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フォルトゥナタ(12)

 その夜のうっとり率、90%。
 内訳はクーヤヌス100%、クオンティヌス80%、クーヤヌスの妻ユリエナ80%、キョーコ100%で、平均するとそういうことになる。
 そして明細はと言うと。
 豪食の邸主は今日の料理人の繰り出す技に舌鼓を打ちっぱなしに打ち、その息子と妻も似たようなものだが食に対する情熱として父にして夫に及ばず割引、料理人は見たこともないほどしっかりした造りの厨房と思う存分なんの遠慮もなく腕を揮える楽しみと、更に。やはりローマ市中に美貌のマトローナ〈名門夫人)として高名なユリエナに紹介されて魂が飛んだような顔をしたから、彼女にとっても忘れられない日になったに違いない。
 しかもしかも、晩餐後、庭で談笑する家族に自分まで混ぜてもらってしまった。キョーコは夢見心地で、ユリエナに手ずから渡されたお湯割りのワインをちびちび舐める。
 そこへクーヤヌスが、満足そうに腹をさすりながらにこやかな顔を向ける。
 「ところで、キョーコ」
 「はい」
 「お前のパン屋はいつ始めたのだ?」
 「ええと、皇帝陛下の外征が終わって、税金免除のお触れが出たあとですから…一年ほど前になります。私が15の時ですね」
 さらり答えると、元老院議員が軽く目を瞠る。
 「ほほう、お前はいま16か。その若さであのパンを焼き料理を作りギリシャ語を解するとは、実に素晴らしい」
 「いえ、そんな…」
 照れ照れ笑っているところをクオンティヌスにじっと見られていたことに気付き、キョーコは慌てて顔を伏せた。途端に不満そうな顔をする若様には気付かない。
 「しかも、あのガルムだ。カルタヘナやカディス産のものでさえ、あんな芳香は持っていない。まったく、どう作ればあれだけの逸品ができるのか…」
 「本当ね、あなた。私も驚いたわ」
 ほうと溜め息をつくクーヤヌスに、ユリエナが同調している。年若い料理人は最高級と言われる産地を引き合いに出され、ほとんど狼狽という状態になった。あわあわと両手を振りたてる。
 「そ、そんな。あれはちょっとしたコツがあって…仕込みのときに、東方産の発泡酒を加えるんですよ。そうすると、臭いが変わるんです」
 「ほう?」
 発酵という概念のない頃のことでキョーコ自身も原理まではわかっていないようだが、要は酵母に魚醤の臭気を分解させるということだろう。
 「そんな製法をどこで教わったんだね?」
 「いえ、自分で色々試してるうちに、偶然…何か始めると徹底的に追究してしまうタチなんです」
 てへ、と笑うキョーコに、3人家族が微笑む。
 それはキョーコにとって、ほんとうに夢のような夜だった。




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 キョーコが言ってるのはビールのことです。ただし、この頃のビールは今みたいには発泡してないと思う…
 ま、あれです。ビールは紀元前4000年頃には近東一体に普及していたと前に読んだ本にあったので、いつかネタに使いたいと思ってたのですヨ。
 しかし発酵と文明は切っても切れない仲、とか言われる割に、発酵という現象が科学的に認識されるのはずいぶん遅かったわけですね~。人間は理由よか結果を重視するってことかなあ。
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