スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
web拍手 by FC2

たいせつでたいせつで(132)

 すかー。
 と寝息を立てているのは、今や2名になった。音量と印象とはひどく違うけれど。
 富士山を撮影してひとしきり騒いだあと、やっと座席に落ち着いたかと思ったら船を漕ぎ出したマカナンが通路側に不自然な角度で首を落とすのは放置、蓮と社はガイドブック片手に小声で話し合っている。
 「監督が行きたがりそうな場所って、見当つくかな?」
 眼鏡の青年の問いに、華奢なモ○チッチを腕にまとわりつかせた長身の青年はうーんと宙を見上げる。
 「むしろ、どこでも何でも面白がりそうな人ですけど」
 「ああ、なんかわかるな」
 「とりあえずは、オーソドックスな観光コースでいいんじゃないでしょうか?キョーコちゃんが京都の出身ですし、あとで意見を聞いてみましょう」
 「そうか、詳しいって言ってたもんね」
 社は眠れる少女に視線を流し、ふと微笑んだ。
 「だけどキョーコちゃんは、小さいのにしっかりしてるなあ。すごく礼儀正しいし、言葉遣いもきちんとしてるし。よほどいい躾を受けてたんだね」
 「あ…」
 しみじみ言うのへ、蓮はどこかがちくりと痛んだような顔をする。
 「すいません社さん、それ…キョーコちゃんに聞こえるところでは、言わないで欲しいんですけど」
 「え」
 眼鏡の大学生が慌てた。
 「ごめん、何か気に障るようなことだったかな」
 「えーと…いえ、ただ…説明させたくない、ので」
 折りしも彼らは、夏の日の出会いのあった地へと向かっている。河原で泣いていた幼い女の子の幻影を追うように目を細め、蓮は小さくかぶりを振った。
 「お願いします」
 「わ、わかったよ」
 わずかに11歳という身で弁護士事務所などに用のある少女の寝顔をちらと見遣り、社は気まずげに頷く。
 「キョーコちゃんが辛い思いをするとかだったら、俺だって嫌だし」
 呟く口調が本心だと伝えてくれる。蓮はありがとうございますと微笑み、そっと少女の髪を撫でた。




 「キョーコちゃん」
 「…うん…」
 「起きて、もうすぐ京都に着くよ」
 「あ、はあい……
 「!?」
 はたと目を開くと、少女はものすごい勢いで跳び上がった。
 「ククククオ、じゃなくて蓮さん、えとあのごめんなさい私」
 枕にしていた青年から身を離し、ヨダレでもチェックするのかその服の肩を凝視する。
 「もしかして私、ずっと…?」
 新幹線に乗ってからの記憶がないのだろう、真っ赤な顔でそろうり彼の顔を見上げるから、蓮は衝動を苦笑に逃がして立ち上がった。網棚から荷物を下ろし始める。
 「あと10分くらいで京都駅。日本のダイヤって、すごく正確だね」
 「う、うん…ありがとう」
 自分の荷物を通路脇に出してもらい、少女はおそらく二重の意味で礼を言う。
 「どういたしまして」
 軽く笑った蓮が束の間動作を止めて、車窓の向こうの風景に見入る。市街のずっと奥へと。
 「また、来たんだなあ…」
 呟いた声には、様々な感情が入り混じっていた。






web拍手 by FC2
 
 


 やっと京都着。


関連記事
スポンサーサイト

コメントの投稿

非公開コメント

検索フォーム
作品一覧
サイト「花うてHP!」トップよりブログ内の作品のリストに飛べます。閲覧者の皆様のアクションに対して加算させて戴く「花うてポイント」の説明・管理もこちらよりどうぞ!

作品リスト(サイトトップ)

アクセス

・メールフォーム

・BBS

リンク

◆リンクページ


◆当ブログへのリンクについて

当ブログはスキビコンテンツをお持ちのサイト様に限りリンクフリーといたします。


ブログ名:花のうてな

管理人名:みなみ なみ

URL:http://hananoutena.blog14.

fc2.com/


 ↓各ジャンルごたまぜの本サイト。

↓スキビの同人誌作品をブログ記事として収載・販売しています。(2014年7月までで更新停止)

 ↓BUD BOY二次です。


  • 管理画面
  • RSSリンクの表示
    QRコード
    QR
    上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。