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WISH YOU

 「さーさーのーはーさーらさら…」
 ちょっとばかり調子の外れた歌声に振り返ると、慎一が局のロビーの隅に置かれた短冊飾りをいじっている。
 「あーそうか、今日は七夕やったな」
 「そやで。これ、短冊好きに書いてええて。ペンも置いてある」
 「へー。局の企画か」
 俺は納得して自販機に向き直り、逢いたい人の顔なんて思い浮かべながら金缶コーラのボタンを押した。
 (京子ちゃん、今頃どこで何してんやろ。忙しくなったり何だリできまぐれのレギュラー降りてから、なかなか会われへんなあ…そらまあ1年とか空くわけとちゃうけど、もうちょっと会えたらええのに。いっそ短冊書いたろか。あの子と逢えますように、て)
 なんて考えていた、その瞬間。
 「あ、京子ちゃんやん」
 雄生の声に、ぴっと耳が立つ。
 慎一と一緒になってそっちを見ると、まさにその個人的噂の的ちゃんが、エレベータホールに向かうのか廊下を進んで行くところだった。
 …けど…
 「あれ…?」
 思わず呟いてしまった俺を、今しも京子ちゃんに声をかけようとしていた慎一が振り返る。
 「なん、どしたんリーダー。変な顔して」
 「あ、や。なんかな、京子ちゃん顔色悪う見えへん?」
 言ってみると慎一も雄生も、曲がり角の向こうに消えようとする京子ちゃんの横顔に目を向け直した。
 「そうゆうたら、ちょっと…?もともと色が白いさかい、はっきりせえへんけど」
 「いつもよすぎるくらい姿勢がええのに、ちょい背中丸うなっとるようにも見えるな」
 「俺、ちょお行って来るわ!」
 心配になってしまって、買ったばかりのコーラを慎一に押し付けて走り出す。
 「あ、おいリーダー。時間気いつけてな」
 「わかっとる!」
 次の出演番組の収録時間までそんなに時間の余裕がない。時計を確かめながら答えて、京子ちゃんの消えた方向へと急いだ。彼女は頑張りやで責任感が強いから、体調が悪いのにムリしてるのかもしれない。
 「どっち行ったんやろ…」
 心配と時間に余裕がないのとで気が急く。キョロキョロ辺りを見回すと、右手に観音開きの大きなドアがあって、かすかに揺れてるのに気付いた。
 こっちは確か資材倉庫へ続いてるはず…京子ちゃんに用のある場所とも思えないけど、と思ったところで、本当に体調が悪くて静かな場所を探してる、なんて可能性に思い当たる。
 急いでドアを抜けて、小走りに先へ進んだ。物の影が多くて様子がつかみにくい。
 高く積み上げられたダンボールの角を曲がろうとしたところで、ちらりと明るい色の髪が見えた。
 いた、と足を速めようとして…俺は、もうひとつの人影に気がついた。足は勝手に止まって、俺は前に進めなくなる。
 彼女を包んでしまえそうな長身の、トップ俳優…
 なんで。なんで京子ちゃんが、敦賀君にあんな。あんないつも姿勢も礼儀も正しい子が、体預けるみたいにくたっと寄りかかって…
 なんで。
 「大丈夫…?」
 低い声が聞こえて来る。何やら聞いてる方が赤面しそうなくらい優しい口調だ。それに応えて、京子ちゃんがもぞりと身動きした。
 「あんまり大丈夫じゃありませんっ。もう、ゆうべ敦賀さんが無茶するから…」
 え。
 意味深な台詞に脳が止まる。敦賀君が苦笑する気配。
 「ごめんね。今日はどうしても君に会いたかったんだ…だけど日付が変わる前に帰れそうになくて、せめて朝には一緒にいたいなと思って」
 「前の晩から朝まで離してくれない理由にはなりませんっ。大体、ムリしなくたって私たちは年に1回しか会えないわけじゃありませんのに」
 「俺にしてみたら、君に会えない1日は1年より長く思えるけど」
 ちょっと…
 ちょっと待て。何だこれ。この会話。バカップル丸出しの…
 って。
 カッ、プル…って……そう、なのか!?京子ちゃんと敦賀君が!?いつの間に。
 「もう、敦賀さんは…それじゃあっと言う間におじいさんになっちゃいますよ」
 かわいらしく拗ねるみたいな京子ちゃんの声。あんなの、聞いたことない。
 本当、なんだ。ってどっすり納得が落ちて来る。
 「そしたら、君が介護してくれる?」
 「…仕方ないですねえ…敦賀さんは生活能力が足りませんから、私が面倒見てあげます」
 「それはどうもありがとう」
 うう…いたたまれない。
 くすくす笑い合う声に背中を向けて、俺は来た道を戻り始めた。
 そっか。
 そっか……
 京子ちゃん、文句言いながら顔がすごい優しかった。ほんとに敦賀君のこと好きなんだ。それに敦賀君も、口とは違って全身で京子ちゃんを守ってる感じで。
 そんなら、しょうがないよな。
 もとの自販機スペースまで戻って、俺は短冊とペンを取り上げた。

 あの子が幸せでありますように。

 せめて、俺の願いが君と共にあればいいと思った。





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 蓮はきっと光君に気付いてた(笑)。

 こちらはせいたん様のリク「光君視点の成立後ラブラブ話、光君がっかり(要約)。」によりまして!ちょうど七夕なので、それも絡めてみました。お気に召せばいいなあと短冊書きそうです(笑)。


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ありがとうございます

七夕にからめていただいてとっても素敵なお話に仕上げていただいて、ありがとうございます。
とっても楽しめました。
今日は七夕でお菓子を配布しました。(某TV番組県民SHOWでのとある回を見ていたら、住んでいるところがわかってしまう?)
今年の七夕は満喫させえいただきました。
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