満交じりの苦笑をこぼし、婚約者を見下ろす。涙の浮かんだ目尻と乱れた着衣に気付き、その視線を自分の手に移して息を呑んだ。
 「あ…その、ごめん…つい、夢中になって」
 「クオンのばか。昔は、あんなにピュアだったのにっ」
 とキョーコがTV画面に目を流す。とうに別のCFが流されていたが、意味は充分に通じた。
 「ああ…いや、ええとね。んー…」
 クオンは何事か言いよどんでいる。振り返った少女に、彼は降参のポーズをした。
 「ごめん、白状する。俺は、あの頃からとっくにこういうこと考えてたんだよキョーコちゃん」
 「…え」
 「君に触れたくて触れたくて、でも君はまだ子供で、それこそ純粋で、しかも俺は君の気持ちを手に入れてなくて。どうしたらいいかわからなかっただけなんだ。ピュアなんかじゃないし、余裕だって全然なかった」
 「な、え、だ、だってそんな」
 キョーコは真っ赤な顔で、忙しくTVと彼とを見比べる。その頬をつかまえて瞳を合わせたクオンは、
 「あの時の俺は、今でもここにいるよ」
 小さな手を取って自分の胸に当てさせる。小さく身をふるわせる少女と同じ慄きを身内に感じながら、彼はゆっくりと唇を緩めた。
 「今でも、君に触れるだけでドキドキして仕方ない。俺がこんな気持ちになるのは、後にも先にも君だけだ」
 「え」
 そっとこぼされる、金色の微笑。
 「知らなかったの?俺の初恋は、君だよ」
 少女の大きな目が、もっと大きくなった。クオンはそこへ光を送り込むように視線を注いだ。
 「それを7年待ったんだ。だから、ね?」






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 まとまった途端にやりたい放題なのはクオ坊も蓮も同じな模様。まあ、同一人物ですしね。

 さて、こちらはao様のリクエスト作品になります。リク内容は「「たいせつ」設定で恋人同士のクオンとキョーコにがCFを振り返る(要約)」。
 ロザリオとかHOLY NIGHTとか読んでない方もおいでなので、これだけで読めるようにせねばと思って書きましたが…だいじょぶですかしら?


 もいっこ記事書くつもりでしたがもうめむくて駄目…
 なのでここで言います。通販、すべて発送しました。入金済みにも関わらず来週中に着かなかった方はご連絡下さいませ~。



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甘いです。甘甘です。でもよかったです。

はじめまして

初めてコメント申し上げます。二次創作サイトさまのリンク集からお邪魔しました。
だいっっすきなシリーズ(自分でも気持ち悪いくらい読み返してます。あの話数を二桁以上確実に)の、ふだんリクエストなんて搾り出さないと思い付かないのに、これだけは読みたいと思っていた成立後!興奮しました。粘着質なクオンの情念も身を結んでよかったです。クオンのいう、あのとき……本編で昏い執着を自覚した瞬間は1番好きな場面です。成立後ごちそうさまです!ありがとうございます!!
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