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きみのばしょ

 今日もTV局の廊下を、長身のトップ俳優とそのマネージャーが颯爽と歩き抜けて行く。
 「キョーコちゃん、そろそろ出番終わってるかな?今日は生番だったよな」
 最早スケジュール帳を引っ張り出すまでもなくキョーコの予定まで把握しているマネージャーの声に、蓮は苦笑しながら時計を見た。
 「ええ、そんな頃合ですね」
 「あ、あれか」
 と社が前方のロビーに設置された大型モニターを指す。そこには、この局の人気番組であるバラエティのエンディング風景が流れていた。軽快な音楽の中、出演者たちが一列に並んで手を振っている。中にトップ俳優の目に入れても痛くないほど可愛い恋人・京子の姿もあった。一瞬、その愛らしい顔がアップで映し出される。
 蓮がぴたりと足を止めた。
 「社さん、収録までまだ少し間がありますよね」
 いきなり問われてもマネージャーは慌てない。
 「ああ、前の仕事がちょっと早く上がれたから、30~40分の余裕はあるぞ」
 なにか達観したように言った。
 「じゃ俺は広報に顔出して来るから、入り時間10分前くらいには楽屋に戻れよ」
 「わかりました、ありがとうございます」
 蓮は軽く会釈すると本当に人間かと疑いたくなるような長い足を駆使して素晴らしいスピードで、しかもあくまで優雅にエレベータに向かう。そうしながら、携帯まで操作していた。
 メールで一言、『待ってて』。相手はもちろん可愛い恋人。
 「5スタって言ってたから、3階か」
 一人ごち、丁度来たエレベータに乗り込んだ。



 壁の名札を確かめ、ノックすると中からドアが開かれる。ひょいと顔を出したキョーコが素早く周囲を確かめて蓮を中に引き入れた。
 蓮がドアに鍵をかけ、まずはキスを3つ。まぶた・頬、そして唇に。
 そっと溜め息をつき、クスクス笑いながらキョーコが目を開いた。
 「いきなり、どうしたんですか?」
 「君こそ」
 「…え」
 蓮の切り返しに、彼女はキョトンと目を瞠る。
 「何がですか?別に何も…」
 「泣かないで」
 いきなり遮られ、細い肩がビクリと震えた。しかし口調は変えない。
 「やだ、泣いてませんよ。何言ってるんですか敦賀さんったら」
 「……」
 蓮はそれ以上言葉を使わず、そっと恋人を掻き寄せ抱き締めた。キョーコは息を呑み、もぞりと動いたが抵抗はせずに蓮の胸に収まる。だんだん男の肩に傾いて行く頬に…
 「ほら泣いてる」
 シャツの肩に広がっていく水染みを見ながら、俳優はやさしく苦笑した。
 「あっ…貴方が、泣かせたんじゃないですかっ…」
 「そうか…ごめんね?キョーコ」
 「……こうしてると気持ちいいから、許してあげます」
 「それはありがとう。で、何があったって?」
 再度問う蓮は、キョーコの全身から立ち上る悲しみの気配に眉を寄せた。髪をなで、顔を上げさせて頬を伝う涙を吸い取り、鼻の先を軽くかじる。
 「言って。君のことは、全部知りたい」
 「う…も、もう…敦賀さんはっ…」
 ぎゅっと目を閉じて涙を止めようとする少女を、蓮はひょいとパパ抱きにした。そのままスタスタと楽屋の奥に進み、ソファに腰を下ろした時にはキョーコは彼の膝の上にいた。
 「ちょっ、敦賀さ…」
 「言わないと解放してあげられないな」
 キョーコはそんな、と情けない声を上げたが、じっと見つめる蓮の眼差しに耐えられず視線を落とした。そのまま黙り込むのを、蓮は辛抱強く待つ。
 「…あの」
 「うん?」
 キョーコの唇が開いたのは、3分ほども経ってからだったろうか。
 「さ、さっきの、放送の前に…電話がかかって来て」
 「うん」
 「ショータローからで…時間もなかったし、切ろうとしたら何か様子がおかしくて」
 「…うん」
 「無理矢理用件を聞き出したら…ふ、不破のおばさまから連絡があったって。あの、母が、ずっと入院してたって…それで今朝、亡くなったって…わた…しは、お通夜にもお葬式にも来るなって言ってたって…!」
 蓮は何も言わず、ただ抱き締める腕に力をこめた。
 「わ、私、ヘンなんです。それでなんだか、居場所がなくなっちゃった気がして。そんなの、もうとっくになかったのに。子供の時からずっと。なのに……」
 「違うよ」
 呂律の怪しくなり出すキョーコの耳を、優しい声がそっとくすぐった。蓮はキョーコの手を取り自分の胸に当てる。
 「君の居場所は、ここだから。もうとっくに」
 「つ…るがさ…」



 「…」
 身動きする蓮に気付いて顔を上げると、俳優は時計を睨んでいる。
 「時間なんですね。私はもう大丈夫ですから、行って下さい」
 微笑むと頬を両手で包んで瞳を覗き込まれ、そっとくちづけを落とされた。
 「ごめんね。夜、部屋に行くから。なるべく早く」
 「もう…大丈夫ですってば。心配性ですね」
 蓮の膝から降り、キョーコは微笑を苦笑に変える。
 「敦賀さんはズルイです」
 「え、ズルイって…なんでそんな」
 立ち上がる俳優はいささか不満そうに問い返して手を伸ばして来たが、それをスルリとすり抜けてそっぽを向いた。
 「だって、そんなだから…
 「私ばっかり、敦賀さんを好きになりますもん」
 次の瞬間。彼女は、再び背の高い恋人の腕の中にいる自分を発見する。
 頭の上から、有り得ないよ…とやわらかな声が、降って来た。 


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 ぽと吉様の37373打キリリク(つーかシャレリク?)第一弾です。
 ホントのリクは「キョーコがケガまたは過労でダウン、蓮が甘やかしたおす」というものでしたが、第二弾の方とややネタがかぶるので精神的なものに変更させて戴きました。あと、ここでも冴菜さん死なせてしまった。スマセヌ。
 それはそうとこの甘さ………
 はっはずかしかったんだからねっ!!みんな砂吐いてくんないと、しょーちしないんだからあっっ!!うえ~ん。
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