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たいせつでたいせつで(136)

 「ここはちっとも変わってないね」
 蓮はなつかしげに目を細め、森を通る小道を踏みしめる。
 「そう、この道を通ってキョーコちゃんに会いに行ったんだ」
 連れを振り返れば、少女はしきりにある一方向を気にしている。
 「キョーコちゃん?」
 「あ…」
 呼びかけなおすと、我に返ったように息をついた。
 「ご、ごめんなさい。えっと…あっちが不破家だなって思って」
 「ああ…」
 幼いキョーコが日々を過ごした家。旅館でもあるそこで、彼女は寂しさと不安を抱えながら精一杯に生きて。
 いま彼女は、どんな気持ちでいるのだろうと蓮は思う。
 なつかしいのか、厭わしいのか、後悔はあるのか。
 けれど問う間もなく、キョーコはさっと身を翻して先に立った。
 「初めて会った河原、まだ覚えてる?<コーン>」
 朗らかに笑うから、彼は自分の方こそ救われる気分で微笑を返す。
 「もちろんだよ、キョーコちゃん。忘れるわけない」



 「ほら、キョーコちゃん」
 浅瀬の前で蓮が手を差し伸べる。
 「ここを渡ると、すぐハンバーグ王国だよ」
 「もう、そういうことは忘れていいのに…
 「ひゃ!?」」
 ちょっと拗ねた顔で手を預ける少女を彼はぐいと引き寄せ、片腕に抱き上げると飛び石を伝って瀬を渡り始めた。
 「れ、蓮さん。危ないから」
 「うん、じっとしててくれないと危ないね」
 「そんな」
 わざと真面目な顔で言ってやると、キョーコは困惑を浮かべながらももがくのをやめる。遠慮がちながらかじりつくように肩にしがみつくから、彼はもう片手も小さな背中に添えた。
 「はい、到着」
 対岸に着くとやや緩慢な動作で手を離し、少女を丁寧に地面に降ろした。
 「あ、ありがとう」
 「どういたしまして」
 微笑めば、いっぱいの笑顔が返る。キョーコは喜びを溜めるように胸を押さえ、はうはう彼を見上げた。
 「ちょっとね、空を飛んでるみたいだった。コーンは今でも、飛べるのね!」
 「…!」
 蓮が目を瞠る。そう、ここだ。かつて幼いキョーコに飛んで見せてと期待をこめて頼まれ、バク宙などして見せた。あの折にもらった、ほとんど必死と呼べそうな拍手は本当に彼の心をあたためたものだ。
 そして今も。
 「キョーコちゃんは今でも、俺を飛ばせられるんだね」
 「え」
 川面に跳ねる光が眩しいのか、少女が眇めた目を腕で庇う。それへ蓮は、わずかに踏み出して手を伸ばした。
 少し、幼い頃の気分に引きずられているのかもしれない、と思いながら。
 もう会えないと告げて去った過去の日、彼はまだ彼女への気持ちにはっきりと気付いてはいなかった。それが運良くアメリカで再会を果たし、彼が見つけた日と彼女が目覚めた日という二度の再々会を経て。
 気持ちの変化を迎え。
 「コーン…?」
 なくてはならない人となった少女の細い声が、不思議そうにも慄くようにも聞こえる。
 「ごめんね、あの時嘘をついて」
 「え…」
 「住む世界が違うなんて。でもそんなもの、偶然と君とが蹴飛ばしてくれた。キョーコちゃんは…」
 尋ねていいものかどうか、自信はない。しかし、彼はどうしても聞きたかった。
 「今回、日本での用事を済ませたら、もう、アメリカで」
 最後まで言い終える前に、がさりと横手の茂みが鳴った。濃い緑の葉影が、少年の姿をひとつ吐き出す。
 「お前…もしかしてキョーコか…?」
 




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 やっとこさ本筋~。


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