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フォルトゥナタ(18)

 「君、俺の話をちゃんと聞いて…」
 「えっと、お店はできればやめたくないんですが。でも、あなたのお邸であなたのためにパンを焼いて、お料理を作って、もし必要でしたら書き取りとか計算とかのお手伝いも…誠心誠意お仕えします!ですから」
 「…ええと…」
 勢い込む大きな瞳を見返して、クオンティヌスは白くなりかけた頭の隅から思考が戻るのを待つ。
 「つまり君は、だから…君の腕を買ってくれって、そういうこと言ってるわけ、かな。奥さんでも奴隷でもなく、料理人とか秘書とかとして」
 「はいっ」
 ぶんと頷いて、キョーコは急に心配そうな顔をした。
 「あ…すみません、図々しい申し出ですよね。でも…私、ほかに何も持ってなくて」
 「いや、だからね…」
 騎士の声が疲れている。自分は明確に彼女に求めているものを告げたつもりだったのに、どうしてそんな話になるのだろう。よほど自分との結婚話が嫌なのか…と思いかけて彼は、ぐんと背筋を伸ばした。いや少なくとも、嫌われてはいないはずだ。ならば単に、必要なのは。
 思いを伝える時間と距離、かもしれない。
 と思えばキョーコの申し出も悪くないのではなかろうか。
 「…わかった」
 熟考の末、彼はとうとう頷いた。
 「あ」
 「料理人兼秘書として、君を言い値かつ自由身分のまま雇う。条件は一つ、俺の家に住み込んでくれること。パン屋も教師も続けていいけど、俺に急ぎの用がある時はそっちを優先してくれると助かるな。ああ、どっちにしても、体に負担がかかるほど無理はしないって約束もして欲しい」
 「えと、あの…はい、でもなんだか、破格の条件では…」
 「それだけの価値がある」
 クオンティヌスはさらりと微笑む。
 「というところで、どうかな」
 尋ねるとキョーコは、上気した顔をぶんと振り下ろした。深々と身を折り、祈るように両手を組む。
 「あっ、ありがとうございます!!すごく、すごく助かります。お世話になりますっ」
 「こちらこそ」
 それだけで済ます気のない若様は、にっこり笑いながら胸のうちで自邸の普請の算段を始める。そうだどうせなら、通りに面した部分はキョーコのパン屋にしてしまえばいい…
 企む耳に、張り切った声が届く。
 「あのっ、クオンティヌス様のお独り立ちは、明日明後日というわけではないのですよね?お邸を建てられるのでしたらまだ時間がかかりますし、よろしければ私、その間クーヤヌス様のお邸の方に通いましょうか」
 「え、あ、いや。父は喜ぶだろうけど、遠いから大変だし」
 第一、両親にずっと面白がってニヤニヤ見守られたのでは落ち着かない。平気ですよと言い出す娘を押し留め、もうひとつ熟考。
 「そうだね…このあたりなら王宮に伺候するのにも便利だな」
 勿論言い訳にすぎないことは自分でもわかっていたけれど、近くのインスラに部屋を借りようと彼は言い出した。
 「家が建つまでそこで暮らすことにするから…君の初仕事は、その部屋を居心地よく整える、ってことでどうかな」
 キョーコが楽しそうですと笑う。
 まずは、距離。クオンティヌスは謙遜の強すぎる娘を見遣り、にこりと笑った。
 「うん、じゃあそれで。今後よろしくね、キョーコ」
 「こちらこそですっ」
 安堵と信頼を浮かべる笑顔が返り、すこし胸が痛んだような気もした。





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 ドムスの前面に店舗を設えて商人を入れる、というのはけっこうあったことらしいです。
 てかキョーコさん、自分の危うさに気付いてませんね(笑)。


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