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たいせつでたいせつで(128)

 「…?」
 夜半にふと目を覚まし、蓮はそのままじっと耳を澄ました。声が聞こえた気がしたのだ。隣の部屋から。
 数秒も待つうちに、彼は果たして今一度すすり泣くようなかすかな声を聞いた。
 「キョーコちゃん?」
 気遣わしげに呟くとさっと起き上がり、ベッドサイドのスタンドを点けて部屋着を取る。それを身につけながら時計を見遣れば、午前2時になろうかという時刻だった。
 女の子の部屋を訪ねる時間じゃない、という常識は彼にもある。しかし心配が勝ち、足早にドアへと向かった。
 廊下に出て一部屋分を移動し、そっとドアを叩く。
 「キョーコちゃん」
 返事はない。どうするか迷いながらドアノブに手をかけると、手の中であっさり回るので却って驚いた。更に迷うが、またしても少女の小さな声を聞いて釣り込まれるように室内へ入っていた。
 蓮は何がなしうしろめたい気分で、キョーコがいるはずのベッドに近付く。
 少女の姿はうすい紗幕の向こうに隠されているが、目を覚ましている気配はない。うなされているなら、一度起こすべきだろうか?
 思案の果てに、彼はベッド脇のスタンドを点けて遠慮しいしい声をかけてみた。
 「キョーコちゃん。…大丈夫?」
 「……なさ…」
 返事の代わりに聞こえて来た声には、聞き覚えがあった。アメリカでの再々会の直後。施設から連れ帰ったキョーコと同じベッドで眠っていた時にもやはり、彼女はそうしてうなされていたのだ。
 まさか、また彼女の心を損なった義父の夢など見ているのか、と彼は愕然と思う。何を思う暇もなく、うす布を分けて少女のベッドに膝で乗り上げていた。
 「キョーコちゃん」
 「っ…ご、ごめんなさいっ…」
 キョーコは謝罪の言葉を口にしている。あの夜と同じように。日本へ来ることになった目的のせいで、過去の経験が夢に蘇って来たものか。
 「そんな…」
 蓮の歯がぎりと鳴る。やめてくれ、と思った。もうそんなものに囚われないでいて欲しい。
 「キョ…」
 「ごめんなさい、ごめんなさい…いい子にします、お勉強も頑張るから…だから」
 揺り起こそうとした手が、途中で止まった。少し、以前とは様子が違うような気がする。
 「行かないで、おかあさん…っ。ひとりにしないで」
 「…!」
 キョーコはぐすぐすと鼻をすする。彼には、その様子さえ覚えがあった。しかしそれは米国での件でなく、もっと幼い頃…初めて日本で出会った頃の記憶として。
 昼間、キョーコはタクシーの中でマカナンに親孝行だと褒められて表情を固くしていた。ひたすら冷えた関係に終始した母の記憶が、真の訣別の前に過去から蘇って彼女を苛んでいるのか。
 「キョーコちゃん…っ」
 たまらず、蓮は…クオンは手を伸ばしていた。少女を掻き寄せ抱きしめる。
 「君は、ひとりなんかじゃないのに…!」





 
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 さて、ちょっくらまたシリアスパートに入って行きますので、お覚悟よろしゅうに。


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