ROMANCIA 3

 「…え」
 なぜか胸を刺す小さな痛みを覚え、女魔道士は大きな目を戸惑いに揺らす。
 男はそんな彼女から床へと視線を落とし、自嘲するように呟いた。
 「もしかしたら、避けてるのかもしれないけど」
 「…?」
 「彼女は…」
 ぽつりと零された単語に、キョーコはもう一度瞳を揺らした。やはり、女性を。と思う自分に気付いて狼狽の息を吸う。相手がどうとか、自分が気にすることではないではないか。
 「彼女は、俺の腕の中で3度死んだ。今度こそ…と思う一方で、今度もだったら耐えられるんだろうかと…」
 次第に熱が入って行くような言葉を、レンは噛むように止めた。
 「…いや…すまない。おかしな話をして」
 「い、いえ…」
 ひどく傷ついた、半ば諦めた表情にキョーコの胸はみたび騒ぐ。なぜそんなことになるのか、自分でも理解できないままに。
 レンが、自分を見ている。
 心が騒ぐ…
 やがて男は、引き剥がすように彼女から目を逸らした。
 「生憎、君を歓迎するとは言えないけど。体調が戻るまではここに留まってくれて構わない。庵の中のものも食糧も必要なだけ使ってくれていいし、出入りも自由だ。
 「俺のことさえ放っておいてくれれば」
 冷然と、しかしかすかに苦渋を滲ませて彼は言う。頷けばいいのだと、そして礼を言えばいいのだとわかっているのに、娘はそうできないまま言葉を探した。胸に当てた手が、そこにある感触を握り込む。
 「さっきから、そうしてるね?」
 いくぶん不思議そうなレンの声。
 「あ…」
 キョーコは我に返り、自分の手を見下ろした。襟元を探って細い鎖を引き出す。その、先に下げられていたのは。
 掌の中に握り込めるほどの、蒼い、石。
 深く静まる湖のような、そこに降りる夕闇の最初の滴のような、刻につれて色を変える宵空の結晶のような。
 「これ…不思議なんですけど、生まれた時から持ってたそうなんです。それでずっと、お守りにしてて」
 話しながら顔を上げた彼女は、目を瞠り息を飲み、棒立ちになっているレンに気付く。
 「あの…?」
 気分でも悪いのだろうかと不安になって声をかければ、彼はびくりと肩を跳ねさせ…
 やおら身を翻して足早に部屋を出て行った。
 「な、何…?」
 取り残されたキョーコは閉まりきらずに揺れるドアを見つめ、ただ首を傾げる。
 一瞬、黒いはずの彼の瞳がこの石と同じ色に見えたのは、
 …気のせい、だっただろうか。






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 呪いのように結び付けられた二人、ですかね。


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