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フォルトゥナタ(10)

 「はっはい!?」
 一瞬慌ててしまったが、声の主など決まっている。いや、決まっているから慌てたのか。
 アトリウムの向こう、美しい布が中央で分けられた奥から中年の男がきびきびと出て来る。白いトゥニカにゆったりとトガを重ねる姿を、元老院に通う行列の中で見たことがある。確かにクーヤヌスだ。
 手に布の巻かれた板(書類)を持ったままだから、たった今までタブリーヌム(執務室)で仕事をしていたのだろう。キョーコの前まで来てからやっと自分の手元に気付いた様子で、彼は持ち物を息子に押し付けた。そのまま百年の知己に出会ったように彼女を抱きしめる。
 「よく来てくれた!!もう私は、今日が楽しみで楽しみでな!」
 「え」
 「ちょっ…父さん!?何してるんですか!」
 慌てる息子に構わず、元老院議員はにこにこと料理人の手を取った。
 「ふうむ、この手があの見事なパンを焼くのか…なるほど、器用そうな繊細な手だ」
 「父さん!」
 「なんだクオン、お前はここまでさんざんウルバと話して来たんだろう。ずるいぞ、少しくらい私に譲れ」
 「いや、ずるいとか…大体、初対面の女性に失礼でしょう。そもそも譲るの譲らないのって、尊重されるべきはキョーコの意志であって、俺たちのじゃありませんよ」
 クオンティヌスに言い切られてクーヤヌスはなるほどと唸ったが、女性の権利などごく薄弱であるこの時代において珍しい親子ではある。これはゲルマンの習俗によるのか、それとも彼ら氏族の固有の概念によるのかと、キョーコは興味深く二人を見比べた。
 その視線に気付いた2人が軽く咳払いして舌戦を収める。
 と思えば、元老院議員がふと首をかしげた。
 「ん?キョーコというのは君のことか?」
 「え、あ、はい。あの、私の本名でして」
 「おお、そうなのか。では、私もそちらの名で呼んでいいかな?」
 「はあ…」
 頷くキョーコの頬には『親子ねえ』と書いてある。心当たりありそうな若様はそっぽを向き、上機嫌の家長はさあさあと彼女を促した。
 「君が来てくれるというのでね、大急ぎで台所を改修したんだ。使い勝手がいいといのだが…」
 「そ、そんなわざわざ。恐れ入ります…」
 ドアのない翼室の前を通り、雨水溜めを挟んだ対面へと導かれる。執務室の向こう隣が彼女の仕事場になるらしい。
 「あの、そう言えばお仕事にかかる前に1つ伺いたいのですが…」
 「うむ、何だね?何でも言ってくれ」
 許すと言うよりも期待されているような口調にほんのり微笑みながら、キョーコは先刻クオンティヌスにも見せた紙片を取り出した。
 「こちらが今日のメニューになります。3人分の晩餐と伺ってますが、分量などに特にご希望がおありでしたら予めお申し付け下さい。一応、多目の支度をして参りましたが」
 雇い主に紙片を渡してハキハキ言うと、なぜか父子が妙な顔をした。
 「?」





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 のはなぜでしょう。バレバレでしょうね~(笑)。


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