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たいせつでたいせつで(151)

 「じゃあ明日は、キョーコちゃんのお祖母さんちに行くんだね」
 確認する社に少女が頷き、手持ち花火と浴衣に大はしゃぎしているマカナンを見遣る。
 「そんなに時間はかからないと思いますから、お夕食にはちゃんと帰って来て下さいね。ちゃんと鮎の用意しておきます」
 はきはき言えば、映画監督がきょとんと振り返った。
 「何言ってんだ嬢ちゃん、俺は一緒に行くぞ」
 「え」
 顔を顰めたのは蓮だった。
 「監督こそ何言ってるんですか。俺がついて行きますから、わけのわからない人まで来なくて結構です」
 「お前だって役に立たねーことじゃ変わりねーだろ。よその大人訪ねるのに子供だけで行かせるわけに行くか、危ねえ」
 「ここはアメリカじゃありませんよ、そうそう犯罪なんて…」
 「うーん…今どきはそうそう油断もしてられないかも…」
 後ろで呟く社を振り返るが、同時にマカナンがぽんと言い放つ。
 「んなこた言ってねーっつの」
 蓮は怪訝に眉根を寄せる。この中年男は何を言いたいのだろうか。
 「じゃあ、どういう意味で」
 言いかけたが途中でマカナンが立ち上がり、ちょうど火の消えた花火をバケツの水に突っ込んだ。じゅ、と白煙が上がる間、沈黙が落ちる。
 「とにかく、ちゃんとした大人がいた方がいいだろが」
 「……」
 それはそうかもしれないが、ではデニス・マカナンがちゃんとしているかとなるとどうも言い切る自信が持てない。蓮は不満そうにマカナンと社を見比べた。
 「だけど、監督が行くとなると社さんも通訳に必要でしょう。俺だけ留守番してろって言うんですか?」
 マカナンがじろりと振り返る。その視線の強さに一瞬たじろいた青年は、たじろいだことを恥じるように目に力をこめて睨み返した。
 丸っこい目がわずかに眇められ、と思うとにたりと緩む。
 「お駄賃やるから、しっかりな~」
 蓮の肩辺りに、赤く急上昇するメーターが見えるようだった。




 「大丈夫よ蓮さん、そんなに心配しないで」
 にっこり見上げて来る大きな瞳に、眉を下げた端正な顔が映りこんでいる。蓮は表情を修正し、どうにか笑顔を作って見せた。
 「うん…だけどキョーコちゃん、そんなに可愛い格好して。もう返さないって言われたら、取り返しに乗り込むからね」
 キョ-コはかっちりめのブラウスにチェックの短めプリーツスカート、それと同系色の短い上着という服装で、きちんとした印象はそのままに若々しい甘さを加えている。ニーハイソックスを履いた足をフリンジつきのローファーにおさめ、戸口で振り返った。
 「もう、何言ってるの蓮さんは」
 ピンク色に染まる頬がかわいらしい。蓮が何か言いかけた時、
 「うおーい嬢ちゃん、タクシー来たぞ」
 外からマカナンの声がした。
 「はーい。じゃあ蓮さん、行ってまいります」
 ぴ、と敬礼して、キョーコは玄関の戸を開ける。直後に電話台に向かった蓮のことは、知るよしもなかった。







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 涼しくなったので猫どもが部屋に入り浸りになってます。椅子の足元にごろごろ寝てるのでうかつに動けない…



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