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フォルトゥナタ(4)

 3日後。
 丈と名も高いクオンティヌスの姿が再び広場に現れた。もう昼に近い時刻で、仕事を終える支度をしている店舗も多い。自然、急ぎ足になる彼の青い瞳が、目的方向を確認して少し和らいだ。
 カウンターをしきりに拭き清めているウルバに急いで近付く。
 「あ」
 彼に気付いたパン職人が、少し驚いた風に目を瞠った。そのさまが小鳥のようだと彼は思い、ふわりと頬を緩める。
 「やあ、ウルバ」
 「こ、こんにちは!先日はありがとうございました。ええと、あの…今日は、パンが売り切れてしまったのですが…」
 「ああ」
 申し訳なさそうに目を伏せる少女に、クオンティヌスは軽く手を振った。
 「それは残念だな…今日までお役目で王宮に上がってて、これでも急いで来たんだけど」
 「王宮…!」
 ウルバはパラティーノの丘の方角を振り返る。フォルムを囲む建物と壁に阻まれて丘も王宮も見えるわけではないけれど、頬を染め瞳を輝かせる様子は少女らしい憧れに満ちていた。
 微笑を深めた青年騎士が、その注意を取り戻すべく言葉を続ける。
 「まあでも、それはいいとして。今日は、というか先日もだけど父の使いで、君に頼みがあって来たんだ」
 「頼み…ユリウス家の方が、ペレグリーヌス(在ローマ外国人)の私に、ですか!?」
 ペレグリーヌスは自由民ではあるけれど、下手をすると奴隷よりも立場が弱いことがある。ウルバの疑問も故ないことではないが、クオンティヌスはさらりと頷いただけだった。
 「ああ、そうなのか。でもそんなの、マギールス(料理人)としての技量には関係ないだろう?」
 「え」
 少女の目がもっと大きくなる。自分を見上げるハシバミ色の瞳に、青年はそっと微笑を送った。
 「とんでもなく美味しいパンを焼いて、とんでもなく質の高いガルムを作って、その上に料理人としても名を馳せるなら、その人物は尊敬を受けるべきだ」
 「そっ」
 ウルバが真っ赤になった。そんなあのそのとうろたえる様子が可愛らしい。
 「というわけでね。あなたの都合がつく日に、うちの邸に出張して料理を作ってもらえませんか?ノビリタス・ウルバ」
 丁寧な口調に加え『高名なる』と冠されて、少女はほとんど自失に陥る。広場を満たす喧騒も耳に入らないかのように立ち尽くす手から、雑巾が脱け出て地に落ちる。英雄と呼ばれる青年が膝を折り、それを拾い上げた。
 「はい、落ちたよ」
 手渡されて、ウルバはひゅっと息を呑んだ。
 「すすすすみませんっ、ク、クオンティヌス様に雑巾なんて拾」
 「構わないよ、うちだってもとを糺せば蛮族の出身だ。君が、そんな家に雇われるのは嫌じゃないといいんだけど」
 「そんな!あのっ…私などでよろしければ、喜んでお引き受けいたします!!はいもう、いつでも!」
 勢い込んで何度も頷くので、クオンティヌスは笑い出した。
 「ありがとう。でも、そんなに振ると細い首が折れちゃいそうだよ」
 「ほそ……」
 少女が絶句するのは何度目か。しかし青年騎士に悪びれる様子はなく、にこにこと日にちを数えはじめる。
 「今日明日明後日は饗宴に招かれてたから…父がいるのは3日後か。その日で大丈夫?」
 「畏まりました!ええと…饗宴料理ではないのですよね?」
 「うん。単に晩餐ということで、メニューはお任せするよ。これで食材を用意してもらえるかな」
 と彼は、懐から出した小さな革袋をそのまま少女に渡す。掌の重みに、ウルバはまたまた目を見開いた。
 「こんなに!」
 彼女は返そうとする素振りを見せたがそれも一瞬のこと、わかりましたと頷いた。ユリウス家の晩餐、というものを思ったのだろう。
 「最高の食材を用意して、ご期待に添うべく腕を揮わせていただきます!」
 笑顔には、そうした機会を彼女自身も喜ぶ色があった。





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 うう…例によって予定がどんどん延びるだわ…


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