たいせつでたいせつで(148)

 「あ…とうもろこしの皮、ぜんぶ剥いてくれたのね」
 蓮が持って来たザルを見て、少女はやや力なく言った。これに白皙の美青年が、大いにうろたえた顔をする。
 「ええともしかして、いけなかった、かな…」
 手伝ったつもりでいた分しおしおと言うので、今度はキョーコの方が慌て出した。
 「あ!ううん、いけなくなんて。ありがとう。じゃあ、少し先に茹でちゃって、おやつにしましょうか。蓮さん、不破家であまりスイカも食べてなかったでしょう?」
 喉を通らなかったのを見られていたらしい。それにしても、本当はどうすればよかったものだろうか。蓮はあとで調べようと心に刻んだ。次はキョーコの役に立って見せる。彼女の笑顔を増やしたいのだ。
 「じゃあ…茹でてる間、お茶でも飲む?」
 底の浅い鍋に洗ったとうもろこしと水を入れ、うんとこ持ち上げようとするのを見て、蓮は出番とばかり素早く立ち上がった。
 「俺が運ぶよ。ガス台だよね?」
 「うん、ありがとう」
 「どういたしまして」
 やはり、気を遣ってでなく素直に礼を言われるのは嬉しい。水をこぼさないように静かに五徳の上〈彼はその名称を知らなかったが)に鍋を移動させ、ついでにバーナーのスイッチを捻った。
 「あれ?」
 しかし、カチカチ言うばかりで火がつかない。
 「あ、これはね、押し込むみたいにして回すのよ」
 キョーコが手を出すとすぐに点火するので、結局失点を増やした青年はしょぼりと己を反省した。すこし家のことも覚えておくのがいいかもしれない。忙しい両親だって、手が空けば料理くらいするのだし。まあ…片方は、しないで欲しいと思ってしまうわけだけれども。
 キョーコに料理を教わるのもいいな、と思いついたところで振り返ると、ちっともじっとしていない働き者の少女はもう何か始めていた。ボウルを出して来て水を張り、そこに酢を垂らす。と思えばちょこまか動いて流しでタワシを取り、黒くて細長い根菜をがしがし洗い始めた。
 「それは?何作るの?」
 「えっとね、ゴボウのささがき。水に浸してアクを抜くの。五目御飯にしようと思って」
 ササガキとかアクとか、蓮には魔法の呪文のようだ。辛うじて最後の単語はわかったので、
 「ああ、ゴモクゴハンは美味しいよね」
 仔細げに頷いて見せる。キョーコはでしょう?と笑い、ちゃき、と包丁を取った。
 刃を返してゴボウの皮をこそげ、太い部分に切り込みを入れ。おもむろに、どころか。
 ちゃかちゃかちゃか。高速で手を動かす度に、ボウルの中に生成りの薄片がぺてぺて溜まって行く。
 「すごい、ね…」
 蓮の声は呻くようだった。いなくてよかったのか残念なのか、マカナンが見たらまた大喜びするに違いない。
 そして十数分も立つと、ササガキのボウルはラップをかけられて冷蔵庫に納まり、茹で上がったとうもろこしはザルに上げられてほかほか黄色く、しかもテーブルにはお茶も出されていた。
 「このあと、浴衣探しましょうね!」
 キョーコが屈託なく笑う。
 やるべきことと立ち上がる力を失わない、この少女が彼の想い人なのだった。






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 うーん…あとでちょっと手を入れたいトコロ…
 そう言えばピ○庭では収穫しまくったけど、今年トウモロコシ食べてなかった!なんだかんだ、買う機会を逸してたなあ…大好きなのに(笑)。
 
 今日も別館更新しました。どぞよろしゅう。


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