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たいせつでたいせつで(150)

 「わあ!」
 蓮が運び込んで来たマカナン土産の蓋を開け、キョーコは嬉しそうに歓声を上げた。
 「こんなにたくさん。いい鮎ですね、監督さんが選んだんですか?」
 「いや、魚屋の親父に選んでもらった。釣りが340万円とか言うからビビったけどよー、モツはモツ屋ってーだろ?」
 「餅は餅屋でしょう」
 蓮がやや自信なげに言うのへ、社が保証するように頷く。
 「だけど魚屋のおじさんのギャグって、今でも義務なのねえ…」
 キョーコがふと感慨深げに呟いたが、今でもも何もそんな義務は誰にもない。彼女はマカナンに視線を移し、鮎を指してにっこり尋ねた。 
 「監督さん、どうやって食べたいですか?」
 映画監督がはうはう身を乗り出し拳を振りたてる。
 「だるまやで食ったやつ!茶色くて甘いの。あと、ライスと混じったやつも旨かった」
 「ああ、わかりました。じゃあ、2/3は素焼きにしておいて、あとで甘露煮と鮎飯用に下ごしらえして…あとの1/3は、さっそく塩焼きにして戴きましょう」
 「ん?他のは今日食えないのか?」
 「ごめんなさい、甘露煮は時間がかかりますし、今日はもうごはん炊いちゃってますから」
 「ふーん。まあいいや、嬢ちゃんに任せときゃ間違いない」
 あっさり言うのが却って信用しきっている様子を際立たせる。キョーコは嬉しそうに胸を叩いた。
 「はいっ、お任せ下さい!」
 鼻歌混じりに発砲スチロールの箱を抱えて台所に向かうから、蓮は眉を顰めてマカナンを見遣った。
 「やりますね、監督…」
 「あん?」
 映画監督がぼよんと腹を揺すりながら振り返る。
 「キョーコちゃんがあんな、何か遠慮もなしに喜ぶことなんてあんまりないのに」
 よほどに顔が険しかったのか、社が慌てている。それでも声に出さず身振りだけにしてくれているのは、背を向けているキョーコの耳を慮ってのことだろう。ダイニングと少し離れているとは言え、仕切りがあるわけではない。気の利くバイト生に目礼しつつ、蓮は自分の顔をすうと撫でた。
 気がつくとマカナンがニヤニヤ笑っていて、彼はしまったと臍を噛む。
 「…っ」
 「要するに、だ」
 映画監督は、指揮者のように両手を振った。
 「お前らの愛は、重いんだよ。控えめな嬢ちゃんが引くくらいな」
 うっ、と蓮が息を詰める。自分にも“お前ら”の中に含まれる人物にも、とても心当たりがあった。
 しかしそんなことを言われても、愛しいのだから仕方ないではないか。恨みがましく睨んでみたら、ますます面白がらせてしまったようだった。
 マカナンは自分の顎を撫で、ちょっと仰向き加減にニヤニヤを送り付けて来る。
 「まあ、通じりゃそれも嬉しいことに思ってもらえんじゃねえの」
 「…」
 「通じりゃな」
 二度言うのが腹立たしい。わかりました頑張ります、とヤケクソに言い、蓮はキョーコのいる流しへと足を向けた。
 「キョーコちゃん、やっぱり俺も手伝うよ。何すればいい?」
 「そう?じゃあね…」
 少女が小首を傾げて彼を見上げる。微笑を返す青年は、背後で指フレームを構えている映画監督には気付かなかった。




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 マカナンって人生楽しそうだなー。


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