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たいせつでたいせつで(143)

 「そっ、それを伺いたいんです!!」
 キョーコが突然叫んだ。
 数拍小さな握り拳を見つめ、女将が嘆息する。
 「ああ…キョーコちゃんは、行ったことあらへんのやったねえ」
 「はい、あの、住所も知らない、んです…」
 少女の声はだんだん小さくなる。それと共に身も小さくなるようで、蓮は思わず肩に手を伸ばす。
 「キョーコちゃん…」
 視線を感じて振り向くと、女将が彼を、と言うよりはキョーコの肩に触れた彼の手をじっと見ている。ますます警戒すべき人物としての認識を深めてしまったのかもしれないが、彼にはそれどころではなかった。
 「まあねえ…冴菜はんさえろくろく行かへんかったんやし、キョーコちゃんが知らんのも当然やわ」
 女将は恥じ入るように俯いてしまった少女に目を移し、声に同情の響きをこめる。あんたはんのせいやあらへんよ、とばかり。
 「でも…」
 キョーコがぽそぽそ言った。
 「お母さんをそちらのお墓に入れてもらうのは、もしかすると無理かもしれませんけど。私が建てるにしても、一度ちゃんとご挨拶くらいはしないといけませんよね…」
 子供らしくない発想は、キョーコ本来の性格もあるだろうけれど、多くは彼女の生きて来た環境に由来するはずだ。
 それをわかっているはずの女将は、無言のままもう1つ溜め息をこぼした。
 「あの、女将さん」
 「せやけど」
 少女が顔を上げるのと、女将が口を開くのが同時だった。
 「あ、はい」
 キョーコが譲り、年長は会釈するように頭を揺らしてから話し出す。
 「お墓建てるゆうんも、簡単やあらへんよ。お金もかかるし、なんや面倒な手続きもあるんやろ?」
 「お金は、たぶん大丈夫です。それに、蓮さんのおうちのつてで弁護士さんを紹介して戴きましたから…墓地を買う時の手続きも、お願いしようと思ってます」
 「大丈夫て…」
 CM出演の件を知らない女将は首を傾げたが、まあその辺は冴菜はんしっかりしてはったしなと呟いて納得したようだった。
 「だから、お母さんの実家の住所を教えて下さい」
 キョーコがひたと視線を据える。それを受け、女将はみたび嘆息した。
 「そら、そう言われたら教えへんわけにも行かんけど」
 「お願いします」
 「…ほな、ちょっと待っててな」
 京の女は和服の裾を乱しもせずにするりと立ち上がる。




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 キョ子はこれから大変です。


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