スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
web拍手 by FC2

たいせつでたいせつで(142)

 「…あの…俺は」
 蓮は言いかけたきり絶句する。毛唐。確かそれは外国人を、しかも蔑視する意味の言葉ではなかったか。髪を染め瞳の色を変え、日本名まで名乗っている彼に。
 「日本語お上手やし、正座まで練習して来はったん?ご苦労はんやね」
 ころころと笑う女将の声には、故意だろう、抑えに抑えた中からほんのり零れる悪意が聞き取れる。
 何故。
 自分が日本人ではないと知れたのは、老舗旅館の女将の慧眼と思うべきか。しかしそれにしても、こんな風に嫌味を言われる理由は?
 二重の意味で混乱し迷う彼の耳に、キョーコの慌てた声が届いた。
 「お、女将さん。あの、蓮さんはそんなんじゃなくて」
 「ああ」
 女将が軽く首を傾げる。キョーコに向けた小作りな顔には品の良い微笑が浮かんでいたけれど、なぜかそこに平穏が感じられない。なにか妖怪めいた仕草だった。
 「冗談やよ、冗談。こないええ年の人が、あんたはんにねえ。何やほら、ロリコンゆうの?そんなんみたいやものね」
 「え、えと、あの」」
 少女は目を白黒させている。そんな様子をあっさり見流して、女将はころりと笑みを零した。
 「キョーコちゃんにはな、うちにお嫁に来てもらお思てるし」
 「おおお、女将さん!!?」
 「なっ」
 「そやさかい、こんまい頃から色々仕込んでなあ。またキョーコちゃんが、物覚えようて」
 「そ…そんな」
 キョーコの困惑を、蓮はいたましく見る。それは居場所に迷う少女が必死に運命にしがみついていたことの表れだと、幼い日に知っていた。
 それを大人の都合で利用しようとする女将の態度が腹立たしい。しかもこのままでは。自分は邪魔者として意識の外に排除されてしまいかねない。とは言え、子供の頃から大人に混じって働いて来た彼にさえ、この女性は人生経験と言い人あしらいと言い一枚以上上手に思える。こんな人物に、どう抗えば効果的なのだろう。
 練習して来た日本語とは少々勝手の違うことばにも幻惑され、蓮は対応に苦慮する。それへ眇めた目を流し、女将は花を揺する春風のような声で続けた。
 「キョーコちゃんはうちの坊ンのお守りも得意やしな。そら、まだ子供やさかいすぐにどうこうやあらへんけど、約束だけでもしてくれへん?ほら、うちに来てくれたら、冴菜はんのお墓も見れることやし」
 ぽんぽん言い募り、再びちらと蓮を見る。一見ふくよかな微笑を湛えるようで、瞳の奥に冷ややかな険があった。
 「え?あ、それは、そうですね」
 またキョーコが、頼りなく頷くから。
 蓮はたまらず身を乗り出そうとする。
 「冗談じゃ…」
 悲鳴に近い声に、被せるような女将の溜め息。
 「だってなあ、冴菜はんのさとのお人らと来たら…」






web拍手 by FC2
 
 


 ヨレヨレでござる…


関連記事
スポンサーサイト

コメントの投稿

非公開コメント

検索フォーム
作品一覧
サイト「花うてHP!」トップよりブログ内の作品のリストに飛べます。閲覧者の皆様のアクションに対して加算させて戴く「花うてポイント」の説明・管理もこちらよりどうぞ!

作品リスト(サイトトップ)

アクセス

・メールフォーム

・BBS

リンク

◆リンクページ


◆当ブログへのリンクについて

当ブログはスキビコンテンツをお持ちのサイト様に限りリンクフリーといたします。


ブログ名:花のうてな

管理人名:みなみ なみ

URL:http://hananoutena.blog14.

fc2.com/


 ↓各ジャンルごたまぜの本サイト。

↓スキビの同人誌作品をブログ記事として収載・販売しています。(2014年7月までで更新停止)

 ↓BUD BOY二次です。


  • 管理画面
  • RSSリンクの表示
    QRコード
    QR
    上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。