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たいせつでたいせつで(129)

 「…?」
 腕の中から、小さな声がもぐもぐ洩れて来る。クオンがすこし拘束を緩めると、目を覚ました少女の大きな瞳が戸惑うように揺れている。
 「大丈夫?キョーコちゃん。勝手に部屋に入ってごめんね…うなされてたから、心配で」
 「あの、えと…あ、クオ…じゃなくて、蓮さん」
 ほっとした口調に、彼はふと疑念を覚えた。
 「もしかして、すぐ俺だってわからなかった…?」
 知らないひとみたいなどと恋しい少女に言われた昼間の衝撃を思い起こし、声が恨みがましく低くなる。
 「ご、ごめんなさい。だって…クオンは王子様みたいな金髪で、碧い瞳で…」
 「コンタクト外してるから、今は瞳の色は元のままだよ」
 「くらくてわかんない…」
 それはそうだ、と息をつき、クオンは自分の髪を少し引っ張ってみた。と、その部分に天啓が降りる。
 「って、キョーコちゃん!俺が誰かすぐわからなかったなら、どうして夜中に自分の部屋にいる男をもっと警戒しないの!?」
 結果から言えば自分はそれで夜這いだの変態だのと呼ばれずに済んだわけだが、彼は少女の危なっかしさに悲鳴に近い声を上げた。面食らったキョーコがぱちぱち瞬きする。
 「えっ、だって、ここは宝田さんのお邸で、お手伝いの人たちいっぱいいるし…変な人なんて、入れないでしょう?」
 敢えて言えば、その邸主が変な人ではある。頭の隅で考えながら真顔をどうにか維持し、青年に見える少年はお説教よろしく少女に言い聞かせた。
 「それは、そうだけど。でも、万一なんてことがないとは誰にも言えないんだ、ちゃんと気をつけないと駄目」
 「はあい…」
 しおしおとキョーコが項垂れる。
 実のところ自分は話をすり替えている、と思いながらクオンは重々しく頷いた。
 「よろしい」
 過去の幻影を彼女から消し去るにはどうしたらいいのか、まだ自分には方途もつかない。これも重要ではあるけれど本当にしたいのはこんな話ではないのに、ともどかしさばかりが体中を駆け巡る思いだった。
 何か伝えたいという気持ちはある。同時に、いま夢から覚めた彼女が忘れているのなら蒸し返すことは恐ろしい。
 こっそり息をつく彼の耳に、幼い声がぽつりと言う。
 「でも、お隣にクオンがいるもの」
 「え」
 「クオンがいれば、だいじょうぶだもの」
 「キョー…」
 それは、かつて自分が言った台詞だった。“俺は、君がいれば大丈夫”。無限の信頼をこめた眼差しが彼を見上げ見つめている。クオンは身のうちが熱くなる感覚に圧倒されそうになった。初めて味わう、おそらくこれを感動と呼ぶのだろう。キョーコだ。キョーコだけが、いつも彼に新しい感情をくれる。
 「ずっと、いるよ」
 言葉がするりと唇を抜けていた。何も特別ではない、ごく当たり前の決定事項を言うような調子だった。
 「俺は、ずっと君の傍にいる」
 もう一度、と彼は願う。以前よりも一層強まった、刻一刻と強まって行く思いを、もう一度彼女に伝えたい。
 それが、自分を強くするように彼女を強くしてくれるといい。
 「君が、たいせつだよ」
 頬を染めるキョーコの笑顔に見入りながら。
 同じ言葉を言った以前、キスしていいかと素直に尋ねることができた自分を羨みながら。
 
 




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 みなみは134ポイントのスウィートダメージを受けた。呪われた。砂糖を吐いた!へろへろ…


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