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ROMANCIA 2

 「…?」
 うすく目を開いた娘は、いくつかの疑問のこもった吐息を零した。
 場所、時、理由、何よりも、自分を覗き込んでいる人物が誰であるのか。男だ。かなりの長身。黒い髪、黒い瞳、端整な、顔立ち。見覚えはない。が敵意も感じない。
 むしろ…
 つかもうとしたイメージが手をすり抜けるのを感じながら、彼女はそろそろと起き上がる。
 「ここは……貴方は…?」
 いくつか瞬きすると、瞳だけで周囲の様子を探った。これまた見覚えのない室内、見覚えのない寝台に自分は寝かされていたようだ。鼻先を乾燥した草の香りがかすめ、そちらに目をやると薬草らしき束が壁際に吊り下げられていた。
 「俺は、…レン。
 「ここは君が無謀にも1人で踏み込んだ森の奥の、俺の庵だ。君は少し行った泉の近くで倒れてた」
 どこか戸惑いを含んだ風の、しかし優しい声が答える。その内容に記憶を刺激され、彼女は無意識に胸元に手を添えた。それへレンと名乗った男が、薬臭い茶の入ったカップを手渡す。
 「あ、ありがとうございます。助けて戴いたんですね。あの、私はキョーコといいます。このお礼は必ず…」
 「別に…気紛れを起こしただけだ、お礼なんて要らないよ」
 今度は、男の口調は少し素っ気無い。一瞬考えるような目をして、彼は娘の瞳を捉えた。
 「だけど君は、どうしてこんな人も住まぬ森に?」
 「え」
 「街で聞かなかったのかい、ここは魔の森と呼ばれてるって。恐ろしい化物が住んでるってね…それとも、それを承知の上で魔道の追求のために来た?」
 なぜだろうか、その口調に期待を感じて娘はまじまじと男の顔を見返す。
 「あの、私は…」
 指先はまだ胸元に添えられている。そこに何か探すように。
 「ここには、竜が棲んでるって聞いて。だから…貴方みたいな人が住んでるとは思いませんでしたけど」
 レンは何も言わず、するりと椅子を立った。
 「“魔竜の森”…そうだね、初めのころはそんな風にも呼ばれてた」
 「…?」
 まだ若い男のひどく年古りたような口調に、キョーコは小さく首を傾げる。
 「竜に、会いたかったの?」
 彼女を見下ろし、レンは静かに尋ねた。
 「何のために」
 しかしそこにはやはり期待が…渇望があり、娘の心を騒がせた。
 「わ、かりません…ただ、会いたいんです。子供の頃から、ずっと…憧れてるんだと思います。だから魔道士にもなって」
 軽くかぶりを振り、彼女は手の中でちゃぷんと音を立てる薬茶の波紋に見入る。
 「…貴方こそ」
 言葉が勝手に転がり出て、大きな瞳はもっと大きく見開かれた。確かに、こんな美貌と呼ぶべき青年が深い森の奥に1人住まいしている理由は気になる。しかしいつもの自分なら、助けてもらった身で差し出がましいと質問を飲み込んだのではないか。
 いずれにせよ、言ってしまったものはもう戻せない。ままよと彼女は言葉を継いだ。
 「貴方は、どうしてこんな寂しいところに、お1人で…?」
 「ああ…」
 男は頷くでもなく拒むでもなく曖昧に鼻を鳴らす。その視線がまた自分に戻るのを感じて顔を上げるキョーコに、彼は、どこか痛むような瞳で言った。
 「人を、待ってるんだ」




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 もとが3部から成る相当長い話なので、途中をざっくり端折る必要がありますね~。あまり長すぎないようにまとめたいです。


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