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ROMANCIA 5

 「ともかく、戻らないと…」
 衝撃の余り、彼女の気遣いも無視して庵を出てきてしまった。嘆息とともに視線を移すレンは、木肌に手をついて身を起こす。
 しかし、歩き出そうとした瞬間。彼は自分の存在が奇妙に引き歪むような感覚を覚えてふらついた。
 「…!?これは」
 記憶がある。古い、契約の魔法だ。召喚を受けている時の、已みがたく抗いがたい自我の葛藤。誰かが、彼を呼んでいる…
 「まさか」
 レンは必死に足を踏み出す。ごく近くに感じる召喚者の呪力を辿り、よろめきながらささやかな草庵の前を過ぎると、裏手の池の前に、彼女はいた。
 地に魔方陣を布いて四囲に触媒を置き、キョーコは右の手を前方に差し上げている。何かつかもうとするようなその手に、体がちぎれそうな引力をレンは感じた。
 「…何を、してるの…?」
 穏やかな声を出すには、相当の努力を必要とした。
 彼の声に華奢な背中をびくりと跳ねさせ、若い女魔道士が勢いよく振り返る。途端に彼女の指先で陽炎のように揺れる力場がかき消えた。
 「あっ、あの…すいません、つい」
 もごもご呟く彼女の周囲で、立ち上りうねっていた呪力がすうと大気に溶けて消えて行く。
 「この森に棲む竜は水の属性を持つって聞いてましたので、窓から池が見えるのに気付いたら居ても立ってもいられなくなって」
 「ああ…」
 レンは曖昧に頷いた。
 「だから泉の近くにいたのか。だけど、竜の召喚なんて大きな魔法を使うのは、今の君には負担が大きすぎるんじゃないかな?」
 「え、と…ご心配、おかけしましたか。すみません…ありがとうございます」
 少し赤くなる頬を押さえ、キョーコはへどもど謝罪と礼を並べる。
 「え、いや、心配というか…まあ、うん。とにかく、無理はしない方がいい」
 「はい、すみません」
 「うん…じゃ、戻ろうか」
 素直に頷く魔道士を目線で庵へと促し、青年は先に踵を返した。その背中を、高めの、しかしやわらかい声が追う。
 「あ、あのっ」
 「え」
 足を止めて振り返ると、娘は歩き出しながら彼に笑いかけた。
 「もしかして、貴方も魔道士なんですか!?だって、さっきのが召喚の魔法だって見ただけでわかるなんてスゴイです」
 「あー…いや、それは…」
 レンは答えに詰まり、口元を覆って宙を見上げる。それに畳み掛けるようにキョーコが拳を握る。
 「魔道士なんだとしたら、相当なレベルでいらっしゃいますよね!?」
 「だから…」
 男の言辞はどこまでも不明瞭だ。さもあろう。魔道士どころかそもそも魔法の発祥とされる存在だなどと、今の時点で語るには支障が大き過ぎる。誰あろう彼女相手では、二重の意味で。
 彼の心中を知らず、女魔道士は瞳に輝きを満載して彼を見上げた。
 「あのっ、もし、ですね。もし差し支えなかったら、少々お手解きなんてお願いできないものでしょうかっ!?」
 「手、解き?」
 「はいっ。私め、魔法を極めんと欲してより常に修業の場を求めております。ここで上級者様にお会いできたのも何かの縁と申しますか強運と申しますか、折角の機会を無駄にしたくございませんっ」
 「いや、あの」
 勢い、もあるが。それよりも真っ直ぐに彼を見上げる大きな瞳に圧されて、レンは拒絶の言葉を紡ぐことができない。先にキョーコが、戸惑う様子に漸く気付いてくれた。
 「駄目、ですか」
 「…え」
 「そうですよね…行き倒れてたところを助けて戴いた上に、ご指導まで仰ごうなんてずうずうしい。そう言えば、そもそも関わりたくないって言われてたんですし…」
 急激な下降線を描いて重くなるメゾ・ソプラノ。力のない声に胸を射られ、青年は思わずかぶりを振ってしまった。
 「いや、そんなことは…あれはちょっと、その、俺の態度が悪かったと…」
 言いかけると、うすく潤んだ瞳がちとりと彼を見上げる。そうだった、とレンは口の中で小さく呻いた。
 彼女は凝り性で思い込みが強くて頑固で、こうと決めたら揺るがない。なのに遠慮が強くて自信が足りなくて、時々妙に自分を卑下することがあって。
 だからいつも、彼女を守りたかった。
 今度はうまく行くだろうか?今度こそ。
 不安はある。逃げ出したくなるほどに。
 それでも、彼はとうとう両手を挙げた。
 「…わかったよ…」





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 キョーコが喋りだすと妙に明るくなるな(笑)。

 ところで、どうもこの頃、記事を保存しても前みたいにすぐ表示されないので困ります。ぎりぎりにアップしたら、表示される頃には日付が変わってるってことになってしまう…うう;頼むよFC2さん…
 
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