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たいせつでたいせつで(140)

 「キョーコちゃん、そろそろ出る?」
 電話の傍で何やらぼうっとしていたキョーコに、蓮はやや遠慮がちに声をかけた。キョーコが不破家を訪れると言っていた時刻が近付いたためだが、もし気が進まないのなら無理に行くことはないと言おうかとも考えていた。 
 なにしろ彼女は、不破家へ訪問の連絡を入れてからずっとそこで考え込んでいる。硬い表情を見れば、本当は行きたくないのかと気も揉めるというものだ。
 「あ、はいっ」
 少女は目の前で泡でも弾けたような顔をして彼を見上げた。そそくさと立ち上がるのへ手を貸し、青年は問いのかわりに測るような視線を向ける。言葉で尋ねると、余計に彼女の規範が意思を凌駕してしまう気がした。行くべきなんだから嫌でも行かないと、と。
 しかしキョーコはぱたぱたとスリッパを慣らしてダイニングに向かう。
 「ええと、さっき買った手土産を…」
 風呂敷に包まれた箱入りの桃を取りに行ったらしい。蓮はゆっくりとそのあとを追い、木枠にガラスをはめ込んだ引き戸に凭れ、せわしなく準備を確認する少女を観察した。
 キョーコがそれに気付いて振り返る。
 「蓮さん…本当について来てもらっていい?何なら私ひとりで行くから、お家でゆっくり…」
 「一緒に行くよ」
 強い調子になってしまった。少し気まずい思いがかすめて続ける言葉に窮していると、少女がそっと微笑を浮かべる。
 「ありがとう。ほんとはね、1人だとちょっと不安だなーって思ってたの」
 「君にそういう思いをさせないために、俺が来たんじゃないか」
 アメリカで、キョーコの部屋で。日本へ一緒に言って欲しいと頼られた時に、それは彼の中で確定事項になっているのに。呆れるような蓮の口調に少女が大きな目をぱちくり見開いて、それから、嬉しそうに笑った。
 「蓮さんは、ほんとに優しいのね」
 「…」
 そうじゃない、と彼は思う。優しいのは、かすかに震える手を隠して彼を気遣うキョーコの方ではないか。
 彼は、彼女がどんな感情を不破家の人々に抱いているのか、どんな話をするのか、正確詳細なところを知らない。ひとえに彼女の経てきた感情生活に直結するために迂闊に触れられずにいるわけだが、それだけに想像が痛々しくなってしまうのかもしれない。おとなたちのように、もっと自分にできることが増えればこんな感情に振り回されずに済むのだろうか?
 蓮はほんの小さな吐息に迷いを逃がした。自分が迷っていても仕方ない。
 「だからね」
 少し眉尻が下がっている気がしたけれど、彼はそっと微笑んだ。
 「俺は優しいんじゃなくて、君が大切なだけ。そろそろ、覚えて欲しいな」
 持ち上げ直した視線の先に、少女の真っ赤っ赤に熟れた頬。胸の底で跳ねたのは、何の感情だっただろうか。






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 つか安心しろクオ坊、君は大人になってもキョーコには振り回されるしかないのだよ(笑)。
   ↑安心て。


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