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たいせつでたいせつで(155)

 「要は、うちは話だけ聞いてたらええんどすな」
 キョーコの祖母は投げ遣るように言い出す。それを見返す社はさすがに呆れ顔こそどうにか取り繕ったものの、瞳に浮くのは目を伏せて隠さねばならなかった。
 「ほな、それは聞いたよって、もう帰りよし。どうなと好きにしはればええのや。うちはもう、親に恥ばっかかかすような娘にもその子にも関わる気ィはこれっぽっちもあらしまへん」
 声も瞳も冷たいが、老婆はおまけに犬を追うようにしっしっと手を振り動かす。これはさすがに通訳なしで通じたらしく、マカナンが怒気に顔を染めた。
 「なんだ、このババアはっ…」
 語勢強く、彼はしおたれて俯いてしまった少女に視線を向ける。途端にぐっと息を詰め、思い切り深い呼吸を落とした。
 「勝手にしろとか、そんなこと言ってんだろ?」
 念のためか尋ねて来るので、社はやや消極的な肯定を返す。キョーコに聞かせたくないと思ったが、無理な相談ではあった。
 「じゃあ、これにサインさせろ」
 映画監督は背広の内ポケットを探り、細長い封筒を取り出した。その表面には、東京でローリィに紹介してもらった弁護士事務所の名前が入っている。
 「これは?」
 「タイショーに頼まれて来たんだよ。嬢ちゃんに関する一切の権利を養家に譲渡する、って書類だ。アメリカで作ったやつと、それを日本用に直してもらったやつがあるから、両方にサインさせて2枚目の控えを渡してやれ」
 「え」
 弾かれたように顔を上げるキョーコに、彼はにかりと笑って見せた。
 「嬢ちゃんもいいだろ?もう、ダルマヤの子になってもさ」




 「キョーコちゃんは、ホントしっかりしてますね…」
 通りへ出てタクシーを拾おうと歩きながら、社は前を行くキョーコのまっすぐな背筋に賛嘆の目を向ける。マカナンはすぐには返事をせず、じろりと通訳の青年を見流した。
 「俺ゃせつねえよ…」
 呟くので、社はああと頷く。確かにそうだろうと思ったのだが、中年男はすぐに不可解な言葉を続けた。
 「だけど坊主にとっちゃ、吉報みたいなもんかね」
 「坊主って…蓮君ですか?ああ、キョーコちゃんのアメリカ定住が決まったわけだから…」
 すこし首をかしげた社がじきに納得を呟くと、彼は違う違うと首を振った。
 「?じゃあ、何が…」
 言いかけた時、とすんとやわらかいものにぶつかった。いつの間にか足を止めていたキョーコの背中だった。
 「キョーコちゃん?」
 どうしたのだろうと声をかけた瞬間、少女がいきなり駆け出した。
 「…クオン!!」
 「え」
 戸惑う目を前方に移す。社はそこに、もたれていた民家の塀から身を起こす蓮の姿を見た。キョーコはいっしんにそこへ走って行く。
 「キョーコちゃん…」
 笑顔を浮かべかけた蓮が、途中で眉を顰める。その腕の中へ、少女は思い切り飛び込んで行った。




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 オイデとアッチ行ケのジェスチャー、日米で違いますけど…まあ、表情とかも見てれば、話の流れもあるし通じるんじゃないかな?と思っといてくだせい。


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