たいせつでたいせつで(135)

 「ふうん…」
 蓮とキョーコが出かけたあと、居残り組は縁側でまったりと麦茶を啜っている。
 鼻の先を蠢かせたマカナンが、背後を窺うように1/3だけ振り返った。
 「なんつーか、空気の綺麗な家だな」
 「管理を頼んでる人がしっかりしてるんでしょうね。人が住まないと家は傷むものですけど、そんな様子もありませんし」
 「だなー。シンプルだけどどっか洒落てて、こりゃいい家だ。クーの実家にしちゃ上出来だな」
 「え?」
 何気なく言ったひとことに、眼鏡の青年は何か引っ掛かった顔で目線を跳ね上げた。
 「クー…って、クオン君の苗字がヒズリで…」
 いやまさか、とかぶりを振るのを、マカナンはさも呆れた風に斜めに見る。
 「なんだ、聞いてねえのか。あの社長も人が悪いな」
 「え…あの」
 「あいつはハリウッドのアクションスター、クー・ヒズリの倅だよ」
 「えええ!!」
 社青年の怜悧と呼ぶに相応しい造作が驚きに崩れるのを面白そうに眺め、映画監督は麦茶の残りを飲み干した。
 「確かに社長には、大物の相手をしてもらうなんて言われて緊張してたんですが…監督だけじゃなかったんですね」
 「あん?大物なんざ俺だけだぞ」
 マカナンは簡単に言って、ガラス瓶を引っつかんだ。慌ててお代わりを注ごうとする社を制する。
 「テジャク、っつんだろ?ニポンでは。それでいいって」
 「それは酒の時に使うんですが…」
 「こまけーことは気にするなって」
 大らかな大陸の住人はからから笑って、なみなみ注いだグラスへ自分の口を運んだ。
 「まあ、親がどうでもな。今んトコあいつはただのガキだ。ああ、ただの、じゃなくて恋するガキか?」
 「ああ…キョーコちゃんですね。大事にしてますよね」
 「ふん…」
 返ってきた言葉に、マカナンは彼らしくもなく穏やかに笑む。
 「世の中ってのは、うまくできてるトコもちゃんとあるよな」
 「…?」
 瞬きをする社の目を、彼は苦笑でごまかした。
 「たまには、って話だ。ところでよう」
 「はい?」
 「嬢ちゃんは、ウワサでは相当な料理上手らしいぞ。すげー楽しみじゃね?」
 「へええ…キョーコちゃんは本当に何でもできるんですね。まだ小学生の年なのに、すごいな」
 「苦労してるからな。あ、嬢ちゃんにゃ言うなよ?」
 釘を刺すと、大学生は笑っている。
 「何だよ」
 「いえ…蓮と同じこと言うんだな、と思いまして」
 言われて映画監督は肩をすくめた。
 「そりゃしょーがねえ、俺ゃ嬢ちゃんのファンだからよう。つうかあの嬢ちゃんはスゲエぞー。坊主は愚かオッサンもオバサンも片っ端から虜にしてきやがる」
 オッサン・オバサンとは誰のことかと憤慨する俳優もモデルもここにはいない。好きなことを言うマカナンを誰も止められず、社青年は苦笑を零した。
 「俺もうっかりそうなって、蓮に睨まれないように気をつけないと」
 「あー、そりゃいい心がけだ。どうもあの坊主はココロが狭いからなー」
 うんうん、と頷くやりたい放題の中年男。それが不意に、がばりと前に身を乗り出した。
 「お、そう言えば!!」
 「は、はい?」
 青年がちょっと身を引いた分を腹で埋め、彼は拳を振りたて突き上げる。
 「俺な、ニポン来たらぜってーハナビするって楽しみにして来たんだよ!!」
 「ああ、花火。いいですね」
 「だろ!?あとで買いに連れてってくれよ」
 「わかりました、お供します」






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 駄目だ監督の侵食でなかなか本筋に入れない…
 マカナン監督出張りすぎだべさ。


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