スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
web拍手 by FC2

たいせつでたいせつで(146)

 「あの…どうしたの…」
 素直でやさしい少女にそんな表情を向けられたのは初めてで、蓮の声からはぼとぼと狼狽が滴る。傾き始めた陽を背負って少し身を屈める彼に、しかしキョーコはすぐには答えず、ふいと目を逸らした。
 「ええと…キョーコちゃん?」
 自然と機嫌を取るような口調になってしまい、青年は更に困惑を深める。自分が何をしているのかわからなくなりそうだった。
 「やっぱり、知らないひとみたい」
 ぽそりと呟き落とされた小さな声がやけに胸にしみる。
 「どう、して?」
 問いはむしろ、引き出された気がした。もしかしたら、背中を押すようなこの強い陽射しに、かもしれない。
 「前にも言ったけど…俺はいつも、キョーコちゃんのクオンだよ?姿が変わったって名前が変わったって、それは絶対変わらない」
 「!」
 少女の頬にさっと朱がのぼった。
 「そ、そういうところは、変わってない、けど。って言うか、この前はそんな言い方じゃなかったけど、いえあのそうじゃなくて、えっと、クオンは、クオンなら、知ってるはずだから」
 つかえつかえ言うのへ、今度は蓮の方が怪訝に首を傾げる。自分が何を知っていると彼女は言うのだろう?まさか、彼女を手放したくないと彼が望む本当の理由を、その形を悟られて…
 いや待て。それでは、キョーコは恐れをなして自分から逃げてしまうのではないか。彼女は今も自分の前にいるし、彼から逃げようとはしていない。
 それなら?
 しかし、言葉通り彼が知っていなくてはならないなら。何をと尋ねることが、もしやキョーコを失望させてしまったら。
 益体もない思考がぐるぐる巡るのを持て余し固まってしまった蓮に、少女はやっと目を戻すが相変わらず視線は恨みがましかった。
 そのまま言う。
 「クオンは、私がクオンをだいじだって、知ってるはずだもの」
 「え…っ」
 蓮が短い呼気を呑んだ。それへ少女の言葉は続く。
 「私、ちゃんと言ったもの」
 「…うん」
 それは、彼も覚えている。死ぬほど嬉しかったから。以前の遊び仲間に絡まれて足の骨を負った時のことだ。キョーコは彼を大事だと、なくしたくないと言ってくれた。
 あの時の気持ちを、彼女はまだ持っていて。
 おそらく、あの時のままで。彼女はまだ、彼に恋をしていなくて。自分の気持ちだけが変わって、今は嬉しいだけでなく嬉しくないわけがなく、宙ぶらりんのままでいる。
 「そうだね…」
 彼はそっと微笑んだ。少女に手を伸ばす代わりに。気持ちを差し出すように。
 そんな蓮に、キョーコはぽちぽち呟いた。
 「だから、そんな風に思っちゃ駄目だもの…」




 
 
  web拍手 by FC2
 
 


 結局この話は、どのくらいの長さになるんでしょうね~。200はラクショーだな。


関連記事
スポンサーサイト

コメントの投稿

非公開コメント

検索フォーム
作品一覧
サイト「花うてHP!」トップよりブログ内の作品のリストに飛べます。閲覧者の皆様のアクションに対して加算させて戴く「花うてポイント」の説明・管理もこちらよりどうぞ!

作品リスト(サイトトップ)

アクセス

・メールフォーム

・BBS

リンク

◆リンクページ


◆当ブログへのリンクについて

当ブログはスキビコンテンツをお持ちのサイト様に限りリンクフリーといたします。


ブログ名:花のうてな

管理人名:みなみ なみ

URL:http://hananoutena.blog14.

fc2.com/


 ↓各ジャンルごたまぜの本サイト。

↓スキビの同人誌作品をブログ記事として収載・販売しています。(2014年7月までで更新停止)

 ↓BUD BOY二次です。


  • 管理画面
  • RSSリンクの表示
    QRコード
    QR
    上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。