ROMANCIA 11

 「竜の鱗…!」
 目を瞠るキョーコの手に押し付けるようにそれを渡した蓮は、それ以上何を言うこともなく呼吸を詰めて一歩下がった。
 結果がどう出るとしても、彼は賽を投げたのだ。
 キョーコはアイテムを包む自分の手をじっと見つめている。
 息苦しいような静謐の中、池の上をかすめる鳥の歌がらくらくと楽しい。そちらを見遣って微笑み、彼女はゆっくりと掌を握った。
 こくり、と細い喉が鳴る。
 「早速…試してみて、いいですか…?」
 すこし掠れる問いに、レンは黙って顎を引く。そのまま、自分の足元に目を落とした。目に見えないほどのかすかな震えに、足元の草が低く鳴っている。
 自分は恐れている、と彼は知った。
 年古り、人知をはるか超えるはずの身が、すぐ近くに迫る刻を…
 違う。
 恐ろしいのは、彼女だ。いつも。彼女はやすやすと彼を動かす。
 彼女はいつも、やすやすと彼を置き去りにする。
 今度も?
 どうか、と彼は呟いていた。
 今度こそは。
 狂おしい渇望の視線の中、魔法陣を布き終えたキョーコが緊張の面持ちでその中央へ進み入る。白い右手が前に伸べられた。開かれた掌には、レンの渡した竜の鱗。
 「喚請」
 常よりも低めの声がきっぱりと宣言した。同時に、地に描かれた魔法陣から金色の光芒が立ち上がる。
 「全き知恵の主にして大いなる力の源たる…」
 呪文が始まり、一層強まった光芒が少女めいた細い肢体を包み覆った。光の向こうに影となるキョーコの声だけが、やけに明確に池上へと滑り流れ出す。
 「…っ」
 ぴりぴりと肌を刺す引力に、レンはできるだけ逆らうまいとしながら目を閉じた。自分の中にうねる力を視認したような気がした。
 ゆっくりと、彼は息を吸う。ゆらり、とその輪郭が揺らいだ。





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 ロマンシアはなんかいつも短めになるなあ。


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