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お手製爆弾(後編)

 「ああ…」
 彼女の狼狽を見下ろして、俺は複雑な気持ちになった。
 確かに、日頃から何かと我慢させていると思う。大っぴらに2人で出かけることもできなければ、校内で顔を合わせても親密な話などとてもできない。立場を思えば、プライベートであっても恋人らしい振舞いには制限がかかる。
 「君が不満を持つのは、当然だと思う…」
 息を詰め、できるだけ平静な声を作った。責める調子にならないように。
 「今後はもっと、ちゃんと…できることを考えて、きっとそうする。君の気持ちをもっと大事にするから」
 「敦賀先生」
 キョーコの白い肌に血の色が差す。照れ屋の彼女が嬉しそうに微笑むのを見て、どうして今まで気付いてあげられなかったんだろうと後悔した。
 「約束する」
 俺は言い切って、、すべすべした頬に手を伸ばす。
 「だから君も、不満や不平がある時は、誰に言うより真っ先に俺に言うんだよ?君のことだから、1人でぐるぐる考えた挙句に煮詰まって発想が横へズレてしまったのかもしれないけど…そんな警察沙汰になりそうなことを考えて、ましてやそれを友達に話すなんて」
 「へあ?」
 いよいよ本題に入る俺を、キョーコの頓狂な声が遮った。どうして俺が知ってるのか疑問なんだな、と思ってると、彼女はいかにも困った様子で言う。
 「あの、警察沙汰って…なんのお話ですか」
 それからいきなり青くなって、
 「あ!ま、まさか、私と交際してるせいで先生が逮捕されるとか!?」
 俺にとっては少々微妙な方向で慌てだした。まったく、勘弁して欲しい…
 「いや、それ、は…ちゃんと、待つから。君が18になって、卒業するまで」
 某都知事がいなくたって、それはそうするつもりだったんだ。教師と生徒という枠から外れる日まで、君に手は…うん、とにかく、問題になるほどのことはしないって。
 決意も新たに言いかけて、キョーコがしきりに目を瞬いているのに気付いた。
 「待つって…でも、だって…現にお付き合いして……」
 迷うような、哀しむような間を置いて彼女はぽつんと言う。
 「やっぱり、そうなんですね。お付き合いしてるって思ってたのは私だけで、先生は…」
 「え…キョーコ?」
 「そうじゃないかって思ってました。だから、あんなこと考えてみたりして」
 「ちょっと待ってくれ、何か誤解を」
 問い質そうとして、聞き逃せないキーワードに気付いた。あんなこと。
 「キョーコ…あんなことって、それは…昼に琴南さんに話してたこと?あ、ごめん、ちょうどここの前を通った時で、周りが静かだったし…聞こえたんだ」
 「そ、そんな」
 キョーコの顔色が変わる。だけど、どうして赤くなってるんだろう。普通は青くなる場面じゃないのか。
 だけど彼女が、
 「すっすみません、ご迷惑…ですよね」
 しおしお身を縮めるから、もう衝動を抑えきれずに抱きしめてしまった。腕の中のやわらかな塊から、清潔な香りがする。愛しさがこみ上げて体中に満ちる気がした。
 「せ、先生」
 「俺はね、キョーコ。君に殺されるなら、本望だと思う。あれは、ものにもよるけど多少の化学的知識があれば作るのが難しいってものじゃないし…優秀な上に手先の器用な君には簡単かもしれないね。
 「だけど…駄目だ。あんなもの使ったら、俺以外にまで被害が出てしまう」
 「あ、あの、先生?被害とか、何のお話ですか」
 わたわたもがくキョーコを少し離して、瞳を覗き込む。
 「爆弾だよ。作るって言ってたじゃないか」
 「あ、はい」
 いやだから、どうしてそんなに悪びれずにキョトンとしてるのかな。
 「先生がお好きだって仰ってたもので作ってみようと思いまして」
 「え」
 そんな馬鹿な、俺は爆弾が好きだなんて言うはおろか思ったこともないのに。
 混乱が伝染したみたいに、2人で顔を見合わせた。途端に、キョーコが小さな声を上げる。
 「あ。まさか…先生、ばくだんって爆弾のことだと思われたんじゃ!?」
 「…そのままに聞こえるんだけど…」
 「ち、違いますっ。私が言ってたのは、おでんの具のことですよ!?」
 「…は?」
 何だって?
 「おつきあいって言っても今はあんまりできることがなくて、デートも先生のお食事を作らせてもらいに行くのが精々ですから…せめて、それだけでも楽しんで戴けたらなって。先生がお好きなミートボールのトマト煮なんかを巾着に詰めてみようと思ったんです…けど…」
 「巾着」
 「はい。おでんの具でしたら、大体は油揚げの中に具を詰めて口をかんぴょうで括ったものですね」
 「それを、ばくだんって言うの…?」
 「ハイ、うちではそうです」
 「………」
 うちではって、いや、だから…
 気が抜けて、俺は椅子の背によろりともたれかかってしまった。
 「先生!?ご気分でも」
 「いや…大丈夫」
 うん。むしろ、気分はいい。キョーコは犯罪を企んでたわけでも俺を恨んでるわけでもなかった。それはまあ、人騒がせだとは思うけど…食に関心が足りない俺にも問題があったかもしれない。なんて思うのは、彼女が俺のためを考えてくれてたんだってわかったせいだなきっと。
 「ああもう、本当に…君は大変な子だよ」
 笑い出した俺を、かわいい恋人は拗ねたように睨みつけてくる。
 「どういう意味ですかっ」
 俺はそれに手を伸ばして彼女の後頭部を攫い寄せた。
 「君こそが予測不能の爆弾みたいだ。簡単に俺を吹っ飛ばすんだからね」
 まあ、色々とあるわけで。
 俺の我慢はいつまでもつのかな、なんて思いながら。
 「ばくだん、楽しみにしてるよ」
 つるんとしたおでこに、キスをした。




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 ちょっとあっさりでしたかしら…
 ともあれ、りんご様リクありがとうございました~。


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