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たいせつでたいせつで(153)

 「ああほんま、なんで今頃…」
 声と共に滑るような足音が聞こえて、キョーコが目に見えて緊張を浮かべた。卓上で細い湯気を上げる湯呑を見つめ、何事か数えるように幾度も顎を頷かせる。
 なにか可哀相になって、社は隣からそっと肩を叩いた。同時に反対側の手で、一生懸命に欄間の透かし彫りを見上げているマカナンの裾を引っ張るから、彼も結構慣れて来たと言えそうだ。
 「マカナン監督、ちゃんと座ってくださいってば」
 「えー、でも俺、正座ってムリだぞ」
 「そこまで求めません、あぐらでいいですから。とにかく座布団の上に落ち着いてください、キョーコちゃんに恥かかせたいんですか!?」
 ひそひそ言いつけると少女がびっくり顔で振り返るが、社は厳しい表情を保ってマカナンを見ている。
 なに、彼とてキョーコに弱いことは間違いないと見た彼の認識は正しかった。映画監督はいかにも不承不承、言われた通りに座布団に戻る。端をめくって房をいじるというオマケつきではあったが。
 「なーなー、ヨロイとかカタナとか飾ってねーのな。楽しみにしてたんだけどなー」
 なぞと耳打ちして来たりもするのだが。
 座敷にそんなものを飾る家がいまどき滅多にあるものかと社青年は呆れたが、さりとて絶対にないと言い切るには、悪趣味な人間というものはいまだあちこちに生息している。やむなくハイハイと受け流し、中年男のネクタイの結び目を所定の位置に押し上げた。
 そうして彼がどうにかその場を繕うのに成功した瞬間、すらりとなめらかな音がした。
 先程の中年女性が膝をついて障子を引き、敷居の向こう側には小柄な和服の老婆が背筋まっすぐに立っている。
 厳しい眼差しが室内を睥睨した。明らかにキョーコを目に留めたのに、その瞳には何の感情も表れなかった。
 「あんたはんが、キョーコやね」
 当たり前のことを彼女は、反論は許さないとばかりに強い口調で言う。
 「はい、あの」
 「何しに来たん?」
 「…えっ…」
 しかし次の瞬間発せられた問いに、挨拶の口を開こうとした少女はそのまま凍りついた。社も同様、マカナンだけがわけがわからずに日本人たちを見比べる。
 「あ、あの、私…お母さんの、お墓を」
 それでも必死に話を繋ごうとするキョーコに、さっさと上座に着いた老婆はぴしりと言った。
 「うちの墓には、入れへんで」
 少女が息を詰め、それをそろそろ自分の胸元に吐き落とす。
 「は、はい…」
 覚悟はしていた様子だった。社にもそれはわかっている。けれど実際に言われた言葉が、どれほど小さな肩に重く冷たいことだろう。子供になんと言う言い草かと拳を握る社は、隣のマカナンから肘をつつかれて険しいままの顔を振り返らせた。
 キョーコは訥々と語る。
 「わたしが、建てます、から。ただ、だまってそうしちゃうのも失礼かもって…」
 それでさえ、礼儀を失わず自己を律すること子供の器量とも思われないと言うのに。
 老婆はなおも言うのだ。
 「かましまへん、好きにしよし。
 「そもそも冴菜とは、あんたはん産んだ時に縁が切れとるんやさかいな。亡うなったかてそれが変わるもんやあらへん、むしろこんでほんまに無関係んなったと思うといてんか」
 「は…」
 蒼い顔をして、キョーコは頷きかけたまま動作を止めた。社はマカナンをうるさくさえ思いながら手早く通訳する。言葉は多少選んだつもりだったが、事実と感情は洩れていたかもしれない。マカナンが目を眇める…





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 果たしてこんなん、京ことばとして通るんかしらん…;京都の方々にはむずがゆいかもスンマセン。
 私だって、テレビなんかで名古屋弁聞くと落ち着かないもんな~。違和感ありまくり。


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