ROMANCIA 9
レンは半端に挙がった手を、軽く握り、上空を指すような形にした。それをぐるりと振り、
「君は、竜の姿を求めてこの森に踏み込んだ…」
確認するように呟けば、キョーコがしっかりと頷き返す。
「はい」
「ここが魔竜の森と呼ばれていたのは、もう遠い昔の話だ。今は単に魔物の棲む魔の森と呼ばれているだろう?確証もないのに、よく1人でこんな所まで入り込んで来たものだね」
危険なまねをする、と暗に責めたつもりだったのだが、女魔道士はなぜか照れ臭そうに頬に手を当てる。
「それはもう、気合と根性で」
「いや、根性って…」
「だって、どうしても会いたいんです」
キョーコの口調が変わった。表情も。
少女めいた、遠慮の勝つ態度を意志が塗り替えたように、彼女はまっすぐな視線をレンに当てる。自分のうつわを透かして真実を読み取られている気がして、彼は小さく狼狽を覚えた。
「会って…聞きたいんです」
視線はそのまま、娘は言葉を継ぐ。
「何を…」
レンの喉が鳴った。期待のゆえか。
「貴方は、人を愛せますかって…」
キョーコは畏れるような声で言い、すぐに自ら哂った。
「これじゃ私、恋でもしてるみたいですね」
「恋…」
レンは呆然と呟く。胸のうちに希望が生まれるのを感じていた。
「ああ何だか、さっきより変かも。竜を身近に感じたいとか恋とか…私、変ですね」
両の眉尻を下げるのへ、彼は少しく目元を緩める。
「少しも変じゃないよ…そういう話があったっていい」
「え、と…」
彼の真意を測りかねてだろう、キョーコの声に戸惑いが混じる。
レンはふと池の面を振り返り、そこにさざめき躍る光に目を細める。あんな風に、世界が輝いていた日々があった。心に浮かぶ思いに、彼はつと目を伏せた。
「もし、俺が」
展開を急ぎたいけれど急いでいるように見えないようにしたい。ムズカシイ…
「君は、竜の姿を求めてこの森に踏み込んだ…」
確認するように呟けば、キョーコがしっかりと頷き返す。
「はい」
「ここが魔竜の森と呼ばれていたのは、もう遠い昔の話だ。今は単に魔物の棲む魔の森と呼ばれているだろう?確証もないのに、よく1人でこんな所まで入り込んで来たものだね」
危険なまねをする、と暗に責めたつもりだったのだが、女魔道士はなぜか照れ臭そうに頬に手を当てる。
「それはもう、気合と根性で」
「いや、根性って…」
「だって、どうしても会いたいんです」
キョーコの口調が変わった。表情も。
少女めいた、遠慮の勝つ態度を意志が塗り替えたように、彼女はまっすぐな視線をレンに当てる。自分のうつわを透かして真実を読み取られている気がして、彼は小さく狼狽を覚えた。
「会って…聞きたいんです」
視線はそのまま、娘は言葉を継ぐ。
「何を…」
レンの喉が鳴った。期待のゆえか。
「貴方は、人を愛せますかって…」
キョーコは畏れるような声で言い、すぐに自ら哂った。
「これじゃ私、恋でもしてるみたいですね」
「恋…」
レンは呆然と呟く。胸のうちに希望が生まれるのを感じていた。
「ああ何だか、さっきより変かも。竜を身近に感じたいとか恋とか…私、変ですね」
両の眉尻を下げるのへ、彼は少しく目元を緩める。
「少しも変じゃないよ…そういう話があったっていい」
「え、と…」
彼の真意を測りかねてだろう、キョーコの声に戸惑いが混じる。
レンはふと池の面を振り返り、そこにさざめき躍る光に目を細める。あんな風に、世界が輝いていた日々があった。心に浮かぶ思いに、彼はつと目を伏せた。
「もし、俺が」
展開を急ぎたいけれど急いでいるように見えないようにしたい。ムズカシイ…
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