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たいせつでたいせつで(133)

 「さあ行きましょうか、社さん」
 蓮が立ち上がった。
 斜向かいからだらしなく伸ばされている足をひょいとまたぎ、大きすぎるトランクをもたもた抱えて通路に出るキョーコに手を貸してやる。
 「うん、だけど…」
 停車した新幹線の窓際に立ち上がった眼鏡の青年が、微苦笑と共にいまだ夢の国に遊ぶ中年男を見下ろした。
 「ああ」
 長身の青年は冷淡に鼻を鳴らす。
 「監督はそっとしておきましょう。アメリカでは、7回起こしても起きなかった人はほっといていいって決まりになってるんですよ」
 「そんなの聞いたことない…」
 しれっと言うので少女が困った顔をした。社も同様だ。
 「このままじゃ博多まで行っちゃいそうだよ」
 「アクシデントも旅の醍醐味ですよ。さ、早く降りようキョーコちゃん」
 「え、でもあの、蓮さん」
 「いいから。停車時間には限りがあるし」
 「えええ…」
 蓮は焦るキョーコの肩を抱えて通路を進み始める。腕に掛けたジャケットの裾が翻り、マカナンの鼻先をかすめた。
 途端。
 「ぶえっくしょおい!!」
 お約束な大クシャミを放って太鼓腹の映画監督は覚醒した。




 「ったく、おめーはよー。あれか?まーだ俺が一緒に来たこと恨んでんのか」
 危うく置き去りにされかかった中年男は、タクシーに乗り込みながらぶちぶちぼやく。
 「俺がいるからタイショーのお許しが出たってのによう」
 痛いところを突かれて蓮が片頬を噛んだ。
 「別に…そんなこと関係ありませんよ。いくら声をかけても起きなかったのは監督の方じゃないですか」
 笑顔に色々隠して言えば、マカナンはさも疑わしげに肩をすくめる。
 「本気で起こしてたんかねー」
 「失礼ですね、ちゃんと起こしましたよ。ねえ社さん」
 「えっ!?あ、ああ、うん。そうだね」
 主に俺が、と言いたかったかもしれないが社は余計なことを言わずに同意だけを示す。
 「そうですよ」
 この話は終わった、とばかり蓮は頷き、窓に張り付くように外を見ている少女に目を移した。
 「懐かしい?」
 そっと尋ねると、キョーコが振り返って笑う。
 「んー…この辺りはあまり来たことないから。でも、京都だー、って感じがする」
 「ふうん」
 微笑を返し、蓮は少女の頭越しに外を見遣った。車の外に、陽炎に揺らめく街並みが流れて行く。米国とはまったく印象の異なる佇まいを透かし、彼の脳裏には懐かしい森が映っていた。
 「ねえキョーコちゃん。荷物を置いたら、少し散歩に行こう」
 キョーコに言ってみると、嬉しそうな笑顔が返る。
 「うん!私、あの森に行きたい」
 彼女も同じことを考えていた。くすぐったいような嬉しさに、優しい気持ちが胸に溢れる。けれど、
 「お?なんだなんだ、二人だけで通じ合っちまって。どこ行くって?面白いとこか?」
 マカナンにぐいぐい押しのけられて、馬に蹴られればいいと思ってしまったのも本当だった。








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 お邪魔虫つきで大変ね(笑)。


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