ROMANCIA(22)

 「自分ら魔道士なん?助かったわー」
 煤まみれになった白衣を叩こうともせず、医師はまっすぐキョーコの元へ来た。茶色の髪、西方訛りの言葉と明るい瞳に愛嬌がある。あまり背は高くない。
 「おい、お前たち、なんだ今のは!」
 「何言うてん、そっちこそいきなり無茶しよって…」
 すぐ追いすがって来た兵士たちの声を受け、彼は彼女を庇うように身を返す。
 「我々の邪魔をするな。ご領主の命令に逆らう気か!?」
 しかしあえなく押しのけられ突き飛ばされてしまった。よろめくのへキョーコが慌てた声を投げる。
 「だ、大丈夫ですか!?」
 「あー、大丈夫、大丈夫」
 「おいっ、聞いてるのか!」
 隊長がキョーコの肩をつかもうとする。
 しかし勿論、竜がそんなことを許すはずがない。つかみ上げた手を捻ると、羽飾りの兜が落ちてガランと重い音を立てた。
 「き、貴様ッ」
 「彼女に触れないでもらおう。大体、こちらに文句をつけられる立場なのか!?いくら疫病が怖いからと言って病人を焼き殺すような真似を…邪魔どころか外道に堕ちるところを救ってもらったと感謝されてもいいくらいだ」
 低いがよく通る声で脅しつけると、貧相なちょびヒゲの中年男はさっと顔色をなくした。
 「な、なんだと…」
 「ちがうのか?」
 一音ずつ刻むようなレンの問い。隊長の背が跳ねる。
 「ち、が、わ、ない」
 竜と同じような調子で、もっと虚ろに呟いて、彼はゆらゆらと視線を揺らした。
 「ひどいことを、するところだ、った」
 「だろう?戻って、領主に考え直すように勧めたほうがいい」
 「わ、かった」
 レンが手を離すと、男は奇妙に緩慢な動作で身を返す。腰の引けている部下たちに、合図の手を振った。
 「引き上げる」
 


 「何、したんですか」
 キョーコが半分呆れるように見上げると、古き竜の化身はにこり微笑んだ。
 「大したことはしてないよ?」
 「貴方にとっては、そうかもしれませんけど」
 「いや、ほんとに。言霊は使ったけど、あれだけ効いたのは彼の心の中にも疚しい気持ちがあるからだし」
 「はあ…」
 仕方なさそうに納得を示す娘から視線を外し、彼は青年医師に促す。
 「多分、また別の隊かが来るでしょう。今のうちに移動するか防備を固めるかした方がいい。どっちにしますか?」
 「ぼっ…防備!?」
 医師の驚くこと。キョーコも同様にびっくり目になっているが、こちらは少々意味が違うようだった。
 「レンさん、この件に関わる気なんですか?」
 おや、と心外そうに長身の青年が首をかしげた。
 「君が助けてって言ったのに」



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 花うては物騒な方面に特化しているのです。おーほほほ。
 いやま、だいぶ手加減はしてますけどもね。


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