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Fairy Tail

 「何も、ねえ」
 LMEビル、ひと気のない非常階段。コンクリートの壁に、むつむつぼやく声が跳ね返って転げ落ちる。
 「人前であんな風に思いっきりバカにしなくたっていいじゃない。『やぁーだ、いまどき妖精とか。京子ちゃんってじゅーんしーん』なんて。もうちょっとひねりの聞いた皮肉のひとつも言うならまだしも、ちょっと安直すぎるんじゃないかしら」
 わざわざ声色まで使ってぼやいた後、声の主・最上キョーコは小さく溜め息をつく。
 「そもそも、私とコーンとの美しい思い出を人に話したところから間違いだったんだわ。大事に大事に、この胸ひとつにしまっておけばよかったのに…ごめんねコーン、貴方が汚されたみたいで私も悔しい…っ」
 握った掌を開けば、そこには窓のすりガラスを通した光線を受けて複雑な色合いを見せる小さな石。キョーコはそれを額に押し当てるようにして膝の上に顔を伏せた。丸めた背中がふると震えるが、次の瞬間彼女はふと身を起こして呟く。
 「敦賀さんにも、前に笑われたっけ…」
 DMの撮影中だった。蓮をどうにか力づけたくて石を渡しコーンの話をした次の瞬間、彼は噴き出して。振り返ったらもう真顔になっていたのはさすがと言うべきなのかどうか、結局はさらに盛大に噴き出してクダサッタのだけれど。
 「でも、あんな風に面と向かってバカにしたりしなかったし…それに」
 彼も、魔法を使えるのだ。と考えかけて、キョーコは大急ぎでかぶりを振った。
 「違うでしょ…っ!あの人のはこう、清純な乙女を誑かして堕落させる類の、悪い魔法なんだから。コーンとは大違いよ!!」
 強く言い切り、自分で頷くと、彼女の脳裏には2つの顔が浮かび上がる。
 「そう、コーンはまばゆい金髪で、瞳なんて秘密の森に隠された黄昏の湖みたいに碧いんだもの。敦賀さんとは似ても似つかな…
 「…あら?」
 尋常ならざる測量間隔を具える少女は、不意にスコンと後頭部を打たれたような顔をした。
 「待って…えっと」
 目、鼻、唇、全体のバランス、印象。
 「似て…る?そう言えば」
 彼女の出現に、驚いたように振り返る表情と動作。やはりDMのロケの際、早朝の河原で同じようなことを考えたではないか。
 「コーンが大きくなって、髪や瞳の色を変えたら…
 「……」
 キョーコは呼吸さえ詰めて目の奥を探る。答え、らしきものはじきに出た。新たな疑問の形で。
 「人外って似るものなのかしら」
 なんとなく嘆息すると、背後からも疑問が飛んで来る。
 「人外って…何の話?」
 「だから、敦賀さんとコーンが似てるなーって……え!!?」
 連れもなかったところへ質問。しかもこの声。
 「え…と…」
 そろ~り振り返る視線の先、階上には。予想通りの人物が、何とも測りがたい無表情で立ち尽くしていた。
 ひいい。超ご多忙のアナタが、どうして今ここに。とキョーコは心の中で大量の涙を噴き上げる。先輩と言うばかりでなく数々の恩…と多少の恐怖心など抱く俳優に、暴言を聞かれてしまった。すわ今度こそ切腹かと半ば覚悟を決める彼女に、しかし、蓮はなかなか物を言わない。
 「あの…敦賀さん?」
 沈黙に耐えず、キョーコはおずおずと上目に長身の頂きを彩る佳貌を見上げた。
 その視線を受け、先輩俳優が漸く表情を動かす。さざめく無数の矢に似た、無敵の笑顔。
 「人外、ねえ。それはどういう意味かな」
 やわらかく響く甘い声が、どうしてこんなに威圧的なのだろうとタレントは半ば硬直した。脂汗を絞るようにして脳の再起動に努めるが、なかなか成果が上がらない。
 「そ、それは、ですね。あの」
 「うん?」
 「ですからその、そう、敦賀さんが」
 「俺が?」
 蓮はゆったりと歩を運び、キョーコと同じ段まで降りて来た。さりげなく手摺りをつかんで彼女の逃走路を塞ぐので、キョーコはもう破れかぶれで声を励まし言い切った。
 「敦賀さんがもう、人とは思われないほど素敵無敵に魅力的でいらっしゃるという意味ですっ!!」
 「え」
 なせか蓮が、ぱっと手を引いた。彼女はその隙を見逃さず身を翻す。
 「ということですので。失礼いたしました~!!!」
 駆け出そうとしたのが、くんと引っ張られてつんのめる。腕を引かれて、気がついたら手摺り際に追い詰められ蓮の腕に囲い込まれていた。
 「あああ、あの、敦賀さん?」
 「…そう」
 極上の蜂蜜もかくやという声が、ゆるりと耳に降って来た。
 「嬉しいね、君の目にそんな風に映ってるなんて」
 「えええええ!?あの、敦賀さん」
 声だけでなく顔まで近づけられ、キョーコは決死の思いで背後を確かめる。
 「ももも申し訳ありませんが、わたくし急いでおりますっ。こ、この件はまた後日ということで!!」
 手摺りの上に跳び上がり、そのまま背後へもう1つ跳ぶ。
 「最上さん!?」
 驚く蓮を尻目に半階下の階段に見事に着地し、そのまま駆け出した。
 「失礼します~!!」
 素晴らしいスピードで逃走に移りながら、彼女は思う。
 あの人には絶対、先がカギになった黒い尻尾があるんだから。
 妖精には、そんなものないんだからっ。
 だから。絶対。似てるなんて。コーンと似てるなんてことは。
 「気のせいよ~!!!」
 高い叫び声が、階段中に反響しつつ駆け下りて行った。






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 K.S.様のリクエスト作品として書かせて戴きました。だいぶいじってますけども…てへ。


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